告白
今回はその名のとおりの内容になっています。
ちょっと今までよりも長くなってしまったかもしれません。
宜しくお願いします。
今日は棚澤さんにこの前の沖縄土産の地ビールを渡すため待ち合わせをしている。一緒に夕飯を食べた時ビールを飲んでいたし、多分これなら迷惑にはならないだろう。
棚澤さんは会うのは僕の家の近くで良いと言っていたけど、お土産を渡したいのはこちらだから棚澤さんの家の近くにしようということになった。
約束している6時よりちょっと前に駅に着いてしまった。
「野田さん!」
声のする方を見たら棚澤さんがオフっぱい服装でこっちに来る。この間とも違う少し明るい爽やかな感じが、普通にカッコいいと思う。髪もワックスとかをつけてないらしくサラサラしていて印象が前と少し違っていて慌ててしまう。
「なんかこの間と印象がちょっと違いますね。
仕事じゃないからあたりまえか…」
そういってあの笑顔でこっちを見ている。同じことを思ってた…
だから、その笑顔は駄目でしょ…
「さ、行きますか。この間美味い店に連れて行ってもらったお返しに、今日は俺が案内します。」
棚澤さんが少しはしゃいでいるように見えた。
*
「じゃあ俺は生を一つ。野田さんは焼酎ですよね?」
「あっはい。」
「そしたらこのダバダ酒のソーダ割り一つ」
感じの良い店員が軽く会釈をして下がっていった。店内はそんなに高級そうな感じではないけれど、雰囲気があって居心地の良い店だった。
「?ダバダ酒って?」
「栗焼酎ですよ。美味いんです。野田さん焼酎派だから一度飲んでもらいたくて。
この辺じゃあまり置いてる店がないんですよ」
なんだか僕の事を考えていてくれるのが嬉しい。
「そうだ。これ、お土産」
棚澤さんがものすごく嬉しそうな顔をした。
「ありがとうございます!いいんですか?もらっちゃって」
「もちろん。棚澤さん、この間一緒に夕飯食べた時にビールだったから
これなら邪魔にならないかと思って」
「邪魔なんて何をもらってもならないですよ。
…地ビール!マジで嬉しいです。」
「喜んでもらえて良かった」
棚沢さんが嬉しそうにお土産のビールのラベルを眺めていたら、さっきの店員がビールとダバダ酒を持ってやってきた。
「それじゃ、いただきます」
「どうですか?ダバダ酒。」
「美味い!ちょっと強めだけど全然大丈夫です。」
よかった~と言いながら棚澤さんが楽しそうにフードのメニューをこちらに広げて選んでいた。
もう…確定だと思う…。僕は棚澤さんが好きなんだと。この笑顔がとても好きだし、もし隣でずっと見ていられたらと思う。
ふっと目が合って、お互いに笑顔になる。
棚澤さんが僕の事をどう思っているかはわからないけど、嫌われていないのは確かだから、もうそれで十分な気がしてきた。ゲイではない棚澤さんが僕と恋愛をするとなればやっぱり色々無理な部分もあるかもしれない。だから、このままで良いと今は思う。このまま、この距離感を保ったままなら、またこうやって一緒に出かけられるかもしれない。
その日僕は自分の気持ちをわかってしまった。でもすっきりとして、ただただ幸せな気分だった。気持ちを伝えたわけでもないのに、こんな事もあるんだと初めて知った。今までとちょっと違う気がする。
*
“おはようございます♪(o'∀'o)ノ
昨日はとても楽しかったです
また会ってもらえますか?“
棚澤さんって天然なのかな、もしくは魔性でしょ。このメール普通好きな子にするメールだと思うよ。でも、嬉しくて顔が笑ってしまう。
“もちろんです。
僕も楽しかったです。
次、空いてる日があったら教えて下さい。
僕が予定合わせます。“
送信…っと。また会える。それだけで1日が楽しくなってくる。だから、棚澤さんはすごいと思う。一言で僕の1日を変えてしまう。
*
「昨日あのDVD買ったんですよ。野田さんに教えてもらったの」
「どうでした?」
「いや、まだ見てなくて。楽しみにしてるんです。」
そういって棚澤さんがニコっといたずらっぽく笑った。今日は僕の家の近くで飲む番だった。お互い少し家の距離があるので、交互に出かけている。
今日、僕が案内した店は間接照明が凝っていてかなり気に入っている。
「そろそろお会計にしますか?」
「あっそうですね。なんか毎回話し込みすぎて遅くなっちゃいますね。」
そういって二人とも帰る用意をして店を出た。またいつもみたいに楽しすぎて遅くなってしまった。外に出ると夏っぽい匂いがしている。
「ちょっとお茶買ってきていいですか?」
「あ、はい。ここから5分くらいのとこにコンビニがあったと思いますよ。
歩いていきますか。」
そう言って駅と反対の方向に道案内をした。店の続きで映画の話をしていたら、目が合った。僕は自然と笑顔になってしまう。
その時、棚澤さんが困ったような顔をした。
「・・・・・あ~もう!!!ギブアップです」
突然、棚澤さんが頭をくしゃくしゃにしながら言うから、驚いて何も言えず見つめてしまう。
「・・・・・・・ずっと言うの我慢してたんですけど、駄目だと思います」
ちょっと身構える。何か駄目な事したっけ?
「その笑顔…」
はい?笑顔?僕の?
言う言葉が見つからず、きょとんとしたまま黙っていたら、棚澤さんが顔を片手で隠してしまった。耳が真っ赤になっている。それに気がついてつられて僕も赤くなる。
「もうギブアップなんで言います!!
俺、野田さんが好きです」
えっ・・・・・・嘘でしょ。
僕が我慢しきれずに好きと伝えることはあっても、ゲイではない棚澤さんから言われるとは少しも思ってなかったから、頭が追いつかない。
沈黙を気まずく思ったのか棚澤さんが真っ赤になったまま話し出した。
「最初、野田さんからのメールを読んでいてどういう人なのかなって…
なんか文章に柔らかみを感じて…
で、会ってみたくなって必要ないのにわざと再作の試作品を持ち込んだんです。
会ってみたら、すごく笑顔が素敵な人だなと思って…
最初は野田さんの笑顔を見ていたいって思うだけだったんですけど
なんか…好きだなぁと…」
どうしたらいいんだろう嬉しすぎて言葉が出てこない。
「いや…ビビりますよね。同じ男にこんな事言われても
俺も最初そう気づいた時かなり焦ったんで」
「…あの、ありがとう…
僕も棚澤さんの事が好きなんですけど…」
「えっ?!マジですか?!!!」
黙って頷くしかできなかった。
「どうしよう…マジで嬉しい…
絶対に在り得ないことだと思ってた
ずっと言うの我慢してたけど、言ってよかった…」
ため息と一緒にすごく安心した声が少し震えていた。
「多分知らなかったと思うんですけど、僕ゲイなんです」
「えええええっ!!」
そりゃ驚くよね…
「でも男だからって誰でも恋愛対象なわけじゃないから。
ただ、棚澤さんは好きですけど…」
最後の辺りは声がかなり小さくなってしまった。その言葉を聞いて棚澤さんが照れたように笑った。心臓が飛び出るくらい動揺する。
「本当に嬉しいです。野田さんも同じように思っていてくれて」
どうしよう…本当に困るくらい好きかもしれない。
「あの…調子に乗って…キスとかしてもいいですか?」
小さく頷くとつかさず柔らかく、でもしっかりと引き寄せられた。
間近に棚澤さんの顔があって照れてしまう…ふっと唇が触れると、棚澤さんが安心したようにため息を吐いて、また唇が重なった。
深く気持ちが伝わりそうなキスだった。
「マジで困るくらい嬉しい…」
僕にしか聞こえないくらいの声で言いながら棚澤さんがくしゃっと笑った。
読んでいただきありがとうございました。
次話は7日七夕の10時更新予定です。