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007スカイフォール

(※ちょっと古い記事になりますが、ビデオソフト発売ということで映画館鑑賞時のテキストを)


 昨年12月にひどい風邪をひいたりして、ようやく観てきました。公開から1ヶ月以上たってガラガラだろうと思っていたら、シネコンで男性1000円デー&冬休み子供向け映画のあおりで小さなスクリーンに追いやられていたのが大きなスクリーンに凱旋ということでか、けっこう込んでました。評判がいいせいでしょうね。


 今回はどういう風になっているのか、強い興味で観ました。

 果たして前2作から、作風を継承してハードボイルド路線を突き進むのか、それとも過去シリーズの娯楽路線へ軌道修正をはかるのか?


 結果を言うと、ちょうどその中間で、基本ハードボイルドの中に上手に娯楽要素を盛り込んだ、バランスのよいスパイアクション娯楽映画に仕上がっていました。


 前2作ではボンドは新入りで、本部スタッフと距離がありましたが、本作で本部スタッフも固まって、いよいよ新生007シリーズのスタイルが整ったようです。ちょうど元祖ショーン・コネリー007が3作目「ゴールドフィンガー」でシリーズの方向性が決まったのと似ています。前2作にまったく見られなかった笑えるユーモアも復活しています。



 今回の「007 スカイフォール」がどうなっているのか?

 本当に強い興味がありました。


 実はわたし、ピアース・ブロスナンのボンドが好きで、当初ダニエル・クレイグのボンドには魅力を感じず、監督がマーティン・キャンベルということもあって(←「007ゴールデンアイ」「ゾロシリーズ」で「テレビ演出レベルだよな〜」と)「カジノ・ロワイヤル」は観に行きませんでした。

 テレビで見て大後悔。


「何故だ? マーティン・キャンベルだぞ? なんでこんなにいいんだ????」


 と大混乱してしまったのですが、予想に反して傑作になってしまった原因は



 脚本=ポール・ハギス



 この人の仕事のせいのようですね。「ミリオンダラー・ベイビー」でクリント・イーストウッドに監督賞と作品賞を取らせた人です。

 この渋いハードボイルドタッチが「カジノ・ロワイヤル」全編に散りばめられています。


 「カジノ・ロワイヤル」の次のダニエル・クレイグ第2弾「慰めの報酬」も、どうなんだろうなあ……… と思っていたんですが、よりハードボイルドを極めた内容になっていました。

 前作から続く話で、悲劇のボンドガール=ヴェスパー・リンドのキャラクターもよりハードで悲劇的に語られている。わたしは「カジノ・ロワイヤル」ですっかりヴェスパー・リンド=エヴァ・グリーンのファンになってしまったので、かわいそうでしたねえ。

 しかし「慰めの報酬」はあまり評判よくなかったようですね。世界を陰から支配する悪の組織の実態が、あまりにも現実的すぎて、気が滅入ってしまうのと、監督の持ち味か編集の仕事か分かりませんがやたら細かい速いカット割りで、アクションもそうですがストーリー上の情報も頭の中の整理が追いつかない状態で、この情報がまた入り組んでいて、いまだに理解し切れていないところがあります。ボンドガールのキャラクターの描き方もハードボイルドで、前作ヴェスパーはエレガントさがあったからいいけれど、本作では復讐に燃える、そのためには自分のセックスも利用するという汚れキャラで、脚本ポール・ハギス、今回はやりすぎだなと言う感じでした。

 余談ながら、初期の「ゴルゴ13」とすごく感じが似ていて、ラストの悪役の死に方なんてそっくりなのがありましたよ。ひょっとしてファンなんじゃないか?と思いました。


 さて。

 そんな2作を受けての今回第3作だったわけです。

 どっちの方向に行くのかな?と興味を持ちますよね。



 「スカイフォール」はシリーズ最高のヒットのみならず、本国英国では映画史上最大のヒットになっているそうで、大大成功になっています。後半舞台がロンドンになっていて、イギリス人は大喜びでしょう。シリーズでロンドンが本格的な舞台になるのは初めてかな?(「ワールド・イズ・ノット・イナフ」でもMI6本部爆破とテムズ川のボートチェイスがありますが) ちなみに日本の長崎の「軍艦島」もロケされて、残念ながら島上での撮影はされなかったようですが、モデルにしたセットが組まれ、外観はしっかり写っています。(エンドロールでもしっかり「軍艦島 長崎」と漢字で出てます)


 今回スタッフ的な目玉は監督に「アメリカン・ビューティー」のアカデミー賞監督サム・メンデスを起用したこと。

 さすが上手だなあという感じでした。

 冒頭ド派手なアクションで幕を開け、その後じっくり物語を描いていくというのが新シリーズの定番になっていますが、今回のオープニングアクションは本当にすごい! どういう撮影をしているのか分からないけれどスタントはものすごく危険でテクニックがいるんじゃないかと思います。


 上手いなと思ったのは、カメラの距離。見やすく、かつ被写体への肉迫感が感じられる絶妙な距離で、煙の中に突っ込んで行くし、臨場感満点でした。

 もう一つ、エキストラの演技。過去シリーズではしばし観光気分で見学しているお客さんみたいだったエキストラが、一人一人演技指導が徹底して、エキストラがその場の空気としてロケーションのリアリティーを上げるのに貢献していました。さすがアカデミー賞監督、演技に関しては抜かりがありません。


 一方で、オープニングアクションが凄すぎて、後半アクションが普通に見えてしまうという困った現象も起きています。全体のアクションのペース配分を間違えちゃったかなという気がしないでもありません。

 前半のアクションで畳みかける怒濤の展開から、後半もかなり大がかりな仕掛けがあるのですが、ボンド個人の闘いをじっくり見せたいという狙いか、明らかにテンポが遅くなっていて、緊迫感がそがれてしまった感じがあります。同じような肉体ハードアクションでライバル「ジェイソン・ボーンシリーズ」がありますが、こちらが緊密に高い緊張感を誇っていたのと比べると、なおさらのんびりした印象です。


 この監督の演出の狙いは、クライマックスシーンの終わらせ方にあるんでしょうね。


 007ジェームズ・ボンドというと、男どもの憧れる、

「俺も悪者相手に思いっきり暴れまくって、セクシーな美女たちといいことしたいよなあ〜〜」

 といった夢のヒーローだったわけですが、ダニエル・クレイグのボンドには「俺も」とは思わないですね。ひどい目にばっかり遭って、神経衰弱ぎりぎりで、アル中寸前ですから。


 ダニエル・クレイグボンドは痛々しい。

 常に危なっかしくて、余裕が全くない。

 前2作で00エージェントに成り立てだったボンドが、本作ではすでにベテランに近い立場で、すでに心身共にぼろぼろで、疲れ切っている感じです。女上司M=ジュディ・デンチの旦那も前作からの間に亡くなっているようで、時の経過がかなりあるようです。

 MI6メンバーズが本作で揃うと前述しましたが、ボンド自身が、今回の事件を経て、007として完成されます。

 前2作で、愛を切り捨てることで007になったジェームズ・ボンドが、ラストではシリーズお馴染みの余裕を持ったジェントルマンのたたずまいを身につけている。

 ボンドをそう成長させたのがなんだったのか。

 それを描きたくて、後半のテンポを落としたじっくりした描き方になったのだろうと思います。




 ダニエル・クレイグボンドは凄いし、面白いんだけど、007映画が始まる時のわくわく感はないよなあ、と思っていたんですが、今回それが戻ってきました。

 前作の悪役は難しくなりすぎちゃって、アンチの感情移入も難しかったですが、今回の敵はある意味すごく分かりやすいです。ボスの重厚なカリスマ性もシリーズ随一でしょう。声が凄い。日本の俳優で言うと江守徹を顔も体も大きくしたような感じでしょうか? 迫力5割り増し。

 ひたすらハードボイルドなスパイ映画を求めるコアファンにはどうなのか分かりませんが、これでしばらく新007シリーズも安泰かなと安心しました。ダニエル・クレイグは後2作出演することが決定していて、次の2作品はシリーズ初の完全な2部作だとか。

 いやあ、またも楽しみですが、一つ困るのが、これで完全に過去のシリーズは古くさい子供じみたファンタジーになってしまって、まともに見てられなくなっちゃったこと。DVDからBlu−Rayへ、何度もリニューアル再販されていますが、もはや懐かしさと、トホホ感でしか見られないなあ。

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