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チョ〜素人向けフランク・ザッパ入門 SIDE:2

 チョ〜素人向け

 と言いながら全然アーティストのイメージが浮かんできませんね。

 ここでもう一つ具体例を挙げましょう。今度はCD3枚組です。


 あ、そうそう、その前に。

 そもそもなんで今ザッパを書こうと思ったかというと、今年の7月から全オリジナルアルバムのリイシュー発売が行われていまして、この11月にめでたく完了。けっきょく57枚?になったのかな?

 と思いきや、

 最後12月に隠し球が残っていました。



「レザー」



 これが3枚組で、取りあえずこれ聴けば一応ザッパの音楽は「知っている」と威張ってもいいかなというアルバムです。

 3枚組です。スティービー・ワンダーの「キー・オブ・ライフ」よりすごいぞと。

 これはリイシュー以前に幻のアルバムとしてずっとお蔵入りしていた物で、死後に発売されて、世界中の決して多くはないファンを「えっ!? あれ、出るの?」と驚かせたブツなんですが。

 お蔵入りの経緯は、要するに所属するレコード会社が、

「こんな物、4枚組(アナログLP)で出して売れるわけないだろう?」

 とこの形での発売を拒否して、じゃあよそで出すからいいもんねと別のレコード会社で発売が決まり掛かっていたところ、ここでも契約上の約束を持ち出して邪魔されて、怒ったザッパが、それならばと、

 なんと、ラジオで「みんなあ、テープに録音して自分でレコードにしてくれ」と全部流してしまった。

 レコード会社は当然激怒で、

「何してくれるんじゃ、このおっさんは!?(制作費かかっとるんだぞ!?)」

 と、けっきょくこの野心的な4枚組アルバムはレコード会社によって1枚ずつ4つ(内1つは2枚組)に分けて発売されてしまったという、ザッパとしては非常に不本意な形で長らく流通していた物です。この4つのアルバムも現在はザッパに再編集されてリイシューされているのでファンとしてはお得でしたが。


 そういえば似たような話がわりと最近ありまして。

 プリンスです。

 ザッパもレコード会社といろいろあったわけですが、こちらのプリンス殿下もですね、「表現の自由」を巡って所属レコード会社といろいろやり合いまして、ファンにはお馴染みですが、アーティスト名を自分で作ったマーク(表記不可能)にしたり、「かつてプリンスとして知られていた男」になってみたり、相変わらずの奇行ぶりを見せていましたが、レコード会社とも無事手が切れて、結婚を機に真人間に戻ったのか、3枚組(!)の超大作「イマンシペーション」では珍しくプロモーション活動も行って、以降音楽に専念して順調に大人のキャリアを積んでいたかと思いきや、やってくれましたよ殿下、イギリス、ヨーロッパでのことなんですが、07年、10年と、新作CDをなんと新聞や雑誌の付録で「プレゼント」しちゃって、

「何してくれるんじゃ、このおっさんは!?(制作費かかっとるんだぞ!?)」

 と、レコード会社は激怒するところなんですが、プリンスが現在どういうビジネス的な契約になっているのか分かりません。

 ほんとにアーティストという人種は(金のことしか考えてない)ビジネスマンには扱いづらい事この上ありません。

 しかしこの殿下、最近インターネットでもファンサイトにいっさい自分の写真や似顔絵まで禁止して削除させたりと、大人になってないなあ相変わらず、です。


 はい、いい加減本題に戻りましょうね。

「レザー」

 です。超大作なのは分かったけれど、具体的な中身はどうなんだ?というと、

 えーとですね、例えますと、

 キャリア20年のベテランアーティストが、全キャリアを網羅するベスト版を作って、デビューから最新作に至る音楽スタイルの変遷を辿る、

 というような性格のアルバムを、全部新曲で作っちゃった、という物です。何せ60枚アルバム作った人ですから、そのくらいのことは平気でやっちゃうんですね。

 遅ればせながらですがザッパのレコードデビューは1966年。亡くなったのは93年ですから活動期間27年でしかないんですね。問題の「レザー」は77年にオリジナルリリース予定だった物です。


 なんだかすごそうなのは分かったけれど具体的な音はさっぱり分からない、と思いますので具体的に説明しますと、

 オーケストラの序曲で始まり、現代曲、のどかなポップスから一転激しいギターソロを展開し、ハードロックやってたと思ったらへんてこりんなテープ編集で雄大なオーケストラが戻ってきたと思ったらまたぶち壊して、と思ったら爽やかなインスト曲になって、またロックやって、ホーンセクションを従えたのりのりの分厚いバンドライブを展開して、軽いテクノポップをはさんで、ピアノ中心のサロンミュージックやって、ロック室内楽みたいなハイソサエティーな曲やって……CD1終了。

 CD2もギターロックに超絶インスト曲に、ジャズにファンクにフュージョンに、音幅がどんどん広がっていって、

 CD3はコミカルなロックミュージカルで大団円。ラジオプロモーションのオマケ付き。ひゅ〜〜〜……


 お分かりいただけました?

 ますます訳分からなくなった?

 うーむ、それは困った。

 ザッパというアーティストを言い表すのに便利な言葉があります。



「天才と変態は紙一重」



 ちょっとロックに詳しい人のザッパのイメージというとこれでしょうね。

 わたしもたまに歌詞カードを見てみると、こんな(卑わいな)ことを歌っているのか!?と青くなったり赤くなったりするんですが。

 このイメージがロックファンに定着したのはそもそもはザッパ本人が初登場で


「異端たれ」(=「FREAK OUT」)


 とアルバムタイトルで宣言したからであります。新人のくせにいきなり2枚組ですよ。生意気に。(現在はCD1枚)

 それまでのバンドキャリアの集大成的なこのファーストアルバムで、早くも終盤は現代曲的な大曲になって、最初からザッパはものすごく広い音楽的キャパシティーを持っていたんですね。

 これがそのまま拡大していって「レザー」になったとも考えられます。

 ザッパは他のアーティストのようにキャリアを積んでいく内に音楽が広く豊かになっていくというのと違って、最初から頭の中にザッパミュージックともいうべき音楽が溢れかえっていて、それを体現するためのミュージシャンの人材やテクニックの向上によって表に表現できる面積が広がってきた、という感じですね。

 なにせ少年時代からリズム・アンド・ブルースのレコードに夢中になる一方、ストラビンスキーのファンで、音楽雑誌で見た「最悪」に変な音楽=現代作曲家エドガー・ヴァーレーズに熱中してレコードを探し回り15歳の誕生日プレゼントに母親に作曲家に電話を掛けてもらったという、いけ好かないガキ……いやいや早熟な音楽少年だったわけです。

 おっと、「変態」からまじめな話に逸れてしまった。



 またビートルズ人気にあやかって作品を紹介しますと、今度は68年のサードアルバム


「ウィー・アー・オンリー・イン・イット・フォー・ザ・マネー」


 です。

「俺たちゃ金のためにやってるだけなんだぜ」

 ってところでしょうか?

 これは普通に収録すればいい曲だらけの、そうですね、クイーンの「オペラ座の夜」に匹敵するような名作になっていたんじゃないかと思うんですが(←誇大広告)、

 それを編集でいじくりまわして、台無しにしている……ところが気持ちいい困った作品です。

 ジャケットからして明らかにビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」(67)のパロディー(初発売時にはそっくりすぎてレコード会社に内ジャケと差し替えられた)なんですが、ザッパは明らかに悪ふざけですね。編集のねじくれ度合いが度を超して徹底しています。

 これだけいい曲書いて、普通自分でそれを台無しにするようなことはしないと思うんですが、ザッパはそれを平気でやっちゃう困ったところがあります。

 当時の「ラブ・アンド・ピース」のヒッピームーブメントに、「どいつもこいつもガキどもが、浮かれてんじゃねえぞ」と悪態をついたアルバム、ということらしいです。

 歌詞も色々危ないことを歌っていて、音楽会社に相当手を入れられて「こんな物発売しなくていい!」と本人が激怒したものの、「もうプレスしちゃったもーん」と改悪版を発売されてしまった物です。今はザッパ本人に修正された物が出ているということかな?

 傑作ですね。お勧めの1枚。


 ザッパの作品はどれも、シリアスな現代曲アルバムを除き、こうした露骨な悪ふざけが加味されています。これが「いい音楽を聴きたい」普通の音楽ファンを遠ざけてしまっている原因だと思いますが、ザッパは頭のいい大人のくせに、ガキっぽいところがあって、自分のシリアスな部分に自分で笑っちゃう悪い癖があるんですね。世間一般のまじめさに対しても(空気を読まず)「おいおい、笑っちまうぜ」と声に出してしまうところがあって、一般の良識人から嫌われるのも当然ですね。頭の良すぎる人というのはやっぱりどこかおかしい部分があるものですね。

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