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「火垂るの墓」の思い出

 現在(PM9:00)いったい何度目だろうというテレビ放映がされている


「火垂るの墓」


 です。

 昔の人間であるわたしは映画館で観ました。知ってますか?「となりのトトロ」と2本立てだったんですよお?


 以前この映画についてある若い女優が

「不幸すぎて笑えてくる」

 と言いまして、わたしは「この大馬鹿者が」とはらわた煮えくり返る思いがしました。

 映画館で観たわたしは、

「この映画はもう二度と見られないな」

 と思い、以降一度もまともに見ていません。

 思うに上の馬鹿女優は、ストレートに受け止めるにはあまりに重すぎて、それで「笑えてくる」とちゃかして精神的に逃げているんじゃないかと思うんですが、これが本気で「笑っちゃう〜」とか思ってるんだったら、「死ね、馬鹿」と思います。


 この映画は日本アニメ史上のみならず、アニメ史上、最も写実的にリアルなアニメ映画だと思います。

 これだけ写実的に生々しく生きている人物は、他のアニメ映画ではないと思います。「生き生きとしたキャラクター」は他にもいますが、フィルムの中に再現されたリアルな現実世界の中で現実のリアルそのままに生活して、生きている人間は、やはり他にはないと思います。

 ごちゃごちゃ言うよりも、


 実写よりも本物


 でいいでしょう。

 実写映画は俳優が演じて、映画の中でその俳優が死んでも、「はい、カット」で生き返るのは知ってますから。

 でも、絵によって命を吹き込まれた人間は、映画の中の死がそのままその人間の死です。

 そう思えるほど、リアルで、だからもう、どうしようもなく痛々しくて、

 もう二度と見られないな、

 と思ったわけです。



 「火垂るの墓」は反戦映画と言っていいと思うんですが、……これ以前書いたような気がするんですが、最高の反戦映画は同時上映された「となりのトトロ」だと思っています。何かひねくれた、変な理屈でそう思うのではなく、だって、例えばあの世界が、爆弾の雨が降ってきてめちゃくちゃに破壊されて、そこに生きている人たちが死んだり、大けがしたり、泣いたりしたら、ものすごく心が痛むじゃありませんか?

 ああ、こういう平和な世界を壊してはいけない、

 と思うでしょう?

 もっとも、そういう世界が自分たちの手で変えられて、なくなっちゃったんじゃあ、駄目だなと思うけれど。

 「火垂るの墓」も素晴らしい反戦映画だと思うけれど、「笑えてくる」なんて馬鹿な感想を持つ馬鹿が出て来ちゃうからね、どうして人間っていうのはこうなのかな、と、情けなくなってしまいます。



 ところで皆さん知ってますか?

 二度と見ないと言っておきながら、実はちらっと部分的にテレビで見たことはあるんですが、この映画、映画館で公開されたときは、未完成だったんです! 主人公が畑泥棒するシーンですが、ここが色が付いてなくて、線画だけになっていたんです。当時はまさか未完成の映画を公開するなんて思ってもなくて、変な演出だなあ、内容的にきついシーンだからこんな表現にしたのかなあ?なんて思っていたんですが、後から実は未完成だったと知ってびっくりしました。すごいことやっちゃったもんだなあと。それでそのシーンだけ、「あ、色が付いてる」とテレビで確認したわけです。


 ところでですね、

 この2本立て映画の公開の頃、わたくし、「トトロ」の宮崎駿監督に会っております!

 会うと言ってもイベントでトークを聞いただけという、なーんだ、という話なんですが、このイベントというのがすごかったんです。所沢の某デパートでだったんですが、本当にちょっとした、小さなイベントスペースで、観覧自由だったんですが参加者はせいぜい30人程度だったんじゃないかなあ? だいたいみんなわたしと同年代の若者たちで、見るからに「アニメファン」もしくは「宮崎駿ファン」という感じの人たちばっかりでした。

 土曜の午後だったかなあ、映画が完成して、キャンペーン中だったのかなあ、30分程度かな?のトークイベントで、宮崎監督は

「僕はずっとトトロを作りたかった人間なんです」

 なんてことをニコニコしながら話してくれたように思います。

 後半は参加者の質問に答えるというコーナーで、若い女の子に

「クラリスみたいな若い女の子に本気で付き合ってくださいと迫られたらどうします?」

 という質問に……当時は宮崎駿監督と言えばまだまだ「カリオストロの城」が絶大な人気を誇っていて、クラリス姫は永遠のヒロインだったんですよ。


 監督:「若い女性がこんなオジサンに好意を持つというのは一時の不安定な精神の思い込みによるもので、本当に本気で恋するなんてことはありません」

 質問した若い女性:「いえ、本当に本気なんです」(←瞳うるうる)

 監督(う〜ん、困った):「そうしたら女房も仕事もほっぽりだして駆け落ちしちゃうかもしれませんね」(←困った照れ笑い)


 はるか昔の記憶ですが、だいたいこんなやりとりだったと思います。

 監督はきっと『俺はこんなところでいったい何してるんだろうなあ』と内心思っていたことでしょう。

 宮崎アニメがドカン!と特大ヒットを飛ばすようになったのは日本テレビと組んだ「魔女の宅急便」からで、「トトロ」は暗くて重い「火垂るの墓」とペアだったせいか興行成績は振るわず、「宮崎駿ももう終わりか」なんて陰でアニメ関係者に言われていたそうで(←プロデューサー談)、

 このデパートのイベントも、今じゃ考えられないでしょう? まるっきりアイドルかロックバンドの売れてなかった時代のどさ回りみたい。隔世の思いがしますねえ。


 はい、けっきょく高畑勲監督じゃなく宮崎駿監督の話になっちゃいました。

 これで終わります。

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