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ドールズ(小説)


 深夜「集合住宅の恐怖」という番組を見つけて、わーい、ホラーだ♪と喜んで見たら…………ゲロゲロ。もしかしたらわたし、ホラーって嫌いかも…………

 集合住宅=マンション、アパートを舞台にした短編オムニバスで、「あーあ、殺されちゃった」で終わるパターンが基本、なのかな? お化けとかじゃない、現実のリアルホラーです。

 こういうタイプのホラーは嫌いだなあと思ったら、


 <ホラー界を代表する三木康一郎と長江俊和監督作品。>


 ということで、おのおの「トリハダ」、「放送禁止」の監督さんの作品でした。うーん、やっぱり苦手。

 しかし、実は、見ていてすごーく怖かったんです。好き嫌いとは別問題ですね。「アパートの女子大生の部屋をいつも見ている男」なんて、あらすじ聞いちゃえば「なーんだ」というおなじみの話ですが、映像で見るとやっぱり怖い。めちゃくちゃ怖い。これを怖くないと言う人がいたらちょっと感覚が麻痺していると思われますのでご注意を。

 東京での放送は終わってるのかな? YouTubeでいくつか見られますのでどうぞ。



 さて、どぎつい、怖すぎるホラーを見てしまったので口直しに上質な恐怖小説を。



  ドールズ 闇から来た少女



 作者は高橋克彦氏。1987年作品。


 まだ雪の残る春先の夜、7歳の少女、れいがひき逃げに合う。幸いけがは足の骨折だけで命に別状はなかったものの、それ以来様子がおかしくなる。まったく口をきかず、血圧は子供にはあるまじき数値を示し、たびたび発作を起こす。入院した病院ではおかしな事件が起き、それはどうやら怜の仕業らしい。こっそり監視カメラを仕掛けて見張っていると、はたして真夜中、歩けないはずの怜が起き出して・・・・

 そもそも何故7歳の少女が真夜中に家を抜け出して事故に合ったのか?

 様子のおかしい彼女にいったい何が起こったのか?

 口をきかず、親しい身内にも態度を硬化させた怜が、唯一心を開いて笑いかけたのが、叔父の知り合いの美しい女性。

 彼女は人形作家だった。


 という感じで、すごーく簡単に説明すると、

「エクソシスト」みたいな感じ。です。


 でもこの小説、大して怖くありません。

 ホラー小説に対して怖くないと言うのも失礼ですが、

 怖いよりも、ゾクゾクして、謎の正体が知りたくて、ページをめくる手が止まらなくなってしまいます。

 なんだか度々書いているような気がしますが、ホラーで怖いのは、正体が分からない恐怖、が一番大きいと思います。

 この小説、前半ではこの「分からない恐怖」が背筋をゾクリと這い上がってくるような怖さを感じさせてくれるんですが、かと言って実際には怖いこと(人が殺されたりとか)は起きません。「分からない」から怖いというのを、登場人物たちの正体不明の物に対する実に普通の対応で味わわせてくれます。ことさらホラー小説らしい描写というのも特にないんですね。

 わたしの持論で、ホラーは日常感覚から外れてしまうと(リアリティーを失って)怖くない(マンガになってしまう)、というのがあるんですが、改めて考えてみるとこの論理って、この「ドールズ」に教わったように思います。

 実に上品に、上質の娯楽小説であるこの作品。

 作中、どぎつい血みどろホラー(リアルSFXのゾンビ映画)に対する批判が登場人物の口を借りて語られます。


「グロテスクなんてもんじゃないぜ。作り物だから構わんという理屈は通らない。昔のお化け映画はもう少し可愛げがあったがな」

「日本人の情緒が不安定になった原因は、こいつにもあるんじゃないか」

「これだけを見せられ続けたら気が狂う」


 と手厳しい。実はこれも物語の伏線だったりするんですけど、半分は本音じゃないかと思います。

 そんな物(血みどろのゾンビ)なんか怖いに決まってるけど、その怖さって、楽しいの? 面白いの? 全然面白くも楽しくも感じないんだけどなあー。なんでこんな物が受けるんだろうなあ、ブツブツブツ…、と。


 じゃあどういう「怖さ」が面白いだ? 楽しいんだ?


 というのを、この小説では存分に書いているわけで。


 前半では「正体の分からない怖さ」を書いて背筋をゾクゾクさせてくれますが、どうやらこういうことらしい、というのが分かってきて、徐々に具体的な正体に迫っていくわけですが、

 この小説が娯楽小説として一級品なのが後半。

 「正体の分からない怖さ」は徐々に正体が分かっていくに従って薄れていくものですが、この作品は、正体が明らかになっていくに従って、今度は「知りたい、けれど、知りたくない」という正体そのものに対する恐怖が徐々に立ち現れてくるのです。

 これはこの物語の「7歳の少女」が変になってしまうという設定そのものがいかに秀逸であるか、ということなんですが、もちろんここでその正体を明かすことは出来ません。


 後半もだんだんまた怖くなっていく、わけですが、実際にはやっぱり怖いことってなんにも起きません。

 怖いことがなんにも起きないのに、「怖さ」だけを味わうことが出来るんですから、ホラーとして最高の娯楽です。

 そして、この正体を追いかけていく過程がまた面白くてゾクゾクしちゃうんですよ。


 高橋克彦氏の代表作は何か?というのはファンの間でも意見の分かれるところと思います。「ドールズ」を挙げるファンも多いと思いますが、わたしはやっぱり「総門谷」を挙げたいと思います。

 分厚い! 文庫本で780ページあります。

 でもこの分厚さが、読んでてゾクゾクして、面白くてしょうがないんですよ。

 内容は、…この例えで今の人に通じるか分かりませんが、

 UFO研究家の矢追純一氏がUFO取材で関連する世界各地の遺跡を巡っていたら、本当にUFOに遭遇して、宇宙人に会っちゃった。

 という感じです。うーん…、違うぞ!、と怒られそうな気もしますが、ま、だいたいそんなところです。

 高橋氏の1983年、江戸川乱歩賞を受賞したデビュー作「写楽殺人事件」からその特色は顕著ですが、この江戸の天才浮世絵師写楽の正体は何者か?を推理する歴史ミステリーでもある殺人ミステリー。具体的な証拠をこつこつと収集して、それを材料に大胆な仮説を組み立て、それを織り込んだ娯楽ストーリーを展開する。

 「総門谷」のUFO追跡も、そして「ドールズ」の少女の身に起きた怪異の正体を探る旅でも、やはり(現実の)証拠を丹念に集めて、驚くべき真実を説得力をもって解き明かします。

 この謎が解き明かされていく具体的な過程が、ゾクゾクする楽しさなんですよ!

(今回再読するにあたってネット検索で画像を見つけて、より具体的に楽しむことが出来ました。最近ですと「やりすぎ都市伝説スペシャル」のMr.都市伝説こと関暁夫の「フリーメイソン追跡」の面白さに通じるかも)


 「総門谷」は780ページですが、「ドールズ」はたったの340ページです。もう面白くてあっという間に読んじゃいますよ。

 ここで、読んでみようかなあー…、と思った方に注意。



  絶対にwikiとか検索しないように!



 せっかくの謎を解明する楽しみが台無しですからね。

 是非とも白紙の状態で、少女の身に起こったミステリーをお楽しみください。

「ドールズ」は続編もあるんですが………、取りあえずその存在は忘れてください。

 やっぱり第1作が大傑作です。

 くれぐれも検索しないように!

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