チョ〜素人向けフランク・ザッパ入門 SIDE:4
「レザー」に倣って長ーくなってしまいましたが、これでラストです。
最後は楽しく「チョ〜素人向け」(←むかつく)にタイプ別、初めて聴くのにお勧めのアルバムをお節介に紹介して終わりましょう。
1,「ザッパ=変」を楽しみたい方
→「ウィー・アー・オンリー・イン・イット・フォー・ザ・マネー」(68)
……文中でも紹介しましたビートルズ「サージェント・ペパーズ」のパロディー。せっかくのポップないい曲をへんてこな編集でめちゃくちゃにしている痛快作。これでも「まだまだ大したことない」と満足できないひねくれ者は「アンクル・ミート」(69)に挑戦してください。2枚組の「映画のサウンドトラック」の体裁をとったプログレ・アルバム。フュージョン・ロックの大曲「キング・コング」を含む。
2,かっこいいギターが聴きたい方
→「ホット・ラッツ」(69)
……テクニカル・ギターバンドのインスト・アルバム。1曲目「ピーチズ・エン・レガリア」は名曲。こういうアルバムだけ作っていれば普通に尊敬されるミュージシャンになっていたんですが。もっとギターが聴きたい!というギター狂の方にはギターソロばっかり集めた「ギター」シリーズが3枚組、2枚組で出ていますから、たっぷりどうぞ。
3,音楽らしい音楽を楽しみたい方
→「バーント・ウィーニー・サンドウィッチ」(70)
……ロック交響詩とでもいうようなクラシカルなタイプの大曲「ア・リトル・ハウス・アイ・ユースト・トゥー・リブ・イン」がハイライト。ザッパは「作曲家」と名乗るのを好んでいたそうで、このタイプの曲が一番好みだったんじゃないかなという気がします。わたしも特にお気に入りの一枚でヘビーローテーションです。ギターがワウワウ言って、太鼓がドコドコ鳴って、バイオリンがキイキイ言って、面白いです。
4,器楽アンサンブルの妙を楽しみたい方
→「ワカ/ジャワカ」(72)
……ちょっとインテリ臭い感じがしてきましたが、「ホット・ラッツ・パート2」という位置づけのアルバムで、より本格的な作曲作品。うねりまくるスピード感でノリノリの、スケール感豊かな楽団音楽。「ジャズファンにも楽しめる」だそうですけど、ジャズという感じではないなあ。実はこの頃ザッパは大けがで入院していて、バンド活動が出来なかったので作曲に専念していたんですね。続編「グランド・ワズー」(72)もホーン隊を追加したブラスバンドロックで、「歴史的名作!」なんだそうです。傑作、名盤、大傑作がごろごろあるなあ。
5,普通のロックを楽しみたい方
→「オーヴァーナイト・センセーション」(73)
→「アポストロフィー」(74)
……バンド活動に復帰したザッパが、「ちゃんと稼がなくちゃなあ」と思ったかどうかは知りませんが、ポップロック路線に参戦した、バンド・アルバムと、ソロ・アルバム。ゴア夫人に睨まれるようなエッチな詞がいっぱいで、お馬鹿な下ネタ満載ですが、社会的に鋭いところも突いている、ロックファンには一番受けそうなコンパクトなポップロックアルバム。
6,ノリノリファンクなロックライブを楽しみたい方
→「ロキシー・アンド・エルスウェア」(74)
……とにかくパワフルで、ノリがよくて、スピード感があって、超絶ハイテクニックが楽しめて、お馬鹿で笑えて、大盛り上がりで、かっこいい! ザッパのバンド「マザーズ(オブ・インベーション)」結成10周年記念ライブ。わたしはこのアルバムで本格的なザッパファンになりました。個人的に大お勧め!! ザッパファンのアイドル、ルース・アンダーウッド(パーカッション)が大活躍。これと……
→「ザッパ・イン・ニューヨーク」(78)
……の2枚が甲乙付けがたくザッパのライブ作品のベスト。例の「レザー」収録曲が入ってます。ジェフ・ベックと「ギター・ショップ」で組んだ「腕が千本くらいあるとしか思えない」(某日本人ギタリスト談)ドラマー、テリー・ボッジオが大活躍!
7,あんまり興味ないんでえ、おしゃれなのとかないの?という方
→「ワン・サイズ・フィッツ・オール」(75)
……星座をあしらったジャケットがおしゃれな、ザッパ作品中ピカ一の完成度を誇るアルバム……なんですが、あまりに完璧すぎてちょっと物足りない。気持ちよく聴きながら、いつの間にか終わってる、時空を越えたトリップ感が味わえる。タイトル通り誰でも楽しめる、一家に一枚、ザッパ唯一のオシャレ系フュージョン・ロック・アルバム。これくらいは聴いてみて?
8,いきなりエベレストに挑みたいチャレンジャーの方
→「シーク・ヤブーティー」(79)
→「ジョーのガレージ アクト1,2&3」(79)
→「ユー・アー・ホワット・ユー・イズ」(81)
→「ゼム・オア・アス」(84)
……ザッパというと「とにかく濃い!」というのが特徴で、それは後年に行くに従い顕著になるのですが、ただでさえ濃い楽曲、濃い演奏が、編集を施されてさらに濃くなっています。その頂点にある4作品です。「シーク・ヤブーティー」はディスコサウンド、「ジョーのガレージ」はブラックミュージックで、それぞれノリがよくて聴き易いんですが……しつっこいんですよ。山道をぐるぐるドライブするような、乗り物酔いがしてきます。ご注意。「ユー・アー・ホワット・ユー・イズ」はとにかくボーカルが濃い。ボーカルの音圧がやたら高くて、ボーカルで全部曲が構成されているようなみっちり感。濃さはこれがナンバー1です。「ゼム・オア・アス」はザッパの編集技が確立されて、ライブ録音とスタジオ録音が完全に一体となった、演奏もファンク感が消えてハードロック度が増した硬質な音で、ハイテクの極みです。スティーヴ・ヴァイのギターが全面参加で、すごすぎて訳分かりません。後ろ2枚が平気で聴けるようになったらあなたは立派なザッパ中毒者です。
9,買おうと思ったアルバムがなかった方
……今やレコードを買うといったらネット通販の時代でほぼあり得ない状況でしょうが、次点として以下の名作アルバムを挙げておきます。
→「フリーク・アウト!」(66)
→「アブソリュートリー・フリー」(67)
→「チャンガズ・リベンジ」(70)
→「ボンゴ・フューリー」(75)
→「シップ・アライビング・トゥー・レイト・トゥ・セイブ・ア・ドロウイング・ウィッチ」(81)
→「ユウ・キャント・ドゥー・ザット・オン・ステージ・エニモア vol1」(88)
……「シップ・アライビング〜」は娘ムーン・ザッパのおしゃべりをフィーチャーした数少ないヒット曲「ヴァリー・ガール」を含む。後半タイトル曲はザッパ作品中でもベストの演奏の難しいハイテクインスト大曲。「ユウ・キャント〜」は全ライブ総括シリーズで、各2枚組、全6集あります。「第1集」はキャリア総括でいろいろ聴けて、初期のお馬鹿なライブから80年代の超ハイテクバンドのライブまでたっぷり聴けるお得版です。
10,よろしかったら…………
→「レザー」(77/96)
……さんざん長々書きましたので、もしよかったら、これをじっくり聴いていただければザッパの音楽の豊かさが分かっていただけると思うのですが。80年代ほど馬鹿テクに走ってなくて、素直に音楽を楽しめると思います。他を聴いて、2枚目、3枚目にでも、よろしかったら、どうぞ。
ここまで読んでくれた人はいるかな?
グッバアイ!
あとがき:
集中的にザッパを聴きすぎて気持ち悪くなっちゃった。何ごともほどほどに、ですね。