宇宙戦艦ヤマト2199(最終回を見終わって)
後期エンディングのUVERworldは、かっこいいけれど、これは違うだろうと思った。
世界が滅亡しようとしている瀬戸際で、「俺たちロックだぜえー、イエ〜〜!」みたいなことやってたら、「何考えとんじゃ、どアホう!」と大ひんしゅくだろう。
音楽を担当された宮川彬良さんは、オリジナル版の宮川泰さんのご子息であらせられるわけですが、今回父親の後を引き継いで音楽を担当することを引き受けたのは、「あくまでもオリジナルを再現する」という今回のリメイクの姿勢に共感したからだそうですが、その宮川彬良さんもこの後期楽曲には「そりゃあ、話が違うだろう」という気分だったんじゃないかと推測しますが、どうでしょう?
……といった感じで、
実は最終回放送後すぐに、年寄りの悪い癖で、「オリジナルに比べてどうのこうの」と、リメイク版の悪口を書き連ねた原稿を書き上げていたんですが、
読み返して、
「この批評は果たして正しいのだろうか?」
と疑問に思いまして、捜したら、あったんですよ、オリジナルを録画したVHSテープが。90年の録画でした。90年が既に23年前という事実に恐怖を覚えてしまいます。いやあ、CMに出ている所ジョージと伊東四朗が若い若い。西田敏行は今といっしょでした。すごいなあ。
で、見たんですよ、全26話。3倍録画のガタガタの画面で。(←3倍とか標準とかいうのが通じないなんてことは……あるのかな?)
……いやあ、すごかった…………
ごめんなさい。やっぱりわたしが間違ってました。
こんっっっなに、ひどいとは思わなかった。
やっぱり思い出は美しく、現実は残酷ですね。
これじゃあとてもじゃないがリメイク版の悪口は言えないなあ。長々書いた原稿、全部ボツです。
で、ころっと態度を変えてオリジナル版の悪口を言っちゃうんですが、
科学考証がどうこういうのは今更なので置いとくとして、キャラクターの行動に穴がありすぎ。上級士官が揃って操縦室を留守にするようなことは、ちょっと考えれば、あり得ないだろう。
キャラクターの言動がもろに70年代青春ドラマ。
タイムリミットのある大事な作戦決行前に「おまえだけは気にくわねえ」とか言って士官同士(古代と島)が殴り合いの喧嘩をしたり。……おいおい、何やってんだよ。
呆れちゃいます。
「ヤマト」といえば「テーマは「愛」」ですが、
この「愛」という言葉は、ラスト近くになって急にバタバタ出てきたんですね。
「僕たちがやるべきことは殺し合うことじゃない、愛し合うことだったんだ!」
と言ってもねえ、向こうから無差別殺戮を仕掛けてきたんだから、今更ねえ…………
ご都合主義も最後の方になってどんどんひどくなってるなあ。
リメイク版のデスラー総統を「ただのナルシストの中二病のアホか」と悪口を書いたんですが……、オリジナルもかなり馬鹿っぽかったです。
と、悪口を言うのは、何も今になってではないんですよね。
昔からさんざん言ってたんですよ、当時のファンたちも。
悪口を言いながらも、愛していたんですよね。
今回も「ひっでえなあー」と呆れ返りながらも、けっこう楽しんで見てました。まあ、80パーセントくらい懐かしさですが。
ボロボロになって戦うヤマトにはやっぱり燃えました。(すぐに修理できちゃうんですけどね。おい、おい。(←ツッコミ))
リメイク版のヤマトはあんまりボロボロにやられることはなかったですね。そりゃそうだ、あんなにボロボロになって宇宙にいたら、どうなってしまうか分からないものね。分かってるんだけど、やっぱりヤマトはボロボロになりながら戦う姿が燃えるんだなあ。
オリジナルヤマトを一言で言うと、
青春
じゃないでしょうか。日本のアニメの歴史においてもそういう時期だったと思うし、ファンにとってもそうだっただろうし、スタッフも
「よおーし、すごい物を作ってやるぞお!!」
という気持ちで作っていたんじゃないでしょうか? 熱かったんですよ、みんな。
今の時代、青春を感じるアニメ作品って、きっとヤマトとは全然別のタイプの作品でしょうね。
今回見直して、リメイク版が実はかなりオリジナル版に忠実に作られていたことが分かりました。
全然違う部分も多いんですけれど、そもそもオリジナルが、途中から設定考えただろう?という適当な部分が多くてですね、理屈に合わないところが多いんですよ。ガミラスの英雄ドメル将軍って、いったいどこで誰と戦っていたんだ? そんな相手がいるなら、いくらでも移住できる惑星がありそうなものだろう?とか。
元々の、まともな設定を、理屈を詰めて考えれば、やっぱりこうあるべきだろうな、という作りをしています。
それに、20年以上見てなかったので忘れている部分が多かったんですが、なるほど、このエピソードがあのエピソードになっているんだ、と発見がありました。形が変わって、順番が入れ替わったりしているのでなおさら気づかなかったんですね。
更に更に、リメイク版も全26話なんですが、オリジナル版は元々39話で制作が開始されて、途中で視聴率がふるわなかったりで(ライバルは「ハイジ」)26話に短縮され、それで終盤はかなりバタバタした展開で、カットされたエピソードも当然ながらあります。そのカットされたエピソードを、リメイク版では復活させ、なおかつ最初から26話で構成されているので、内容は充実して、全体的に無駄がなく、スタイリッシュに仕上がっています。……ちょっとスタイリッシュすぎる物足りなさもありましたが。
やっぱりいいリメイクだったんだなあと、色々言いたいこともないわけじゃないんですが、改めて思いました。
来年は完全新作のオリジナル劇場版が公開されるそうで、どんな内容になるのか、楽しみです。
※ ※ ※ ※ ※
ここから関係ないおまけ。ついでに、
「世界侵略:ロサンゼルス決戦」をテレビで見ました。
以前ほとんどタイトル詐欺でエッセイを書いたことがあるんですが、その時はタイトルを別の便乗B級ビデオ映画と混同していたみたいで、北米原題「Battle: Los Angels」、世界配給では「World Invasion: Battle LA」が正しいようです。重ね重ね失礼いたしました。
これぞ宇宙人の地球侵略映画です。「宇宙戦艦ヤマト」とはだいぶ様相が違います。
なかなか面白かったです。海兵隊魂ですか、燃えました。
なかなか上手な映画だったと思います。最近すっかり定着した感じのドキュメンタリー的な演出で、ずうっと一小隊の視線で宇宙人との戦場を描いています。
「宇宙戦争」+「第9地区」+「ブラックホーク・ダウン」
ですね。特に「ブラックホーク・ダウン」の影響はすごく強く感じました。ラストがそっくりというのはリスペクトの表明ということでしょうか?
あ、今ウィキペディアを見たらやっぱり
『ブラックホーク・ダウン』、『プライベート・ライアン』、『ユナイテッド93』からインスピレーションを得ている(監督)
だそうです。インスピレーションというより、まんま、という気もしますが、上手にやっていたからよしとしましょう。(例によってプロの批評家には酷評されているようですが)