首領 成り上がり 金は日本から成ったのだ
北朝○の金○成は日本人だった?
源 義経→チンギス・ハーン伝説の北朝○版です。
山深き霊仙山の廃村、悪名高きタコ部屋労働で出来た北海道の廃線。
失った樺太、崩壊寸前の国家。
一部の慰安婦や労働者の様に同族に騙され売られた労働者達。しかしそんなシステムに染まった労働者達。
タコ部屋労働の監禁、暴力、非情、収奪、服従、洗脳
それらシステムが一つの国家を作りあげていたのなら。
日本から大陸に渡った男の物語です。
琵琶湖の南 霊仙山の山深い集落に岩男は生まれた。
集落といっても田も無く畑も無く、数軒の家が山にへばりつく様に建っていた。
岩男は物心がつく前から力仕事をしていた。その姿は頑丈な身体に短い手足。農耕馬の人間版だ。
腹が減ると鹿を襲い、カエルを食い、木の実を採った。
おっとうの炭焼きを手伝う時も木の中の虫を食い、キノコを食い腹を満たした。
米や麦がある事をふもとの集落に出るまで知らなかった。おばぁの作る芋がゆが御馳走だった。
炭を売る為に、おっとうを手伝い始めて街道筋の町に出た。人、人、人。
人がこんなに沢山いる。きれいなべべ着た女がいる。
しかし、おっとうはどこにも寄らず炭を売ると山に帰った。
岩男は字も読めない、計算も出来ない。しかし馬鹿では無かった。それどころか小さな町の向こうにはもっと、もっと大きな世界がある事を理解した。
岩男は山に戻っても町の事ばかり考えていた。山にはおっとうも含め炭を焼く無口な男しかいない。
誰も話相手はいない。おっかあは岩男を生んで直ぐ死んでいる。
おばあが居たから言葉を覚えた。 孤独が当たり前だった。
翌年、大雨が山を襲った。山は唸りをあげ、沢は大石が下った。
空が明るくなった時、岩男が住んでいた集落は山の姿に戻っていた。
おっとうの姿も2度と見る事は無かった。
何日かして岩男の姿は町にあった。ふもとも大雨の被害にあい、汚い岩男の姿は目立たなかった。
岩男は道端に座り、通りを歩く人々を眺めていた。
そんな岩男に留吉という男が話かけてきた。
「兄さん、住む家を流されたんですかい。」
岩男はだまって頷いた。
留吉はなにか話しているが岩男は聞いていなかった。
留吉に連れられ宿に入る。風呂から出ると2階の部屋には食事が並べられていた。
岩男は初めて見る食事のにおいを嗅ぎ、手でむさぼった。
食べ終わると留吉は姿を消し、そして女が現れた。
2階に上がる梯子が外された事を岩男は知らない。
岩男は女のにおいをかぎ、本能で女を抱いた。
朝になると帳場が精算書を持ってきた。
「兄さん、連れの方の分と合わせて50円だ」
岩男がだまっていると
「まさか兄さん、金が無いのと違うんか」
「それならええ仕事がある。北海道にいけば2円や3円になる仕事がごろごろしとる。 俺が斡旋してやるからそれでいいな」
岩男はだまって頷いた。
その頃、留吉は店からポン引き代2円を受け取ると世間知らずを探しに町へ姿を消していった。
岩男は列車に乗せられ、もちろん初めてだが、何日もかけて青森に向かった。
青森に着くと検問で憲兵に調べられた。憲兵は岩男の頑強な身体に目を見張ったが動物にしか
見えない表情を見ると使えないと判断した。
そして警察に調べられた。警察は岩男の顔を見る事も無く借金の証書を確認し、岩男に質問した。
岩男は渡世人くずれの運び屋に言われていた様に 自分の意思で働きに行くと答えた。
岩男は知らなかったが借金の証書には130円という数字が書かれていた。
北海道の工事現場に着くと2日間なにもしないで過ごした。
届いた岩男も含めたタコ(労働者)が使えると判断され運び屋は金を受け取って帰って行った。
もちろん帰りは内地で働かす女工達を連れてだ。
現場は鉄道の建設現場だった。さっそくもっこで土を運ばされた。岩男は何とも無かったが
一緒に来た者は泣きながら運んでいた。
岩男と対になった者は岩男のペースについていけず、棒頭に殴られてばかりいた。
メシも立ったままだったが、岩男は米が食えるのが嬉かった。
夜になると丸太を枕に横になる。布団のある木の床がなんて寝心地がいいのかと
岩男は思った。
しかし、隣に眠る黒い服を着た、白く痩せた男はいつまでも、いつまでも
しくしくと泣いていた。もちろん岩男にはなんで泣いているかは分からなかったが。
朝3時頃、枕の丸太がガンと鳴った。棒頭が丸太を叩いたのだ。
岩男を含めタコと呼ばれる男達は真っ暗な中でメシを食う。
隣の男はまだ泣いている。
食べ終わると薄明かりの中、もっこで土を運ぶ。北海道の朝は早い。
運んでも運んでも1日は終わらない。岩男はもくもくと土を運ぶ。
黒い服 といってももう黒い服はやぶれて形もないのだが、肩はやぶれ血が噴き出し
棒頭が殴っても立ちあがらなくなった。
「おい、戸板を持ってこい」
棒頭は手下に命令すると持ってきた戸板を黒い服の上に置いた。
「おい、おまえとおまえとおまえ、板の上に乗れ」
岩男は指さされ戸板の上に乗る。
「おい、おまえら飛べ、飛びはねろ」
3人は戸板の上で飛び跳ねる。最初、板の下からぐえぐえ聞こえていたが
ポン と音がして黄色い物が近くに べちゃ と飛んだ。糞だった。
棒頭は「腹が破裂したな、お前らもこうなりたくなかったら働け」とまわりのタコ達に
怒鳴っていた。
そんな騒動を岩男は聞かず、近くにいたカエルを口にほうりこんでいた。
そんな岩男を棒頭は中飯台に上げた。岩男は分からなかったが酒が飲めるのが嬉しかった。
基本タコには私語は無かったが、無口で、殴っても平気な岩男が飯炊きのじじいと話すのを
棒頭は黙認していた。
飯炊きのじじいは、京都の元先生で岩男に文字や算術を教えていた。愚鈍に見える岩男は
その見かけによらずどんな事も1回聞いたら覚えた。
その飯場の工事が終わる頃にじじい、元先生は教える事が無くなる程だった。
どんなに知識が増えても、岩男には 「優しさ」は理解出来なかった。
工事が終わり、現場の親方に誘われたが岩男は断った。満期まで働いたが手元に残った金は
2円だった。
知識が増えても岩男は岩男だった。女を抱く為にまたタコの契約を結んだ。
たった2日間の為だけに6ヵ月のタコ労働だった。
今度の現場は鉱山だった。
岩男はセメント袋を履いた、ガスでやられた死人の様な顔色の朝鮮人から黄色い硫黄の鉱石を受け取り
精錬所まで運んだ。
ある時、朝鮮人3名が逃げた。そこでは上飯台になっていた岩男は連れ戻す為に朝鮮人を追いかけた。
死にかけた朝鮮人と岩男では違いすぎる。
程なく追いつき、棒を持って近ずくと朝鮮人達はひざまずき頭を下げて何か叫んでいた。
そんな朝鮮人達を見ていて岩男は何を思ったか、朝鮮人達の腕を引っ張り一緒に山の方へ
歩きだした。道なき道を歩き、何日かすると朝鮮人は1人死に、1人は熊に喰われ、残り1人となった。
山で育った岩男は、朝鮮人の金に食べ物を採って与えた。身振り手振りで岩男は朝鮮語を
覚えていった。金は岩男に朝鮮の事を話した。糞まみれで暮らし、食う物も無い、仕事もない。
そんな時、日本にはいい仕事、いい暮らしがあると聞いた。
地獄から抜け出せるなら、何でもよかった。仲介人に金を払い海を渡った。しかし朝鮮人の仲介人に騙されていた。金で売られていたのだ。
金と別れる時には、岩男はもう朝鮮人の様に朝鮮語を話すまでになった。
岩男は今まで自分がされた事、ポン引き、人売り、運び屋をやり金を稼いだ。
しかし稼いだ金は、僅かの酒と女に消えていった。
ある酒場で酔っ払いが岩男にからんできた。岩男は相手にしなかったがタコタコうるさかったので
ちょっと押してしまった。岩男にとってはちょっとだったが、男はすっとび頭をかち割って死んだ。
そいつは地元の顔役であったので、警察をさけて岩男は樺太に渡った。
樺太で岩男はタコとなり現場に入った。そこでも騙されて内地から来た日本人、半島から来た朝鮮人、そしてアイヌがいた。
樺太は北海道より厳しく、自然だけでなく仕事も厳しかった。岩男以外の者はバタバタと
倒れていった。冬の川さらいでは岩男とアイヌしか水に入っていられなかった。
他の出身者は凍傷になり、足を切断した者はわずかな金を与えられ、外にほうりだされた。
岩男もアイヌも黙々と作業をこなした。
棒頭といっても日本人。樺太の外は厳しかった。とても見張りなど出来ない。吹雪の中、岩男とアイヌが何か話ながら作業しているのは分からなかった。
岩男はアイヌ語を覚えた。アイヌから樺太の自然で生きる術を教わった。
岩男は満期になると樺太を北へ北へと向かった。
海の向こうはロシアだ。
小舟を操る男に声をかけた。二グヒ族だ。なんとかアイヌ語が通じる。
岩男は満期で貰った金を渡し対岸ロシアへと運んでもらった。
対岸ロシアは岩男の考えと違い、人があふれていた。華人、モンゴル人、アルタイ人
市場がたち人々は物の売り買いをしていた。
今までと違い、青い目、茶色い髪、白い肌、褐色の肌。
岩男は自分と似た容姿の男を朝鮮人と思い朝鮮語で声を掛けた。
男は華人の商人だった。華人の男は商売柄朝鮮語も話せた。岩男は朝鮮人を装い
華人の男、李と行動を共にした。李も荷運びを手伝い、用心棒にもなる岩男は使えた。
使えるどころか直ぐロシア語、満州語、北京語をマスターし、商用の計算、帳簿も覚えた。
李と岩男は仕入れた品物を運び奉天へ向かった。
しかし奉天に向かうには戦場を抜けなければ行けなくなり、李は北へ向かうというので
ここで別れることにした。李は岩男に養子にならないか引きとめていたが、岩男にはそんな気は全く無かった。1人南へ歩いて行く岩男の姿が見えなくなるまで李は見送っていた。
岩男は荒野を一人歩いた。満州人からチェンピンをもらい塩をつけて食べた。
満州の自然は故郷も北海道も樺太も役にたたなかった。
李から貰った金と体力が頼みだった。
ある日山賊に岩男は囲まれた。相手は銃を持っている。
抵抗しないで持ち物を差し出した。
しかし山賊は岩男を解放してくれなかった。
岩男はいい奴隷となった。
山賊の頭領はトウといった。トウは満州国軍の脱走兵で日本軍から軍事教練をうけていた。
トウは元々の出は良く、兵法、戦略、戦術の知識、考えも持っていた。
黙々と荷物を運ぶ岩男は、いつからか兵器の整備や管理までする様になった。
トウは弱体した軍閥を狙い、兵器、食料を強奪した。強奪というものの
それは戦争そのものだった。
岩男は兵器の使用方法を覚え、兵站の大切さを知った。
しかし満州の地もいつまでもいる事をゆるしてはくれなかった。
トウは凶弾に倒れた。寝返った部下の一発の銃弾だった。
トウがいない山賊の崩壊は早かった。それぞれが武器、食料を奪い合い翌朝には
もう誰も残っていなかった。
岩男は南に向かった。朝鮮を目指した。北海道で出会った金を思い出したからだ。
朝鮮は日本の領土でもあり、なんとかなるだろうと思った。しかし朝鮮も日本の弱体化で
混乱していた。南満州の地で岩男は金と名乗り山賊にもぐりこんだ。
何もかも出来る岩男はたちまち頭角をあらわした。まわりの者をタコの様に扱い
収奪した。武器を集め女をさらった。
タコ部屋での階級を、待遇を、収奪を、上に対する絶対服従を、すべての経験は
岩男を頭領にまで押し上げた。
ある時、華人李が訪ねて来た。何年かぶりの対面であったが2人は昨日会っていたかの
様に話した。李は中国共産党の幹部になっていた。
李は岩男に第一路軍に入らないかと勧めた。岩男は革命とか、共産主義とか興味は無かった。
しかし、名前だけは第一路軍の配下となり、しかし山賊には変わりは無かった。
しばらくして共産党の朝鮮人狩りがはじまった。スパイ容疑でどんどん殺されていったが
岩男は李との関係からか追及されなかった。
岩男の組織は大きくなっていた。強奪範囲も広くなっていった。
岩男は初めて川を渡り略奪のかぎりをつくした。岩男は気にしていなかったが
それは南満州から朝鮮に国境を越えていた。
日本軍は岩男を目の敵にした。賞金もかかった。略奪どころかどんどん攻めこまれた。
岩男は良く知っていた。朝鮮人は直ぐ裏切る。嘘をつく。弱れば直ぐ売られる。
岩男は軍団を飛び出した。
また岩男は1人になった。荒野を1人歩いた。その先にはロシア沿海州が
樺太、北海道が待っているはずだった。
しかし岩男は日本に戻ってはいない。金のまま一生を終えた。
終えたというより最後は子供に殺された。
岩男は後悔していない。82歳まで生きたし、何千万人ものタコ労働で大将軍に、そして北朝鮮人民共和国
一国の主になったのだから。
そう、金は日ほんから成りあがったのだ。
あくまでも、フィクションです。
歴史事実、差別、など偏った考えはありません。
ニュートラルな気持ちで読んで下さい。
あくまでもフィクションです。
作者より