スター・トレック イントゥ・ダークネス
「LOST」シリーズ、「ミッション・インポッシブルⅢ」のJ・J・エイブラムス監督による新シリーズの第2弾。
わたしは「スター・トレック」シリーズのファンであることを過去何度か書いていますが、それにも関わらずこの前作は観ませんでした。
理由は、面白そうだったから。
なんだそれ?ですが。
そもそも「スター・トレック」は1966年に放送されたテレビシリーズ「宇宙大作戦」が最初。1979年に映画シリーズ第1作が製作され、1988年に新シリーズ「新スター・トレック」が製作され、映画シリーズは第1シリーズ(カーク船長)6作、第2シリーズ(ピカード艦長)4作、テレビシリーズは2005年までに計5シリーズが製作されている、たいへん長大且つ広大なシリーズとなっております
……と、ここらへんで興味のない人はうんざりでしょうが、もうちょっと付き合ってください。
新映画シリーズは第1作「宇宙大作戦」のカーク船長の若き日を描いたシリーズの前日談になります。ファンにはお馴染みの副長ミスター・スポック、ドクター・マッコイ、通信士ウフーラ、アジア系航海士スールーといった面々が登場してニヤリとさせられます
……と言いつつ観てないんですね、面白そうだったから。
だからなんなんだそれは?なんですが、
これにはそもそも「スター・トレック」シリーズがどういう扱いをされてきたかを説明しなくてはなりません。
映画が、あえてオリジナル映画シリーズという言い方をしますが、10本も制作されているんですが、この中で本当に映画らしい映画作品は「地球が静止する日」や「ウエスト・サイド物語」「サウンド・オブ・ミュージック」の巨匠ロバート・ワイズ監督による79年の第1作だけで、後はテレビシリーズの特別版といった趣。
オリジナル映画シリーズにおける課題は「いかにシリーズのファン以外の観客を呼び込めるか?」で、日本における宣伝もそうしたアピールがされていました。
要するに、日本を舞台に分かりやすく例えると、テレビの深夜アニメがヒットして、じゃあ映画化しようと、ファンは大喜びだけれど、ファン以外の映画館のお客からは「なにこれ?わけ分かんない」と、お祭り騒ぎで盛り上がっているオタクファンは冷たい視線を浴びせられる、と、まあ、そんな感じだったわけです。
しかし! ファンはそんな世間の冷たい視線にめげることなく、「スター・トレックの世界は素晴らしい! ああ、どうしてこの素晴らしさが分からないかなあ?」と、ひたすら愛情を込めてシリーズを愛でるのでありました。
ここいら辺のファン事情は「ギャラクシー・クエスト」(←前に書きました)というたいへん素晴らしいパロディー映画があるので是非ご覧ください。面白いです。
要するにオリジナル映画シリーズはテレビシリーズの延長の、あか抜けないB級映画シリーズで、しかしそのあか抜けなさがファンには心地よかったわけです。
しかし、新ヒットメーカー、エイブラムス監督による2009年公開の新生「スター・トレック」は見るからにA級の娯楽大作で、旧シリーズのファンとしては自分たちが愛でてきたB級シリーズが全く違う物に、上手に、作り替えられてしまうのが、なんとも複雑でもどかしい気分にさせられてしまったのでありました。
でも、今回は観て来ちゃいました。予告を観て、すっごく面白そうだったから。
ふっ、誘惑に負けちまったぜ。
ここまでの長ったらしいうんちくで、
「いったい「スター・トレック」って何がそんなにいいわけ?」
とうんざりされた方、ご安心ください。
この新生「スター・トレック」を観れば「スター・トレック」の何が面白いのか?丸分かりです。
いやあ、やっぱり上手だわ、エイブラムス監督。
テレビシリーズを多く手がけているだけあって、「この作品の面白さ」を観客に伝えるのがすごく上手いです。
冒頭の短いミッション一つで、そもそもどういう作品世界なのか?が一発で説明されて、且つ、今回の物語のテーマが端的に示されます。
以降はもう次から次に事件が展開して、クライマックスまで怒濤のスピード感。お見事!
驚いたのが想像以上にオリジナルが再現されていること。クルー同士の口げんか(みんなまだ若いから威勢がいい)に「そうそう、こんな感じ」と思いっきりニヤニヤさせられちゃいました。
メインとなる登場人物が多いんですが、これがみんなキャラが確立されていて、それぞれにちゃんと役割が与えられている。例えばライバルである「スター・ウォーズ」のように少数のヒーローが目立って活躍するよりも、それぞれが自分の役割を演じてチームで闘っていく。役割を演じると言ってもただ単に命令を忠実に遂行するだけでなく、ちゃんとそこにいる意味があって、時には自分の意見を貫いてチームから外されることもある。そうした一人一人の人間の活躍が、ドラマを、ストーリーを、進めていく。脚本が本当に上手。
アクションもバッチリです。旧シリーズの戦闘はチェスの試合のようにジェントルマンな雰囲気で整然と行われる印象でしたが、新生シリーズはバリバリに現場感覚です。
このアクションも単なるドンパチではなく、「この困難な状況をいかに切り抜けるか?」といったミッション型の作戦行動が多く、ここら辺の組立もしっかり旧シリーズを再現しています。
新生シリーズと言っていますが、第1シリーズの、宇宙探検に出発する前のエピソードで、ちゃんとその後のシリーズにつながっているのです。
一番最初の話なので、そもそもシリーズを知っておく必要もないわけです。(ほんの一部、過去シリーズ(というより前作?)を知らないと意味の分からないシーンがありましたが、ま、ここはシリーズファンへのサービスですね)
これさえ観れば「スター・トレック」シリーズはもうバッチリです!
さあ、これまで「スター・トレック」を見たことのない人も、安心して劇場へレッツ・ゴー!です。
と、こうして「スター・トレック」劇場シリーズはついに「ファン以外のお客さん」への開放に成功したのでありました。めでたしめでたし。
※ ※ ※ ※ ※
というわけで、面白かったんですが、以上褒めちぎったのはけっこう頭の中の理屈でひねり出した感想なんですよね。
いや、面白かったんですよ。面白かったんですが、自分でもよく分からないもやもや感が残ったのも確か。
期待以上にオリジナルシリーズが再現されていたんですが、それ故か、期待以上の驚きがなかったような気がします。
やっぱり新生シリーズはオリジナルシリーズを見ていない人の方が素直に楽しめるのかも。旧映画シリーズとは逆転現象が起きちゃっていますね。
旧シリーズのファンとしてはどうしても「昔の作品を今の時代に合わせてすごく上手にリメイクした」という印象です。
すっごく上手で、すっごく面白いんだけど、上手すぎて、面白すぎて、なんか褒めたく無いなあ〜、と、ほとんど単なるイチャモンみたいな感想を持ってしまいました。監督が優等生的に上手すぎるんですね。ま、オールドファンの単なるひがみです。新しいファンの方は気にせず、「スター・トレック」の世界を存分に楽しんでください。
期待以上の驚きがなかった理由の一つは宣伝です。
「人類最大の弱点は愛だ」
ってやつ。これ、決して嘘じゃないんですが、「えっ? これのこと?」って感じで、期待はずれでした。みんなリドリー・スコット監督の「プロメテウス」の宣伝に怒っていましたが、あれは予告篇の段階でB級臭さがプンプンしていたので「うひゃひゃひゃひゃ」と笑って喜んでいられましたが、こちらは超A級作品なのでこういうはったりかましたような宣伝はいかがな物かと。悪役・SHERLOCK・カンバーバッチが大々的にフューチャーされているので、そういう風に宣伝したい気持ちは分かりますが。
もう一つモヤモヤ感は、やっぱり3Dです。
これはどうなのかな? ちゃんと3D撮影しているのかな? どうも後からコンピューターで3D化しているような映像に見えてしまったんだけど? 「貞子3D」にも同じイチャモンつけちゃってましたね。言いがかりだったらごめんなさい。でもそういう風に見えちゃうんだもんなあ、顔のアップなんて目鼻立ちに3D感を感じない、お団子っていうかマトリョーシカ人形みたいに。(※ネットで監督のインタビュー記事を読んだらやっぱりコンピューター変換でした。この記事を先に読んでいたら2Dで観たかなあ……)
これまで観てきた3D映画の中ではかなり「立体映像」を強めに打ち出した映像になっていると思います。
しかし今回観てやっぱり思ってしまったのは、映写システム自体が3Dを楽しむにはまだまだ未成熟であること。激しいアクションの多い映画なのでなおさら思ったのですが、3Dを自然に楽しむためにはコマ数を今の倍ぐらいにする必要があるんじゃないか? 画面をもっと明るくクリアにする必要があるんじゃないか? と思いました。
昔の平面映画も大きなスクリーンではカメラの横移動で「カタカタカタ」とコマ落ち状態に見えるのは気になりましたが、3Dでは早い激しい映像には目が着いていきません(年寄りなので)。これでコマ数を増やして画面を明るくしようとすると撮影はかなりたいへんで、現状は無理なんでしょうけれど。テレビは次世代の4Kテレビなんて物が出て来ちゃって、こっちはフルハイビジョンもまだまだだっていうのにハードばかりが先行して冗談じゃないぜ、と、大量のVHSテープを処分できずに困っているのに、まったく、困ったものです。
3Dへの技術的な不満で、どうも内容に素直に入り込めないと言うのもあったかなあと思います。
さて、次は「マン・オブ・スティール」が控えていますが、これもなあ………… 2Dで観るか3Dで観るか、今かなり悩んでいます。2Dと3Dとあったらやっぱり3Dで観たいけれど、観れば観たできっとまたこうして不満が出ちゃうんだろうなあ………と。
あ、「キャプテン・ハーロック」もなかなか面白そうでしたけれど、ちょっと予算的に厳しいです。チケットプレゼント当たらないかなあ。