秘密の恋人
いつだって哀しくて、いつだって醜くて。
上手にかたく蓋をして、目隠しも上手になって。
喉が痛いくらい涙を我慢しても、あふれてくる内側の言葉は止められず。
「ああ、死にたい」
こぼれるような気持ち悪さに、反吐が出るような気持ち悪さを重ねて。
口付けるような言葉は、多分絵画のような威嚇の間違い。
偽善だって、誰かを救えるならば優しさと認められるでしょう。
でも私の偽善のいくつが、果たして優しさになるのでしょうか。
「ああ、消えたい」
逃げることが悪いのではなくて、逃げていると自覚しないのが悪い。
弱いのが悪いわけではなくて、強くないと言い訳するのが悪い。
諦めたくないなんて、綺麗なわがままは見てくれだけ。
中身を見れば、嫌になるでしょう。つまり、そういうこと。
「ああ、哀しい」
本当はそんなこと想ってるわけじゃない。
本当はそんなこと話してない。
本当は、本当なんて知らないんです。
うそだけど。
「私、とにかく辛いんです。
なぜ? 辛いと感じることに理由って必要なんですか?
はあ、そうしないと解消しないんですか。
何で解決しないとならないんですか?
ただ吐き出したい。
それだけなのに」
救われたい? 救われたい? 救われたい?
違うでしょう。
報われたいのでしょう。
頑張った私、というのが報われて欲しいのでしょう。
報われないことのほうが多いなんて理屈が欲しいんじゃない。
ただそれを、私に欲しいだけなんでしょう。
私に優しい世界をください。
それ以外、望まないのに。
「馬鹿だね、一番醜いお願いだ」
天才にも愚者にも非凡にも凡才にもなれない。
中途半端が一番怖いと、どうしてだれもおしえてくれなかったの?
脳みそをぐちゃぐちゃに犯して侵して冒して特別になりたい。
シナプスが壊れるくらいの究極が欲しい。
そうしたらなんだかとてもすっきりしそうで。
そんなのただの幻想に違いないけれど。
振り上げたこぶしを振り下ろすのはどこかしら。
ああでもつまりは結局どうしてもどうしようもなく。
「わたし、自分のこと、実は好きみたいなの」
「これは内緒よ?」
「絶対に」