蝉の涙とともに…
俺は佐々木卓也。
23歳独身の1人暮らし。
これからも一生1人暮らし。
そしてそのまま死んでゆく。それでいい。
なぜなら俺がそれを望んでいるからだ。
ただ1人で俺は――
もう8月だってのに蝉の鳴き声がちらほらとしか聞こえない。
今年の俺にあと4ヶ月ちゃんと残っているだろうか?
そんなことを考えながらダラダラと過ごしている俺に、幼馴染のみっこ(瑞子)は毎日家事をしにくる。
そして今まさに来ている。
「みっこ。毎朝早く来なくていいって言ってるだろ?」
「あたしが来たいの!それにこうして毎日会えるじゃん」
「あぁーそうかい」
来てくれるのは正直嬉しい。だけど来ないで欲しい。
それは俺が幼馴染を好きになってしまうからだ。
俺は誰かと恋に落ちるようなことは許されない。
これはきっと俺の運命なんだ。
俺がどんなにあがこうと結果は変わらない。
そして"その時"は日々近づいてくる。
「なぁみっこ」
「ん?なに。どうしたのそんな改まって…」
「俺…」
俺は瑞子がいつもの様に朝食を準備してくれているのを止めてぎゅっと手を握った。
その時一瞬手の感触と自分の意識が遠ざかっていった。
今のは何だったのかと軽く流した。
「俺な…実は…」
「卓也?」
「…っ…ごめんなんでもない」
「なんでもないなら泣いたりしないよ。何があったの?」
ずっと言いたくなかった。でも言わないといけないんだ。
だって、瑞子が結婚したいと言ってくれて嬉しくて…。
でも俺と結婚しちゃいけないんだ。
「俺な――俺」
「うん…」
「実は」
――プツリ――
目を覚ますとそこは病院のベッドの上だった。
目覚めたばかりの俺の左手に温もりを感じた。
瑞子が包んでくれていたからだ。
俺は心配ばかりかけてんな。
「あ…気がついた!?もうびっくりしたよ。卓也が改まったと思ったらいきなり倒れちゃうんだもん」
…そっか。きっと夢だったんだ。あの瞬間から。
"その時"は刻一刻と迫ってきている。
話は今しか…
だから勇気をだせ。
そう心に念じ――…。
「あのなみっこ。俺さ…もうすぐ死ぬんだって」
「え…?」
「だから俺と居ないほうがいい」
「なにそれ。冗談?」
「そう冗談だよだから聞き流していいから言わせて」
「いいよ。言ってみなよ」
瑞子は優しく微笑んで言った。
「ずいぶん前に胸がぎゅっとなって苦しかったんだ」
ふぅんと言ってから聞いてきた。
「恋?」
「俺も最初はそう思った。でもだんだん苦しさが増していくんだ。それで病院に行ったんだ。そしたら余命を宣告された」
「どうして」
そのときの瑞子の声はすこし震えていた。
「ガンだって」
「……」
この時彼女は何を思ったのか。
「余命3ヶ月だって」
「3ヶ月なんだ…冗談なのにリアルな数字」
そう。冗談なんだ。冗談で済む話なんだ。
そうしたいんだ
いや、それで済ませなきゃいけない。
「冗談…なのにね…」
彼女は涙を流した。
いつまでも"冗談"にこだわる理由は分かっていた。
事実を認めたくないから冗談にこだわり、逃げる。
いや、俺が彼女にこだわらせて逃げさせている。
全部俺のせい。
「俺は瑞子を泣かせてしまう。だから結婚できないよ」
そう一言いって俺は彼女を離した。
その頃、蝉は寂しく鳴いていた。
7日間の短い命でも一生懸命に生きている。
俺の23年間はどうだ。
懸命に生きていたか?
いや、途中生きることを放棄しようとした。
俺は蝉に勝てない。
懸命に生きていない。
だからきっとだれにも泣いてもらえない。
そう思ったとき病室から出て行こうとする瑞子の脚が止まった。
「人生って運命に任せるって言うのも大切だよ。でも短い命だからと何もしないのか…短いからこそ運命に抗って生きるのか。どっちを選ぶも自分次第だよ。卓也は何もしないの?ならあたしは卓也を買いかぶっていたのかもね」
そう言ってまた一歩踏み出した。
俺は我慢できなかった。
「違う!!」
叫んだとき瑞子は再び脚を止めた。
「なんだ。やっぱりあたしが好きな卓也だ」
――え…?
「そうゆう風に自分のことに一生懸命になれるあなたが好き」
「はは…なにやってんだ俺」
俺は自分の運命を蝉と比べて…蝉に対して失礼じゃないか。俺はまだまだやれることが沢山あるじゃないか。3ヶ月だって十分幸せになれる。いや、なってやる!
「俺も大好きだ」
そういって確かな温もりを感じた。
たまたま思いついた小説なので文章がメチャクチャです。すみません。
私は蝉が好きでタイトルにしちゃいました(笑)
でタイトルにしたらすこし蝉にも触れようと…
聞く話によると蝉に涙はないそうです。
少し残念ですが、私は「蝉に涙はあるんだ!!」って信じてます!