ラ・フォル・ジュルネ2013(モーツァルト)
ラ・フォル・ジュルネとはなんぞや?
フランス語で「熱狂の日」
フランス発祥の音楽祭で、いわばクラシック版の「フェス」です。
1公演45分程度で、1500円から2500円くらいの料金で気軽にクラシック音楽を楽しんでもらおうというイベントです。
今年は東京他、全国5都市で開催されます。
こちらは4月26日から28日まで3日間、開催されました。
こっちじゃやってないから関係ないや。
とおっしゃる全国の皆さんも、(例によってですが)
NHKFMにて
5月4日(土曜・祝日) 午後0時15分〜10時10分まで、途中夕方ニュースをはさみますが、なんと10時間!に渡って
「今日は一日”ラ・フォル・ジュルネ”三昧」
という特別番組が放送され、東京会場の公演の模様が放送される予定です。
どうぞお楽しみに。
ちなみに大型連休の「三昧」シリーズ、
5月3日(金・祝)は「今日は一日”パンク/ニューウェーブ”三昧」
5月5日(日)は「今日は一日”サッカー音楽”三昧」
5月6日(月・祝)は「今日は一日”プロ野球音楽”三昧」
というラインナップになっております。・・・・「サッカー」と「野球」で9時間10時間音楽番組って、誰が聴くんだろう? わたしはパスだなあ…………
以上、日本放送協会の回し者でした。別に身内や知り合いが勤めているわけでもないんですが。
さて、ラ・フォル・ジュルネに戻って。
会場によってテーマが違っていまして、
東京会場は「パリ。至福の時」
__「19世紀後半から現代まで、パリを彩ったフランス、スペインの作曲家たちの色彩あふれ、情熱みなぎる150年間の音楽のパノラマを繰り広げます。」
とのことです。
うちは
「モーツァルト」
でした。
なーんだ、そっちの方がよかったなあ、とおっしゃる東京方面の方も多いと思いますが、
いやあ、実はわたし、今年はハズレだったなあ…… と、思っていたのです。
「パリ」も「モーツァルト」も苦手で。
実はけっこう好き嫌いがあるんですよ。明るく軽やかな物って駄目なんです。
しかし、モーツァルトには今まで何度もチャレンジしてきたのですよ。
その度に挫折しましたけど。
モーツァルト = 天才
と言われますよね。これがわたしにはどうしても分からない。
テレビで小さい女の子がインタビューに
「モーツァルトが好き」
なんて答えてるのを見ると、
「お嬢ちゃん。本当にモーツァルトの良さが分かるのかなあ〜?」
なんて意地悪に思ってしまいます。
そりゃあ子どもでも喜ぶきらびやかなメロディーは分かりますよ。でも、
「天才」
と言ったときには、それとは違った要素を言うんではないか?と考え込んでしまうのです。
また話がずれますが、
ローリングストーンズのキース・リチャーズが雑誌のインタビューで
「ストーンズの昔の曲ってもうすっかりクラシックになっちゃってますよねえ? 現役のミュージシャンとして、そこんところどう思いますう?」
みたいに意地悪に訊かれて、
「いいんじゃねえか、クラシックでも。俺だってオフにはモーツァルトを聴いたりするぜ?」
と返し、
「ええ!? あなたがモーツァルトですか?」
と驚かれて(笑われて)いた……というのをラジオで紹介されて(ややこしい)ラジオでも
「ストーンズもついにモーツァルトと並んで聴かれるようになりましたよ!」
と笑われていましたが(←以上、適当な記憶ですが)
わたしはこれを聞きながら、すごく納得していました。
ビートルズはベートーベンだと思うのです。
ジャジャジャジャーーーン!って、誰が聴いても一発で分かりますから。
ストーンズはモーツァルトだよなあ、と、わたしはかねてから思っていたのです。
ストーンズにだって「サテスファクション」や「ブラウンシュガー」といったポップなヒット曲はありますが、わたしの全体的な最初のイメージは
なーんかさあ〜、どれ聴いても同じじゃん。
といったもので、それどころか、なにしろビートルズと並ぶ超ビッグネームですから、マスターしてやろうと続けて聴いていたらマジで気持ち悪くなって、吐きそうになってしまいました。
こんな物の何がいいんだ?と思いっきり嫌っていたものですが、
この気持ち悪さが、いったん慣れちゃうと、麻薬的に気持ちよくなっちゃうんですね。
いわゆるグルーヴってやつですよ。お子さまには分かんねえだろうなあ……フッ。
ビートルズのすごさは分かるんだけれど、のめり込むほどには夢中になれなかった。
ストーンズはずーっと聴いてます。
で、話を戻して、
「モーツァルト=天才」
と語られるときのモーツァルトの魅力も、そうしたものなんじゃないかなーー…………
と、思っているのですが、ストーンズのようには中毒になれずに来たわけです。
今回も公演前にチャレンジしました、全集物のCDを引っぱり出して。
今回も挫折しました。
で、当日。
天気も悪かったしあんまり気分も盛り上がらなかったので1日目2日目はパスして、最終3日目、お祭り気分だけ味わってこようかと、エントランスホールの無料公演だけ見に行きました。
・・運命の出会いがあったんですねえ……
地元の大学のオーケストラ部の学生さんによる四重奏団。
曲目は「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」。
これがですね、かわいかったんです、
バイオリンの女学生さんが!
近くで見ていた女の子がお母さんと「お姫様みたいね」と言ってましたが、本当にそう!
わたしは誰かに似ているなあと思って、うちのフランス人形さんかなあ、いや、もっと……、と思ったら、大好きだったKアナウンサーです。小顔で目がキラキラと大きくて、うんと美形のキューピーちゃんみたいでした。
これでわたしの1日のスケジュールは決定。午前音楽ホール、午後アーケード街特設ステージ2回、計3回「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」を聴いてきました。さすがに3回とも聴いたストーカー野郎はわたし一人だったかも知れませんが、カメラおじさんたちにさかんに写真を撮られていました。わたしも撮らせてもらいましたが、もちろん演奏中は撮ってません。
いやあ、幸せな一日だったなあ……と、こんなことで褒められても気持ち悪いでしょうが、
演奏はすごく上手でした。
上手、というのは素人に対する誉め方で、あまりいい誉め方ではないでしょうけれど、
「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」
曲名だけ言われても分からないかも知れませんが、
モーツァルトの伝記映画「アマデウス」で、
自殺を図って病院に運ばれた老人サリエリが、話を聞きに来た若い神父に、
「わしは以前は有名な宮廷音楽家だったのじゃ」
と、ピアノを弾いて聴かせる。「どうじゃ?」と言われて「いやあ……(知りません)」と困る神父に、「これはどうじゃ?」「これならどうじゃ?」と次々聴かせ、どんどん困ってしまう神父に、「……これは知っておるか?」と弾いたメロディーに神父は顔を輝かせていっしょに口ずさみ、「これはあなたの曲だったのですか!(素晴らしい!)」と尊敬を表すと、
「(これを作曲したのは)モーツァルトじゃ」
とむっつりし、神父はすっかり気まずくなってしまう……
という冒頭シーンでサリエリの弾いたのがこの曲です。
と言っても思い出せなくても、実際聴けば99.9パーセントの人が、「ああ、これか(知ってる!)」と神父同様にうなずくことでしょう。
大学四重奏団の演奏に戻って、
わたしが「上手」と自信を持って言えるのは、一流のプロによる演奏を録音で何十回と聴いているからです。プロの演奏がすっかり馴染んでいる耳で聴いていて、「あ、ここは……」みたいに変に引っかかるところはまったくありませんでした。これが何度も演奏会で色々な生演奏を聴いている通の人がどう聴くかは知らないし、まったく興味ありませんが、わたしの素人耳には技術は完璧で、とてもはつらつとして気持ちいい演奏でした。
ずうっと歩きっぱなしの立ちっぱなしで危うくぎっくり腰になりかけましたが、ただでこんなにいい演奏が聴けて、すごくお得で楽しかったです。
でも来年はいっぱいチケットを買って音楽祭の運営に貢献しよう……と、去年も思ったんだよな、安いプレ公演一つきりでごめん! 来年こそは……ねえ…………
大学四重奏団の皆さん(”◯◯大学の管弦楽団アンサンブル”というらしいです)は9月の街のイベント(”音楽と味覚のストリート”というらしいです)にも出演が決定しているそうで、地元限定情報で申し訳ないですが、わたしもまた行きたいなと思っています。た・だ・し、なにしろ現役の学生さんたちなので、今回と同じメンバーとは限りません。9月かあ……どうでしょうね?
なんだかしょうもない興味で3回も同じ演奏を見てしまって、暇な奴と白い目で見られていることでしょうけれど、
おかげで、モーツァルト攻略のヒントをもらえたように思います。
わたしなりにモーツァルト研究をして、モーツァルトの音楽は
「追いかけっこ」
と感じていました。ラジオに出演された音楽家の方は「会話」と表現し、また別の方はテレビで「(各楽器は)みんな好き勝手におしゃべりしてるよね」と言っていました。
ナハトムジークは全4楽章だいたい20分くらいの曲なんですが、間近で音を聴いて演奏を見て、音と各楽器をセットで見て聴いて、わたしなりの「追いかけっこ」そして「会話」「おしゃべり」というのが実によく分かりました。(かわいいバイオリニストさんの顔にばかり見とれていたんじゃないんですよお、言い訳っぽいですけれど)
帰ってきて気が付いたんですが、わたしナハトムジークのCDは持っていませんでした。てっきり持っていたとばかり思い込んでいたんですが、FMの録音テープだけでした。それにしては全4楽章、よく覚えていたなあと自分に感心しましたが、曲が一度聴いたら忘れられないキャッチーな物だと言うことですね。
またエセインテリぶりますけれど、
シューベルトの伝記映画「未完成交響楽」(同じタイトルで二つあるみたいなんだけど、どっちかな?)で、
シューベルトの歌曲が若い女の子たちに歌われていて、(曲がこんなにヒットしていて)
「あなたはさぞかしお金持ちなんでしょうね?」
と訊かれたシューベルト氏が、
「僕の曲は聴けば誰でもすぐ覚えられるから楽譜は売れないんですよ(だから貧乏なんです)」
と答えるシーンがありました。
そう、昔は楽譜がお金になっていたんですよね、レコードはありませんでしたから。演奏会の楽曲使用料なんてあったんでしょうかねえ?
ナハトムジークも「お金持ちの貴族さんたちのパーティーの後ろで演奏されていたみたいですね」と紹介されていました。
それもあったでしょうけれど、昔は今よりずっと
自分たちで演奏して楽しむ
という楽しみ方が多かったんじゃないか?と思います。
楽器は全く弾けないので分かりませんが、ナハトムジークももしかしたら演奏そのものはそんなに難しくはないのかな????
モーツァルトの音楽は演奏して楽しい、遊びの要素が強いのかも知れません。
訊く側も、
「モーツァルトが好き!」
と言う女の子みたいに、単純に楽しめばいいんでしょうね。
モーツァルトって楽しいな、と。
頭の固い人間にはなかなかそれが難しいんだけれど。
でもこの文章、モーツァルトのCDを3枚、連続で聴きながら書いていました。
けっこういけてるんじゃないかな? 気持ちよくなってるかも。
よし、長年の宿敵モーツァルトはクリアした。
次はフランス物だ!・・・・苦手なんだよなあ、ベルリオーズ以外は……
来年はまたドイツ物かロシア物をお願いします。(イタリア物もちょっと……)