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なぞの転校生(テレビドラマ)

 原作は眉村卓のSFジュヴナイル小説。75年NHK「少年ドラマシリーズ」の1本として放送されたドラマの39年ぶりのリメイク。テレビ東京「ドラマ24」枠、全12回。

 というのが作品の基本情報。

 今回のリメークの売りは


 企画・脚本=岩井俊二


 でしょう。

 岩井俊二って、すごくセンスがあるのは分かるんだけど、イマイチきちんとした作品が少ない(企画物が多いなあという)気がして、惜しいなあと思います。

 常々もっと普通の娯楽作で勝負してくれないかなあと思っていたのですが。

 そんなところにこの「企画・脚本」ということで、題材がSFジュヴナイルということで、これはいったいどんな仕上がりになっているのか、興味津々で見ました。


 第1話。

 高校2年生のSFオタク(SF研究会部長)、岩田広一は、同級生で幼なじみの香川みどりといっしょの帰り道、夕焼けの空に複数の奇妙な流れ星を見る。

 流れ星の空に登っていくような動きを不思議がる広一に対し、みどりは流れ星に願い事をしている。呆れた広一が「何お願いしたの?」と訊くと、「ないしょ」と微笑む。

 ・・・・うん、いい!

 映像の詩的な美しさと、主人公とガールフレンドの初々しい距離感。

 第1話後半は謎の幽霊騒動へ。

 発端は体育準備室の跳び箱の中に隠れて女子の着替えを盗撮していたスケベ男子。(オイオイ。)スケベ男子はあえなく忘れ物を取りに戻って来たヒロインに跳び箱から出て来た間抜けな姿を見つかってしまう。(あーあ。)

 そこで謎の発光現象が起こり、盗撮の件はうやむやに。

 主人公とヒロイン、スケベ男子と彼女の4人で夜の学校に忍び込み、「幽霊」の正体を見極めようとする。

 警備員に見つかって慌てて逃げ出して、ここでまた発光現象が起こり、透明の人間(幽霊?)が体をすり抜けていく。

 ちょっとしたホラータッチで、夜の学校はわーわーきゃーきゃー大騒ぎ。

 ・・・・うん、いい!

「学園で起こる謎の事件」というシチュエーションで期待する、期待に見事に応えてくれている。これが、

「こういう風に描けば喜ぶんだろう?」

 というんじゃなく、制作者自身が、

「こういうの、楽しいよなあ」

 と、本当に好きで、楽しんで作っているのが伝わってくる。


 わたしもよく知らないんですが、39年前の「少年ドラマシリーズ」のドラマは思い入れの強いファンが多いらしく、岩井俊二もその一人の模様。

 監督は長澤雅彦。わたし見てませんが恩田陸原作の映画「夜のピクニック」の監督さんです。岩井俊二氏とは20年来の付き合いだそうで、作品世界はばっちり共有できてます。


 そして第2話。

 いよいよ「なぞの転校生」の登場。転校してくるのは次回ですが。

 まずは休日の主人公と遭遇。

 もう思いっきり様子が変。どうも地上に降りて来て、「インストール」の最中らしい?? 何者?

 彼はマンションの主人公の隣の部屋の老人ミッキー・カーチスの孫と名乗るのだが………

 演じているのが本郷奏多。知ってますか? わたし、この子、大っ嫌い!(笑)

 わたしが見たのはパラレルワールド版二十面相の「k-20 怪人二十面相・伝」の憎ったらしい小林少年と、「GANTS」の憎ったらしい高校生(笑) だって本当に憎ったらしい、ねじれた顔で演じてんだもん。

 で、大嫌いだった本郷君。これがね、

 いいんですよ。

 すっごい。

 おかしな言動をして、「冗談だよ」と爽やかにはぐらかして、全然冗談に見えなくて、漂うそこはかとない孤独感。

 見ていて泣きたくなるくらい、はまり役で。

 後半登場するお姫様の忠実なボディーガードで。騎士と王子様の中間って感じで。

 ちょうどずうっと白目演技の怪優だった北村一輝が、今は普通の演技ですっかり大人気俳優になっているように、本郷奏多もこれを機会に普通の人気俳優になっていくんじゃないかなあ?

 ともかく、今の時点に置いては本郷奏多の怪しい魅力があってこそ、このなぞの転校生、山沢典夫がすごく怪しく、魅力的なキャラクターになっています。

 いい! もう、すごくいい!


 この後の展開は、まあ、機会があったら是非ご覧ください。

 なんだかすごく中途半端な紹介ですが、これだけ「いい!」を連発すれば、いかにわたしがのめり込んで見ていたかお分かりいただけるでしょう。


 もうちょっとちゃんと総括すると。

 作りは全体にすごく手作り感に溢れています。

 お金のかかったSFXとか、ほとんどありません。

 SFXっぽいのは謎の発光現象くらいのものですが、パソコンで作ったんだろうなあー、と全然お金がかかっているようには見えません。

 でもセンスは感じます。

 センスがあれば、お金かけなくても魅力的な映像は作れるんですよ。

 極端に言えば、全編に渡って、高校生が部活動でも作れそうなドラマです。いかにも映研の学生たちが「俺たちもこういうの作ろうぜ」と作りたがりそう。

 実際似たような物なら作れるでしょう。が、これだけの物を、

「作れるものなら作ってみろ」

 と思ってプロたちは作っているでしょうね。

 でも全然別の立ち位置で作っているわけでもないんですよね。

 SFXや高価な機材で作ってるんじゃなく、あくまでも内容でハイレベルの物を作っているということです。


 詩的で、ノスタルジックで、若者たちが瑞々しくて。

 学園青春物の日常に徐々に謎が浸食してくる前半がドキドキワクワク感がたっぷり楽しめていいです。

 表立って「敵との戦い」みたいな派手なシーンはないんだけれど、

 脚本岩井俊二はいかにもSF的な細かい設定を全編に渡って投入している。

 うーーん…………

 一つ大きなネタバレをやらかしちゃうと、

 舞台となっている主人公たちが普通に高校生活を送っている世界には、「ショパンの雨だれ」がありません。

 これがどういう意味かは……ご自分でご確認ください。


 最終話。

 ラスト10分驚愕の展開! と予告されていたので、おいおい、ここまで来て全部台無しにするようなことしないでくれよ、と心配しながら見たんですが、杞憂でした。いい終わり方でした。

 この文章書くのにネットで情報をあさっていたら、主人公の父親のサイエンスライターを演じていたのが、39年前のドラマで主人公を演じていた俳優さんだったんですね。憎い演出と言うか、本当にスタッフがオリジナルのドラマを好きだったんだなあと、ほのぼのしました。

 でも脚本はオリジナルからかなり変更されているそうで、オリジナルは知らないですが、テイストはすごく近いんじゃないかな?と思わせるところが見事です。


 こういうジュヴナイル小説系のドラマはいいなあ。

 物語がすごくピュアで、純粋に物語の面白さで魅せてくれる。

 変などぎつさや萌えとか無しに。

 こういうドラマ、もっともっと増えてほしいなあ。


「なぞの転校生」は全国順次放送中のようで、現在放送中、これから放送の地域もあるようです。

 見られるチャンスがあったら是非どうぞ!

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