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おはようございます。

 32件分の測定結果確認しました。測定値オーバーの1品番につきましては

 対策をこちらで講じてご連絡させて頂きます。


 この間教えてもらったレシピ試してみました。

本当に短時間でできて美味かったです(*゜∀゜*)イイ!!

 

                       品質保証部

                         棚澤 明倖“


僕の名前は野田有也。

仕事は本社から送られてくる試作品の測定や耐久試験をして

その結果を毎日夕方、本社のこの棚澤さんって人にメールすること。

前は単純な挨拶と一言二言仕事に関してのやりとりだけだった。


今はなんか文通みたいになっている。パソコンはほぼ一人一台だし、アドレス管理も

徹底してるからこのメールのやり取りを他の人が見ることは無い。

他愛も無いことしかメールしてないけど、さすがに仕事以外のメールはまずいとは思っている。


でも、この人とのメールはなんだか…楽しい。


棚澤さん。

名前以外何も知らない。

でも、この人とのメールは好きだ。なんかくすぐったい感じがする。

名前以外何も知らないから、自分にとって気楽なのかもしれない。これ以上深く関わる事はないから。


「野田君。本社は何だって?」


同じ部署の大木さんが今日中に終えないといけない試作品を持って入ってきた。


「あ。なんか保留です。対策って言ってたから…

 今日多いっすね。耐久は種類の指示きてます?」

「んー…熱とかはいいみたい。とりあえず強度のみでいいかもな。」

「じゃあ、僕、先に3D測定に行ってきます。」

「おー頼むわ。」


試作品なわけだから、規定値をオーバーするなんてそんなに珍しくはない。

測定対象の試作品が多ければ仕事も増えるわけだから、さっさとこなして早く帰るのが一番だ。


「棚澤さん…絵文字って歳いくつなんだろ」


3D測定室までの廊下を歩きながらメールの事を思い出していた。

少し笑える…料理の事聞いてくるくらいだし、多分、独身。

同じジャンルの映画に詳しくて、多分、好きな食べ物も同じ系統だと思う。

結構…話も合うと思う…

でも全部不確実だ。会ったことがないから…


「いや…会いたいとかじゃないし…」


「なにぶつぶつ言ってんの?」

「っ!!びっくりした。いきなり後ろから声かけないでくださいよ」

「ごめんごめん。これも3D測定宜しく。」


そういって大木さんが試作品を一個追加してきた。


「あっはい。」

「今日は終わるの8時過ぎかもな。夕飯一緒にどう?」

「すみません。今日はちょっと…」

「そっか。んじゃ、測定宜しく」


基本僕は自分を冷めた人間だと思う。誰とも話さない関わらないでくれ的な感じではないけど、そんなに社内の誰かと仲が良いわけでもない。

自分がゲイと気づいてからは特に少し距離を取るようにしてきた。


大木さんは嫌な奴ではない。

今もそうだけど、普通に接近しすぎない感じの距離を取りつつ

仕事がしやすい感じをキープしてくれる。

でも、夕飯を一緒にして、彼女いるの?とか訊かれたり

それの答えを考えるのは面倒くさい。

もしゲイって勘付かれて、変に気にされても面倒くさい。

確立低いけど、もし大木さんがゲイでも、会社内的に色々面倒くさい。

で、当たり障り無くプライベートは関わらない事になってくる。

何回か断っていれば向こうも、距離を理解してくれるし。



                    *


「あれっ!?野田君、まだ居たの?」

「お疲れ様です。いま、測定結果をまとめてたんですよ。とりあえず、今日の分は終わりました。大木さんの方の結果も他の人の結果と一緒にPDFにしちゃいましたけど、いいっすか?」

「おぉ…サンキュー。9時半か…結構かかったな。

さて、俺はあとを野田君に託して帰る事にするわ。」

「いいっすよ。もう送信するだけなんで。」


挨拶も適当に着ていた白衣を放って大木さんは帰っていった。僕もそろそろ帰ろう。

あとは測定結果をメールするだけだし…


“お疲れ様です。

 測定値オーバー品はこちらで保管しています。

対応が決まり次第、ご連絡をお願いいたしします。

 本日、測定品の結果を纏めましたので、確認を宜しくお願い致します。


 あの料理はかなりの頻度で僕も作ります。

 1番得意かも。

 この間、ブレッド監督の最新作のCM見ました。

 かなり面白そうですよ。

 ちょっと日本版のCMの編集が好みじゃないですけど。

 中身は変わらないんで、楽しみです。


                         品質検査部

                            野田有也“


「送信…っと」


少しメール長かったかな…と思ったけど、そんなに仕事に差し障る長さじゃないし

大丈夫だろ。



                     *


「おはようございま~す」


といって入っても誰もまだ出社していない。

いつもメールを読むから、早めに来ている。

パソコンをつけて、起動させている間に自販でコーヒーを買ってくる。

で、メールの確認。いつもの毎日だ。



“おはようございます。

 45件分の測定結果確認しました。


 あの映画、俺もかなり期待大だったんですよ。

 たしかに日本版CMは微妙です…内容とか雰囲気が違う気が…

チガ───ヽ(`・Д・´)ノ───ゥ!!


あっそうそう昨日の測定値オーバー品ですが、今日、再作の試作品を

持ってそちらに行きます。

初、野田さんにご対面です(*´゜∀゜`*)ゞ

宜しくお願いします。


                       品質保証部

                          棚沢 明倖“




・・・・・・・・・・えっ???・・・・えええええええっ!!!!!


棚沢さん、こっちに今日来るの??

えっ!はっ?


「っうわ!!」


朝、1番、あまりに驚きすぎてコーヒーをこぼしてしまった…


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