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指輪。
財布の個別ポケットに入っているシルバーリングを眺める。
「拓海、まだそれ持ってるのか」
「うん。」
「捨てろ」
「いやだ。」
「そんなもの要らないだろ」
「うるさい。俺には必要な物だ。」
「おい」
「絶対捨てない。あの人の大切なものだ」
「拓海には関係ないことだ。捨てろ」
「関係あるよ。俺があの人の幸せを壊したんだから。」
「それは違う。」
「いや、俺の所為だ。」
「…もういい。帰る」
すこし口論になって明良はムスッとした顔で、ご飯を残して立ち上がった。
「あき、ちゃんと食べろよ」
「……」
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