アンブレイカブル
「シックスセンス」で一躍脚光を浴びたマイケル・ナイト・シャマラン監督の、期待を一身に背負っての次回作。
これも賛否両論分かれた映画のようですね。
わたしはラストで、「シックスセンス」以上に「ぐわっ」と感情がこみ上げて、面白い映画だと思います。
思うに、
ブルース・ウィリス演ずる主人公と、
サミュエル・L・ジャクソン演ずる陰の主人公と、
どちらの側に付くかで、特にラストの、感じ方が違って来るんじゃないでしょうか?
わたしは断然「ガラスマン」の側の人間です。
もう10年前の映画なので読む方は見たものと思って書きますが、
主人公は「決して傷つかない」体を持って生まれた奇跡の人間です。
多数の死傷者を出した列車事故で奇跡的に無傷で助かった彼に、「君は神に選ばれた特別な人間なのだ。特別な君は、その与えられた力に見合った特別な生き方をしなければならない」と、正義のヒーローとして生きることをしつこく迫ってくる男が、先天的に非常に骨がもろく、ちょっとしたことですぐ骨折してしまう「ガラス男」。
彼は自分が何故こんな体で生まれてきたのか悩み、自分のような人間が生まれたからには、もろい自分と対極の、けっして傷つかない不死身の人間がいるはずだ、と大きな事故が起こるとその生き残りを調べ、そのような「選ばれた人間」を捜していた。
主人公はガラス男に言われて初めて自分が怪我も病気もしたことがない事に気づくのだが、実は、気づいていた節がある。彼は元アメフトのスター選手で、怪我を期に引退したのだが、実はその怪我は妻との平穏な生活を送るための仮病だったのだ。彼は特別な人間であることを拒否し、与えられた能力を否定して、普通の生活を選んでいたのだ。
ガラス男はそんな主人公の生き方を非難する。神に選ばれた君が神に与えられた使命を全うしようとしないのなら、こんな体に生まれついてしまった俺の存在はなんの意味があるのだ?、と。
主人公も次第に自分の能力を認めていき、ついに、ヒーローとしての行動をする。
ガラス男は能力に覚醒しヒーローとなった主人公を喜んで称えるが、その後、二人は決して相容れない、決定的な確執を生むことになる。
映画は非常に暗い、やりきれない思いのエンディングを迎えるのだが、ここで主人公の側に立つか、ガラス男の側に立つかで、180度、まったく逆の思いを抱くのかも知れない。
この映画の主人公が果たして「決して傷つかない男」だったのか、「ガラス男」だったのか。
この映画を見て、つまらない、全然面白くない、と思う人は、完全に「決して傷つかない男」の側の人なのだろう。
わたしのように非常に強いショックを受けて、シンパシーを感じてしまうのは、完全に「ガラス男」の側の人間なのだろう。
まだ見ていない人は、果たして自分がどちら寄りの人間か?、面白いか面白くないか、試しにご覧になってみてはいかがだろう?
…………この映画を見て怒る人は、自分がガラス男の側であるのを認めたくない人なのかも知れない。