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落下地点は違う世界。  作者: あせろら
1章:第二の人生
1/15

プロローグ。

R15や残酷な描写は一応の保険です。 そこまでハードな内容は

書くつもりはありません。 ソフトエロは頻繁に出る可能性が御座いますので、苦手な方は申し訳ありません。

しかしまぁ、世の中はさっぱりわからない。


仕事に明け暮れて、家に帰ったらゲームやらTVやらを見て寝る。

休日は好きなコンピュータゲームや本を読みふける、スローライフ。


そんな平凡な生活を享受していただけだというのに....。


何が起こるかはさっぱりわからないのが人生だ。だが解らないからこそ生きる楽しさがあるのだ。


俺はそう思っていたし、今も一応そう思っている。


だがしかし、自分の許容できる範囲を超えた変化は、楽しさという一言で片付く物では無い。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



俺の名前は赤井章あかい あきらだ。今年で22歳になる。

高校を卒業した事を転機に、上京して小さな会社に勤める、どこにでも居る社会人だ。


職業は通信工・・・まぁ簡単に言えば、街中でお昼の12時や、夕方の5時になる

時報、あれを鳴らしている防災無線なんかを工事する仕事をしている。

他にも色々とすることはあるけど、簡単に言い切れないから割愛させていただこう。


内容はその工事の施工管理。 工事をするに当たって工事業者と元請業者を取り持つような事をしている。

仕事は激務だし、サービス残業は当たり前。深夜にならなければ帰れないのがデフォルトという・・・

なかなかブラッキーな会社だ。


今のご時勢、高卒でいい職に就こうとしたって無理だ。そんな中で正社員として入社できただけでも

良い方なのだろう。

そう思って、ブラックな会社ではあるが日々を無難に享受している。


いや、【していた】が正確なところかな。


それは俺の体感時間で1日ほど前に遡る。


その日は東海地方にある地方都市での仕事だった。 内容は電信柱の上へ、野球の応援なんかで使う

メガホンの様な形をしたスピーカーを取り付ける事だった。


俺は入社して4年目の、新入りに毛が生えた程度のポジションなため....怠けると

先輩方のありがた~いご指導を頂くことになる。


施工管理とは言っても、今回みたいに簡単な作業は下請け業者を雇わずに、自分たちで工事を

してしまう事があるのだ。


その工事現場へ、会社の先輩と一緒に現場へ来た俺。


まぁ、こんな場合は当然、俺が面倒な仕事を任される。年下たる者は年長者に使われて当然!ってのが

うちの会社の常識だ。


まぁうちの会社に限ったことではないと思うけどね?下っ端が大変なのは。こればっかりは世の定め

とでも言う物さ。


腰に安全帯(工具やらをくっつけて吊るす、でかいベルト)を装着し、胴綱(これまた太いロープ)

を付けて準備完了。


電信柱の横から生えている足場ボルトへ体重を掛けて、目標地点まで上っていく。

細いボルトに体重がかかるため、意外なほどに足が痛くなる。

足は痛いし、上るのは結構体力を使うので、下っ端が居る場合...先輩はほとんど柱へ上らない。

理不尽だよほんと...。たまには自分でやれば、そのお腹も引っ込むんじゃないですか?と言ってやりたい。


おっと、先輩が睨んでる・・・さっさと昇るか。


黙々と上ること1分弱で、スピーカーを取り付ける予定箇所へ到着。滑車を柱へ括り付け、その滑車に

ロープを着ける。このロープへスピーカーを縛り付けて柱の上へ上げるのだ。

スピーカーが先輩殿によって昇ってくるのを来るのを待ちながら、ふと視線を自分の腰元へ向ける。


現在の状況は、腰の安全帯から胴綱が伸びて、柱をぐるっと一周して腰の反対側へ伸びている。

腰と足で身体を支える事が出来るので、両手を足場ボルトから離しても作業ができる様になっている。

その胴綱と安全帯を繋ぐために、D管と呼ばれる金具が付いているのだが・・・・・・・・・・・




あれ?   このD管...曲がってね?



具体的にどうなっているかと言うと・・・Dの字を描いている金具が、どう言う訳かΔの形に変形している。

かなり硬いので、相当な事をしても曲がる筈ないのに...。


やばい....心のどこかで警報が鳴り響く。


「上げるぞー!!」

冷や汗を流していると、下から先輩殿の声が。


・・・まぁいい、とりあえずはスピーカーを片付けてからだ。


先輩の手によって、地上から15m付近の柱上までスピーカーが上ってくる。

スピーカーが昇ってくるのを確認しようと、体を捻った瞬間。


ピキィン! と何かが弾けるような音。

そして同時に訪れる浮遊感。



あ、俺死んだ。 


一瞬頭の中に響いた言葉はそれだけだった。


滑車へ繋がれたロープに括り付けられて昇ってきたスピーカーへ向かって、俺は落下していった。

何故かそのスピーカーの穴には、青白い靄がかかっていた。


・・・俺が覚えているのはそこまでだ。


簡単に言えば、柱に登る前に安全帯を確認しなかったから落っこちて死んだ人のお話。

労災のお話だね、 はい終了!!


...で終われるんだけど、俺はどうやら死んでいないらしい。


現にここで物思いに耽っているんだからな。  


その後意識が戻ったのは、冷暖房完備の最先端機器溢れる大病院などではなく、ゴツゴツとした岩が形成

する、高さ30mほどの岸壁に四方を囲まれた、広さは目視で東京ドーム一個分ぐらいの空間に居た。

俺が横たわっていた場所には、柔らかな草が背丈20cmほどびっしりと生えていて、

昼寝したら気持ちいいだろうなぁ・・・と思えるような場所だ。

朝日と思わしき陽光が、あたたかな温度を伝えてくる。

柱の上で作業していたのが朝10時頃。どうやら1日寝過ごしたみたいだな。


ところで、ここどこだろうか、ウン。


ウ~ン・・・・


・・・。


「ここどこだぁぁ~!?」


ちょっとリアクションがワンテンポ遅れている気がしなくも無いけど、まぁワケがわからない状況に

遭遇した人間ってのはみんなこんなもんだろう! 異論は認めよう。



と、とにかく状況確認をしよう! えーっと・・・。

俺が現在見につけているのは、D管が破損した安全帯と、それに工具。


・・・以上。 柱上作業では落下する恐れのある物は持って昇らないのがセオリーなんだ。 

携帯やらお財布等、普段持ち歩いているグッズも、現場に来るときに使った社用車の中だ。

ろくな物持って無いな・・・・。


ふーむ...ん? なんか作業服がデカいような?  俺痩せたかな?


っていっても、気絶する前というか落下する前まで丁度よかったんだし、 そんな急激に痩せる訳ないし。

とりあえず、ベルトを締め直して・・・ おや、ズボンと上着の裾もかなり余ってるな?


なんかおかしいな...ん?


そよそよと辺りに風が吹いた拍子に、顔面に黒い何かがへばりつく。


「ふべぼ!?」  

突然現れた黒い何かは、頭を振るとどこかへ消えた。

いや、正確には背中のほうへ逃げて行った。   


「・・・・?」


いや、これ髪だろ...てか何?この長さ。 俺はスポーツ刈りだぞ?今までこんな女の子みたいに

お尻まで髪の毛伸ばしたことは無いわ!

もしかして、髪がこんな長さになるまで気絶してたのか? いやいや、1日2日で伸びる長さじゃないし。


訳わかんないな...。


背中から髪の毛を持ってきて唸っていると、作業服の胸部が盛り上がっている事に気がついた。


「なんだこれ?」

胸を押さえると、空洞ではなく何か柔らかい塊がいる。

しかも二つ。


これらの状況を、俺なりに整理する。


なるほど・・・・これは!


「夢だな!!」


...ん? 今更だけど声がおかしい気がする。

「あー、いー、うー、えー、おー・・・・お?」


「なんだこの声。女の子が俺に腹話術でもしてるのか?」


自分の中では、もう粗方諦めているのに、何かが認めない。


「ならばここはどうだ!!!」


自らの股間へ平手打ち。


「!!!!!!?!??!??っ」


そこにあるべき物が無いという衝撃。 そして強く打ちすぎたせいか鈍痛が・・・・


「うぅぅ・・・・」


情けなくも、蹲って唸ること数分。

いつまでも転がり続けるわけにゃいかないので、ごろりと起き上がる。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



そして、今に至るわけだ。


正直、これからどうすればいいんだろうね。 草の一本一本が、風に身を任せて揺れ動く様は、とても

じゃないが夢とは思えない。


でも、なんで当の俺はこんなザマなんだ? 性転換してるし・・・

顔はわからないけど、きっと可愛くは無いだろうな。...元がブサメンだからな。


まぁ、そんなのはこの際どうでもいいんだ。 ・・・あぁ、どうでもいんだ!

別に彼女が生まれてから一人も作れないまま、男性をリタイアしたことを悲しいだなんて・・・

思ってないんだからね! 

本当だよ? (あ、涙が。)


そんな下らない事を考えながら、そよ風に吹かれつつ静かに泣く女(男?)が居るのだった。


ぐすぐすと「彼女まだつくってないよぉぉ...」とか言いながら泣いていると、背後から聞いた覚えの無い

声が聞こえる。



「貴女が此度の冒険者ですか?」



とても綺麗な声だった。

改稿11/28

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