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気持ちの在り処

4話目になります。

読んで頂きありがとうございます。

今回はモンモンと悩んでいるお話になっています。

楽しいんでもらえたら嬉しいです。

“本日測定した26点分の結果を纏めて添付しています。

 確認をお願いします。

 明日は私用で休暇を頂きます。

 測定結果の報告ですが、他の者がいつもと同じようにメールにて送信いたしますので

 宜しくお願い致します。


 金曜なので3連休です。

 仕事頑張って下さい。


                         品質検査部

                            野田有也“



棚澤さんと自分との距離感があまりわかっていない僕は休みの報告をするメールをどう書いたらいいのかわからない。

明日休みですと言うだけなのに色々考えてみて、結局2行になった。




“お疲れ様です。

 明日、休みなんですね。了解しました。

 3連休かぁ、旅行ですか?

 野田さんがいなくて寂しいかも(´;д;`)ウッ・・

 ゆっくりしてきて下さい。

 俺は仕事頑張っておきます(`・ー・´)b“


前にDVDを探す時に棚澤さんのプライベートの連絡先をもらってから、たまにこうやって仕事以外のメールのやり取りを普通にするようになった。その3連休の中何度も読み返していた。


「どうなんだろ…」


なんかよくわからない…


「なんだよ~野田!!長い便所だな」


俺、酔っ払いですと言わんばかりの顔した男が僕に早く来いよ~と叫んでいた。

高校からの親友の矢川だ。

仕事を休んだ理由は高校の友達の結婚式のためだ。今時な感じのリゾートウエディングという事で、沖縄まで来ている。このアホそうな矢川と今日の主役の新郎と僕は仲が良かった。


何度メールを読み返して考えてみてもよくわからない。

僕が女の子だったら、あるいは棚澤さんがそうなら、恋愛感情みたいなモノがありそうな距離感だと思う。お互い嫌いならここまでメールしたりしない。

でも、面倒なのはお互い男っていうところだ。多分、勘だけど棚澤さんはゲイではない。

じゃなんでこんなにメールをするんだろ…好意があるから…と思ってしまう。でも、ゲイでない人が、仕事でメールのやり取りをしていた男にそれだけで、そういう気持ちは持たないと思う。

で、また僕が女の子だったら…っていうところに考えが戻ってループしている。


「野田!!ほら2次会行くぞ!!

 ぼけっとしてると沖縄で迷子だぞ!!」

「はいはい。お前こそ2次会とか行けんの?」

 明日には帰るんだぞ?二日酔いとかで飛行機乗り遅れるなよ」

「大丈夫だっつうの!!」


いや、千鳥足だろ…マンガみたいな…


昨日、金曜に沖縄に着いて今日が結婚式、で、明日には東京に帰る。棚澤さんが云うようなゆっくりした旅行にはならなかった。しかも、多分酔っ払いの世話係りという役目もついてくる。


「でもさ…お前は損じゃね?」


僕が遅かったのと、矢川の千鳥足のおかげで2次会へは二人で遅れて到着になってしまう。


「?なにがだよ。」


突然、酔っ払いが会話の脈絡もなしに言い出した。


「だってさ、お前は結婚式しねぇじゃん。ご祝儀もらえなくね?

 毎回渡すだけで、返ってこないだろ」

「はい?別にお返しが欲しくて友達にご祝儀あげるわけじゃないだろ?」

「そうだけどさ…」

「なんだよ。ごにょごにょしゃべんなよ、酔っ払い。」

「だいたいお前がなんか考えてる時は恋愛関係の事だろ!だから結婚式とか出んの微妙なのかなと思った んだよ!」


意外に観察されてて驚いた。江川は唯一僕がゲイな事を知っている。恋愛関係以外の日常の中でその事を知っているのはこいつだけだ。

高校の頃、僕の世界は社会人になった今よりも狭いくて、誰にも言えないまま自分の事でかなり悩んだ。それをこいつだけは気がついた。最初こそ黙っていたものの、しつこく相談しろと言われ続け、ついに話してしまった。話し出したら止め処なく思っていた事が出てきて、云い終わってすごく気持ちが楽になったのを覚えている。



「そんなわけないだろ。友達の結婚式に。」

「じゃあ、どうしたんだよ」


しばらく言うのかどうしようか考えたけど、こいつのことだから話すまでうるさく訊いてくるだろう。


「お前だったらさ…仕事で一言二言メールのやり取りをずっとしていた男に、仕事以外の話をメールして みたり、プライベートの連絡先教えたりする?」

「しない」


即答だった。


「じゃあ…」

「俺がそんな事するとしたらよっぽどそいつが金持ちとかで…いやぁ、金持ちでもしないな。よっっっぽ ど暇か、それか好きとかじゃなきゃしないだろ」

「・・・・・・・・」


そうなんだろうか…


「でもさ多分だけどゲイじゃないんだぜ。相手は男なんだし…」

「珍しいな、面倒くさがりのお前がそこまで考えんの」


確かにいつもは面倒なことにならないよう、ゲイとしか付き合わない。

だから余計にわからない。


「同じ男にゲイでもないのにそんなにメールしないっつうの。お前だって俺にメールなんてそんなによこ さないだろ」


なるほど…僕も江川達にメールするのは飲みに行くとか何か用がなければしない。


「そっか…」


なんだか納得してしまった。


「つうか、お前はどうなんだよ?」

「えっ」

「相手がどうのよりもお前がどう思ってるかの方が重要じゃね?相手がどう思ってるかで行動するより、 お前がどうしたいかだろ」

「・・・・・・・」

「あっ俺はお前にご祝儀やるからな!!!式挙げれなくても」



僕がどうしたいか…。ふと考え込んでいたら江川が突然走り出した。

2次会の会場に着いていた。


「おい!!野田!!早く行かないと酒なくなるぞ!!!」


いや、酒の前に新郎祝えよ…。そう突っ込みながらも、こいつ、すごいなと率直に思う。

高校の頃、僕が自分の事を相談した時も普通に話しを聞いていた。高校生の子供なのに茶

化すでもなく。でも、誰もがそうではないのもわかっている。

江川はそのまま皆の輪に入って酒をグビグビ飲んでいた。立ったまま飲んでいたから千鳥

足のせいもあって、他のグラスを倒してしまい大騒ぎだ。

・・・・・やっぱりすごくはないかもと思い直した。アホだけれど良い友達だともほんの

少し思った。



                     *



ホテルの戻ったのは日付が変わってからになってしまった。

特に携帯にメールはない。

少し考えてから、やっぱり棚澤さんにメールをすることにした。

寝てて迷惑かもと思ったけど、前に週末はけっこう遅くまで起きてることが多いと言っていたし、一言だけだから…というより自分がメールしたいと思ったから…



“こんばんは。

 寝てたらすみません。

 今、友達の結婚式で沖縄に来ています。

 棚澤さんにお土産買っていきますね。“


このくらいなら夜中でも迷惑じゃないだろともう一度メールを読み返して送信した。

とりあえず、スーツを着替えないとと立ち上がった時、携帯がなった。


「早っ。」


“こんばんは(o・ェ・o)ノ

 旅行じゃなくて結婚式だったんですね。

 お土産すごく嬉しいです。

 楽しみにしています。ウッホ━━━━ヽ(*'∀`*)ノ━━━━イ“



返信が早かったから、まるで棚澤さんがメールを待っていてくれたように思えてしまう。

もしそうなら嬉しいと思った。

早くシャワー浴びて寝よう、明日は棚澤さんにチェックアウトの前にお土産を選ぶから早く起きたい。


棚澤さんの事が好きなのかもしれない…お土産を渡したい、メールでいいから話がしたい…ただ素直にそう思った。


次話は明日6日10時更新予定です。

もしよければ読んでみてください。

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