ギャラクシー☆クエスト
これはなんだか評判がいいですね。
ティム・アレン(バズ・ライトイヤーの声)、シガニー・ウィーバー、アラン・リックマン(スネイプ先生)出演の1999年アメリカSF映画。
これ、本当に評価が高いですね。褒めたくなる気持ちはよく分かるし、わたしも好きな映画なんですが、でも、そんなにメジャーになりうる映画ではない…ですよねえ???
これも「エンジェルウォーズ」と同じくオタクパロディー映画なんですが、こちらはカラッとストレートに、気持ちのいい楽しい映画です。
取り上げられているネタは「スタートレック」。
パロディー映画ですが、おふざけおちゃらけ映画ではありません。パロディーというよりコメディー映画です。
お話は
往年の人気SFテレビシリーズ「ギャラクシー・クエスト」の俳優たちが、テレビドラマを「ドキュメンタリー」と勘違いした善良な宇宙人に宇宙船のメインクルーとしてスカウトされ、悪の宇宙人と戦う。
というもの。
この設定だけで笑えますが、こうした「架空のテレビドラマ」とその「熱狂的なファン」というエピソードが全編にちりばめられ、実に微笑ましくも、笑えます。
面白いネタがたくさんあるんですが、説明するとネタバレになって面白くないし、かといって説明しないと分からない人には分からないしという実に困ったジレンマがあります。
そこで、ネタになった「トレッキー」について、素人ながら、説明しますと、(わざわざ、素人ながら、と注釈を入れるのは、この手のファンは一々細かいことにうるさい人たちがいるので念のため。というのもまあ一種のパロディーです)
1966年から放送の始まった「スタートレック」。
カーク船長、ミスター・スポック、ドクター・マッコイ、ミスター・カトウ、黒人女性士官ウラ、等々、人気クルーの操縦する宇宙船エンタープライズ号が宇宙の様々な「未知」に遭遇する科学冒険物語。
このスタートレックの熱狂的なファンの人たちを「トレッキー」または「トレッカー」と呼び、どうやらこの両者にも区別があるようですが……よく分かりません。(多分言う人によって定義が違うと思います)
彼らトレッキーの実力は凄い!
第2シーズンで打ち切り予定のテレビシリーズを100万通の抗議書簡で第3シリーズを作らせ、
ホワイトハウスへ40万通のリクエスト投書でスペースシャトルを「エンタープライズ」と命名させ(残念ながらテスト機のため宇宙には行かず)、
シリーズ存続のための寄付活動まで行ってしまう。
熱狂的なトレッカーは自宅や仕事場までエンタープライズのコックピット風に改造してしまう。
全米にファンクラブがあり、交流も盛ん。
以上、ウィキペディアの受け売り。
日本でいえば「ガンダムファン」がイメージ的に近いと思いますが、日本でもスタートレックファン及びファンクラブは存在しますが、本国ほど盛り上がってませんよね?
スタートレックっていったいどれだけ作品があるんだろう?と思ったら、テレビシリーズ5本、映画11本、アニメシリーズ1本と、あれ?そんなもの?という気もしますが、テレビシリーズ1本ごとに何シーズンにも渡って長大な話数がありますから、全体は超巨大な一大SF作品群になっています。
ガンダムと比較しましたが、ガンダムは正統な続編シリーズと、独立した世界観の別シリーズとありますが(?あるんですよね?あんまり詳しくないんで)、スタートレックは全て同じ世界、同じ歴史の上に成り立っています。
この設定がまた細かくてですね、……ちょっと調べてすぐに諦めました。この膨大な設定の世界観を共有しているわけですから、彼らトレッキーたちのオタク度とファン同士の絆の深さというのが伺われるでしょう。(ちなみにウィキペディアによると「トレッキー」というのはどちらかというと外からバカにしたニュアンスの呼び方のようで、当のファンたちはあまり喜ばないとか??)
わたしの地域で放送のあったのは60年代の初代シリーズ「宇宙大作戦」と80年代の「新宇宙大作戦(ザ・ネクスト・ジェネレーション)」の2本。後はちょこちょこっと見た程度。
わたしは80年代の「新宇宙大作戦」のシリーズが好きです。ピカード艦長、ライカー副長、アンドロイド・データ、カウンセラー・トロイ、エンジニアのラ=フォージ、クリンゴン人のウォーフ中尉の活躍するシリーズです。
やはりその膨大かつ厳格な世界設定と、地味なハードSFストーリー(いろいろバラエティーに富んでいて楽しいですが)でイマイチ日本では人気の爆発しない「スタートレック」ですが、このシリーズの何が素晴らしいといって、未来の宇宙世紀において実現している人類の「理想世界」の設定です。
科学技術の発達によって世界の貧困は克服され、人種や性別の差別はなく、政治的イデオロギーの対立もない。貨幣経済も過去のものになり、人々が働くのは自分と社会、人類の質を高めるため。ああ、素晴らしい! 日本人が「鉄腕アトム」で抱いていた夢の未来がここには実在する! ……架空の話なんですが、偉いのは、60年代の第1シリーズでミスター・カトウを日系人のジョージ・タケイが、ブリッジの通信士官ウラを黒人女性のニシェル・ニコルズが演じている。我々日本人としてはミスター・カトウの活躍が嬉しいが、黒人がテレビシリーズのメインアクターでレギュラー出演したのは初めてだそうで、かのキング牧師がスタートレックのファンで、「ウフーラ(オリジナルの呼称はこっち)は黒人の子どもたちにとって目標である」と言ったそうです(すみません、相変わらずウィキの受け売りです)。テレビ番組自体が当時の人種差別意識をうち破ってみせていたのですね。これは創始者のジーン・ロッデンベリーの意志が強く働いたことによるようです。
…おっと、「ギャラクシー・クエスト」の話でしたね。
まあ、元ネタになった「スタートレック」及び「トレッキー」の層の厚さはご理解いただけたと思います。
ところが。
演じていた俳優たちにとってはいつまでもまとわりつく「過去の栄光」も熱狂的なファンたち「クエスティー」もうっとうしくてならない(このクエスティーたち、俳優たちよりずっと「ギャラクシー・クエスト」の世界に詳しい)。しかしファン集会のゲスト出演などでかろうじて知名度と生活をつなぎ止めているので邪険にも出来ない。「俺は舞台俳優なんだぞ」と嘆く特殊メークバリバリのアラン・リックマンなど悲惨その物。ファンのリクエストに決めゼリフを嫌々言わされ、それがまた大受けなもので、またまたうんざり。
この熱心なファンの熱狂具合は、
宇宙の宇宙人も同じこと。
昔のテレビ放送の電波を拾って、それを「本物」と思い込んで、「本物のスペースシップ」までそっくりそのままコピーしてしまった彼らファンの俳優たちを見る眼差しは憧れにキラキラ輝き、これには地球で腐っていた俳優たちも気分が良く、ついつい「本物の」クルーとして本物の宇宙で本物のスペースシップに乗り込むのだが………。
さてどうなりますことやら、ということなんですが、詳しくは書けないんですよねえ。
「ネタ」が気持ちよく消化され、お約束通りに展開して、わたしのような「分かってる」ファンを大喜びさせてくれるんですが、ま、そんなオタクファンの滑稽具合を笑いつつ、終盤には思いがけず感動もあるんですよね……。
あ〜〜、言いたいけど言えない。最後は「イエスッ!」と気持ちよく大笑いさせてくれます。
本家「スタートレック」にはなかなか手が出せない方も、こちらは軽〜い気持ちで楽しんでいただきたいです。これで興味が湧いたら「スタートレック」劇場版でも見ていただけたらと……(本当は劇場版よりテレビシリーズの方が面白いんですけれどね)
あ、そうそう、わたしこれDVDで見たんですけれど、戸田奈津子さんの字幕は駄目ですな。彼女は「トレッキー」じゃありません。全然分かってないなあー。ご覧の祭は是非、吹き替え版をどうぞ。