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インセプション

 祝地上波初放映!のクリストファー・ノーラン監督作2連発の、まずは第1弾



  インセプション



 2010年、レオナルド・デカプリオ主演、渡辺謙共演で話題となったSFX超大作です。

 ものすごい壮大な、大がかりなSFXを盛り込んだ超大作ですが、わたしの感触としては「ダークナイト」で神経衰弱ギリギリの自分を追い込んで追い込んで胃の痛くなった末の大ヒットの、自分へのご褒美的、個人的趣味映画という感じでした。


 お話は人の脳内に侵入して、脳内の記憶を盗み出す産業スパイが、さらに一段レベルの高い、人の脳内に侵入して「記憶を植え付ける」=「インセプション」というミッションに挑む。というもの。

 頭の中のお話で、いかにも理屈的思考人間が頭の中で理屈をこねくり回して作り上げたようなお話。


 脳内への侵入は対象者を眠らせて、自分も眠り、対象者の脳と自分の脳を機械的につなげて、対象者の夢の中へ入り込む、という手順で行われる。

 このミッションで重要なのは、対象者に、自分が夢を見ていると気づかせてはならないこと。気づいてしまったら目覚めようとするから。

 さらに重要なのは、他人が自分の夢=脳内に侵入していると気づかれてはならないこと。それはもちろん犯罪行為であり、対象者が自分の脳内に侵入されていると気づいたら排除しようとし、殺されることもあり得るから。

 侵入者が心がけなくてはならないのが、夢の中に意識を取り込まれないようにすること。相手の夢の中でお芝居を続けているうち、自分もその夢を現実と錯覚してしまって抜け出せなくなる危険があるから。

 ・・・・夢の世界に浸りきって、現実に帰ってきたくなくなってしまうから。


 劇場で一回見ただけなのでうろ覚えですが、だいたい上のような基本的なお約束があるわけです。これだけでも十分複雑。


 この映画のすごいところは、「夢」「記憶」といった曖昧なものを、徹底的に現実として構築しているところ。

 ちょこっとメイキングを見たところ、これはみんなCGで作ってるんだろうなと思ったバンバン物が吹っ飛ぶシーンが、全部実写で、へえーーと驚きました。

 大規模な世界の崩壊などCGも多用されているでしょうが、まったくCG臭さを感じさせず、徹底的にリアルな質感にこだわった映像を作り上げています。

 映画を見てなくてもCMや予告編で、街が折れ曲がって向こうの方からぐわーっと高層ビル群が立ち上がってきてこちらに倒れ込んでこようとする、というシーンを見た方も多いと思うんですが、夢の中のなんでもありを象徴するこのシーン、わたしは「マトリックス リローデッド」「レボリューションズ」にこういう世界観を期待していたんですよね。リアルな仮想世界のリアルな大崩壊という。マトリックスシリーズはだんだん仮想とリアルが分離していっちゃってつまらなかったんですが、さて、「インセプション」は?


 今回のミッション、記憶の植え付け、は、成功例がまれなそれ自体難しい仕事である上に、相手は大企業のトップで、「侵入者」に対する訓練もセキュリティーもトップレベルという極めて困難な、ほとんど実現不可能な条件。

 しかしデカプリオ率いるチームは依頼者である渡辺謙とともに対象者の脳内に潜入。

 しかし案の定セキュリティーに阻まれてミッションは困難を極める。

 失敗かと思われるが、デカプリオはミッションを達成するため、更なる困難、「夢の中の「更に夢の世界」」への侵入を試み、実行する。

 現実世界、夢の第1階層世界、夢の第2階層世界、と、3つの世界で同時に事態は進行し、夢の世界から引き上げなくてはならないタイムリミットに向かって同時並行にギリギリの戦いが展開される。

 更に、現実の世界と夢の世界は時間に対する意識の違いで時間の流れる速さが違い、それは階層を経て更に延びていく。夢の世界を基準にすると現実の世界の時間はスローモーション、更に超スローモーションへと変化していくのだ!!……うぎゃあっ。


 理屈の上に理屈を重ねて、しかもそれを徹底した写実的リアル映像で構築するという手法は、とてつもない知的エクスタシーを感じさせてくれます。上の説明もたぶん間違っている部分があると思います。複雑すぎて理解できないし、覚えてないしと。

 でもね、いいんですよ、理解しきれなくても。頭の良さそうな話を面白く見せられるとそれだけで十分興味深く興奮できますし、自分の頭が良くなったような錯覚を覚えて気持ちいいものです。


 ストーリーはアクション主体で進行し、映画の7割くらいアクションシーンだったんじゃないかという気がしますが、アクション映画として見ると、ちょっとだれる感じがありました。

 アクションというのは一方向の流れでないと気持ちよくないものです。お話も一方向に流れていないとアクションの興奮に水が差されて盛り上がれないものです。回想シーンなどはアクションに入る前に済ませておかなくてはアクションに集中して気持ちよくなれませんね。

 「インセプション」の場合、ストーリーも設定も最上級に複雑で、ねじ曲がっていて、おまけに後半は平行して同時進行の世界で時間の流れ方が違うわで、タイムリミットのサスペンスはたっぷり味わえますが、ど派手な重量級アクションの割にアクション自体はちょっと退屈に感じてしまいました。

 ま、いいです、こんな映画、そうそう他にありませんから。なんだか凄い物を「観た」という満足感はお腹いっぱい味わえます。



 困難の上にも困難を重ねる「インセプション」のミッション。

 しかし最大の敵は、対象者の頭の中のセキュリティーではなく、侵入したデカプリオ自身の頭の中にあった。

 あのラストシーンの真実がどうであったのか?

 是非もう一度確認してみたいと思います。




 ちなみに以前別のところで書いたレビュー。


「理屈派クリストファー・ノーランがいかにも頭の中でこねくり回したようなストーリー。しかし極力現場で撮影することにこだわった映像は驚きのクリアーさで、え?これCGじゃなかったの?とびっくり。その労力も含めて思いっきり褒め倒したいところですが……わたしは映画館で観ていて途中うつらうつらと自分の夢の中に入ってしまいました。2重3重に層の違うアクションが重なり、それぞれのアクションは凄いし、タイムリミットのサスペンスもお見事なのだけれど……、さすがに構造が複雑すぎて純粋にアクションを楽しむことが出来ない。アクション映画が好きな人にはあまりお勧めできないかも知れない。頭の中の知性を楽しむ映画。「ダークナイト」でとことん現実を突き詰めて疲れた監督の息抜きの趣味という感じがしないでもない。非常に頭のいい高尚な趣味で、こちらもそれなりの知能を要求される。このパズルを解ける人には非常に気持ちのいい映画なのだろう。かっこつけて星5つを付けたいところですが自分の知能の自己申告で4つにさせていただきます」


 ……あんまり誉めてなかったですね。あれー?そうだったっけー??? 人の記憶というのは時と共に変化するものですね。

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