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プラチナデータ

 テレビで見ました。


 去年年末から今年新年はテレビばかり見ていました。

 見ていたのはテレビドラマ「鍵のかかった部屋」集中放送。以前ネットの記事で「BGMが凄い!」というのを読んで、どんな感じなのかチェックだけするつもりが、ほとんど全部見ちゃいました。新作スペシャルドラマもすっごく面白かったです。音楽もよかったですが、演出がホラーの演出ですよね。それをギャグに転用しているところにセンスを感じました。スタッフ、ノリノリで作ってますね。

 他に見たのが、「相棒」元旦スペシャル。「相棒」シリーズは第1シリーズからずっと見ていたんですが、2代目相棒神戸尊の途中から飽きが来て、現在の3代目甲斐亨になってから見なくなっていました。今回は爆破テロリストの話で、「そうだったらたいへんだ」と大きな状況を提示しつつ、意表をついて「実はこうだった」と、実は無難なところに逃げるパターンで、このパターンばっかりで飽きちゃったんだよなーと思いつつ、久しぶりに見たらやっぱり面白かったです。

 更に見たのが、東野圭吾原作「新参者」シリーズの映画「麒麟の翼」と新作スペシャルドラマ「眠りの森」。

 「眠りの森」が面白かったです。

 わたしはこれまで東野圭吾の作品は「容疑者Xの献身」しか見ておらず、原作のすごいベストセラーぶりをちょっと引き気味に眺めていたんですが、「眠りの森」を見てその人気の理由がよく分かったように思います。「容疑者X」も見事な本格推理物だとわたしは凄く感心したんですが、なんだか「本格か否か」という論争が本職の推理作家の間であったようで、うーん……、論争に対するわたしの感想は、広く一般的なベストセラー人気の本質とは全然かみ合っていない論争のような気がします。「眠りの森」も特殊な知識が謎を解く鍵になっていて、「本格」としてはどうなのか分かりませんが、そんなことはどうでもよく、事件の全体像の悲劇性にわたしはすごく胸が熱くなりました。



 さて、その大ベストセラー作家東野圭吾原作の「プラチナデータ」です。

 これはDNAプロファイリング=DNAの解析に依ってその個人が年齢容姿までほぼ100パーセント再現できてしまう技術が開発された近未来のSFミステリー。そのプロファイリングで自分が犯人と導き出されてしまった主人公であるところの開発者が社会に張り巡らされた監視システムから逃走しつつ謎の解明に挑むという内容。

 映画が始まってから「音楽邪魔(うるさい)」と、ちょっと先の出来に不安を感じながら見てました。


 勝手に決めつけてしまいますが(単なる思い込み……ですか?)この映画はトム・クルーズ主演スピルバーグ監督の「マイノリティ・リポート」への挑戦ではないかと。

 「マイノリティ・リポート」は2002年ドリームワークス作品。原作は「ブレードランナー」「トータルリコール」のフィリップ・k・ディック。

 こちらは超能力者の予知に依って犯罪が起こるのを未然に防ぐ(未犯の犯人を既犯の犯人と同様に逮捕)ことが可能になり凶悪犯罪が撲滅された未来世界で、その執行官であるトム・クルーズが自分が殺人を犯すと予知されて、俺がそんなことするわけない、と逃走し、真実を暴こうと奮闘する物語。

 SFアクションミステリー映画としてなかなか面白かったですが、ラストシーンには多いに不満。いかにもヒューマニスト・スピルバーグらしい、ハリウッド映画らしいヒューマニズムに訴える温かなラストでしたが、わたしはこの物語のエンディングは平和な孤島からカメラがずーっと引いていって夜の大都会が映り込んでくるとそこからは多数の銃声と悲鳴が聞こえてくる、というのが正しいと思います。

 わたしは原作フィリップ・k・ディックのファンで、一時期かなり熱中して読み込んでいましたが、この原作は短編で、ちょっとしたSFミステリーの小話、といった物で、「未遂の未来を確定的に扱って個人を拘束することが正当かうんぬん」というテーマ性はなく、超能力者の予知は100パーセント完璧で、それを扱う人間の側に問題があったのだという落ちで、あっけらかんとした物です。


 さて、「マイノリティ・リポート」もテーマの扱いが片手落ちの不満がありましたが、きっと同じく「テーマに対して食い足りないなあ」と不満を感じた(と決めつけてますが)「プラチナデータ」はどうであったか?

 こちらの方が一見「DNAというデータで個人の全てを決定することは正しいか?」というテーマをシリアスに追求しているように見えますが、単純に脚本の出来が悪い。話の本質は「個人はDNAデータでその全てを決定されるべきか?」ということだったと思うのですが、「全国民のDNAデータベースを完成させることが必須」という話になって、あれ? DNAの解析で個人が「再現」できるという技術じゃなかった? データベースとの参照って、技術が後退してない? と思ったり、SFミステリーとしての肝は「DNA解析に依って導き出された犯人像は間違いだったのか?」という論理の解明だったと思うんですが、「俺はやってない」と、単なるアリバイの話になってしまっている。

 凄く魅力的な謎を提示されて、いったいどんな解答が示されるのだろう?とわくわくしていたら、すんごいつまんない答えを見せられてがっかりした感じ。

 でも、映画自体が駄目でつまらなかったかというと、「人は生まれ持った素質によって全て決まってしまうのか?」という一番大きな文系のテーマはちゃんと描かれていて、感動的でした。本筋とはちょっと別の流れになっちゃってましたけど。

 理系としては駄目だったけれど、文系としてはまずまず、といったところでしょうか?

 原作小説とはだいぶ違うようなので、これから見ようかなと思う人はまず原作を読んだ方がよさそうです。

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