* 八 *
電話一本で呼び出されて慌てて駆けつけると彼女は警察にあれこれと質問を受けている最中だった。
聞いたところによると実験体を回収しにタクシーで向かったはずが、その車で轢き殺してしまったとのこと。
なんて皮肉。
しかも生きた人間を巻き込んでしまったはいいが、その人物は送った先の人物ではなく、何故車に飛び込んできたのかも分からないと言う。
「死ぬって、どんなことかしらね」
迎えに行ったボクに彼女が一言。
「さぁ、理解し兼ねますね」
「人形も、死にたいと思うのかしら」
彼女がくわえた煙草にさりげない動作で火をつける。
「どうでしょうか。……でも、それが自立型の特性でもあるのではないでしょうか?」
彼女は青く晴れ渡った空を見つめたまま黙っている。
「生きていると言うことの対極に死んでいくことがあるのでしょうから」
彼女は煙をゆっくりと吐き出し、ポツリと呟く。
「?」
「あのコの幸せって、何だったのかしらね」
彼女はしみじみと繰り返し、それ以上のことは言わずにボクの車に乗り込んだ。
ここまでお付き合いくださりありがとうございました。
続きは6時間後に公開予定です。




