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 ウリカが成人(デビュタント)して三ヶ月が経過した。

 その間にロヴィーサがブレークホルン侯爵家三男ヘンリクと婚約したり、ヨンナがセドウェン王国の第三王子オーディンと婚約する出来事があった。


(お姉様達が立て続けに婚約。私もハミルトン伯爵家の為にどこかの家に嫁入るする必要があるけれど……)

 まだ十五歳のウリカは貴族令嬢としての役割は理解しつつも、結婚や恋などはあまり分からない。


 しかしそんなある日の夜会にて、ウリカはとある令息と出会を果たす。


「そんな見窄らしい服でよく夜会に来れましたね、兄上」

「やっぱりクレイツ伯爵家の次期当主はフォルケ殿からウルバン殿にすげ替えた方が良いでしょうね。きっとフォルケ殿本人もそう思うのでは?」

 下劣な笑みを浮かべる令息達。彼らは流行遅れの紳士服を着た令息を取り囲んでいた。

 取り囲まれた令息は何も言わずに俯いて黙り込んでいる。黒褐色の髪にムーンストーンのようなグレーの目、柔らかな顔立ちの令息である。恐らく彼の名がフォルケであろう。

「おっと兄上、手が滑りました」

 取り囲まれている令息の弟らしき人物が、彼の服にワインをわざと溢す。先程の話によると、きっと彼の名はウルバンだ。

 周囲はクスクスと笑っていた。

 誰もフォルケを助けようとしない。


 その状況をウリカは黙って見過ごせなかった。

「ちょっと、貴方達、何をしているの!?」

 ウリカら颯爽と優雅に歩き、フォルケの前に庇うようにして立つ。

「何だお前?」

 ウルバンはウリカを見て表情を(しか)めた。

「ハミルトン伯爵家三女、ウリカ・マルギット・フォン・ハミルトンよ。貴方達の行為は紳士としてどうなのかしら? 社交界デビューをしていてもそのレベルなのね。お里が知れるわ」

 アクアマリンの目は真っ直ぐ強気である。

「何だと!? 女の癖に生意気な!」

 ウルバンはウリカの言動に苛立ち、彼女を殴ろうとした。

 しかしウリカは颯爽と避ける。

「な!? この!?」

 ウリカに避けられたことでウルバンは余計に苛立ち、更に殴り掛かろうとする。

 しかしそれも軽々と避けるウリカ。

 まるでダンスのステップを踏むように軽やかである。


「私の妹に何をしているのかしら?」

 そこへ、姉ロヴィーサがやって来た。彼女の隣には婚約者のヘンリクもいる。

 ロヴィーサは先程の様子を見ていたようで、ウルバンに怒りを向けていた。

「ご令嬢に暴力を振るうとは、紳士失格だね」

 ヘンリクも怒ってくれていた。

 更にそこへヨンナと彼女の婚約者オーディンまでやって来る。

「何だか物騒ね」

 ヨンナは冷たい目でウルバンを睨む。

 更にそこへ第三王子であるオーディンが追い打ちをかける。

「愛するヨンナの大切な家族が危険な目に遭うだなんて許せないね。使える権力は使って君達を排除することも出来るのだけど」

 王族として権力を行使し、無理矢理にでもウルバン達を社交界から追放すること示唆していた。

 これにはフォルケに嫌がらせをしていたウルバン達も黙らざるを得なくなる。

 分が悪いことを悟ったウルバン達は、悔しそうにその場を後にするのであった。


「……助けてくれてありがとうございます。それに、危険な目に合わせてしまい申し訳ありません」

 フォルケはおずおずとした様子でウリカ達にお礼と謝罪をした。

「いいえ。私は自分が正しいと思ったことをしただけよ」

 ウリカは真っ直ぐフォルケを見つめる。

 ロヴィーサやヨンナ達はその様子を見守っていた。

「……本当に、ありがとうございます。改めまして、僕はフォルケ・ペッテル・フォン・クレイツ。……一応クレイツ伯爵家長男です」

 フォルケは少し自信がなさそうだった。

 先程彼に嫌がらせをしていたのは弟のウルバンだということは、クレイツ伯爵家は色々と複雑なのだろう。しかしウリカはフォルケにも言いたいことがあった。

「フォルケ様、貴方はどうして何も言い返さないの? 言われっぱなしで悔しくはないの?」

 ウリカなら、何かあればすぐに言い返すのだ。

「それは……言い返したり反撃したりすると、余計に酷くなるからですよ」

 フォルケは諦めたように笑っていた。ムーンストーンの目

 その時ウリカはハッとする。

「……もしかして、私が前に出たせいで貴方、クレイツ伯爵家で余計酷い目に……!?」

 フォルケが今後どういう扱いになるか、少し予想が出来たのだ。

「いえ、気にしないでください、ウリカ嬢」

 少し困ったように笑うフォルケ。

 しかしウリカは彼を放っておくことは出来ないと思ったのだ。

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