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61 私と大人の猫宮くん


「へぇ、小春ちゃんは本が好きなんだ。」

「祖父が好きで、その影響で……。」


私がそう言うと、目の前の男性は目を細めて満足そうに笑う。私は今おそらく猫宮くんの家族の誰かであろう人物と喫茶店に来ていた。猫宮くんの家族の事は見た事もないし話に聞いた事もないけど、目の前の男性がお兄さんがお父さんか親戚なのかどれかは分からないけど、確実に血の繋がった誰かである事は間違いない。


「僕もね、本は好きなんだ。」


顔も表情も、コーヒーを飲む時の仕草も全て猫宮くんに似ていた。少し目の前の男性の方が年齢が高く見える所ぐらい。猫宮くんにそっくりな大人の男性を目の前に、私は緊張でうまく話せないで居た。


今日私は登校日で学校に来ていた。もちろん猫宮くんも居た。駅まで送ってくれて分かれて、電車を降りた私はまっすぐ帰らずに最寄駅の近くの本屋で本を購入した。こないだ猫宮くんと見た映画の小説、その作者の新作が今日発売だった。そして買ったばかりの本を持って帰ろうとした時に、なぜか猫宮くんを見つけて声をかけてみた。


「あれ、猫宮くん家に帰ったんじゃ……。」

「?」


近寄ってみて違和感に気づいた。背が少し高い。遠目じゃわからなかったけど、顔も……こっちの男性の方が大人びていた。まんま猫宮くんを大人にしたらこんな感じだろうって男性に私はびっくりして目を丸くする。


「あ、その、ごめんなさい。私の知ってる子だと思って……。」

「もしかして、小春ちゃん?」

「え?」

「話は聞いてるよ、よかったらお茶でもしない?一回話してみたかったんだ。」


突然の誘いに何が何だかわからないうちに、近くの喫茶店へ連れてこられて、色々質問攻めに会っている所だった。趣味や特技、食べ物の好き嫌いから、得意な教科、休日の過ごし方まで、聞いてどうするんだろうって事まで聞かれた。そしてひと段落ついた所でやっと私が質問する事ができた。


「あの……、もしかして猫宮くんの、ご家族の方ですか?」

「うん。正解。あの子、君に迷惑かけてない?まだ勉強中の子だから。」

「全然。いつもお世話になっています。お兄さん、とかですか?」

「ふふ、どうだろうね?お兄さんに見える?」


この話し方、すごく猫宮くんっぽい。顔だけじゃなくてこの目を細めて笑って私の反応を見る様子まで一緒だった。まるで猫宮くんと話しているみたいに錯覚して、恥ずかしくて顔が熱くなってしまう。


「わかんない、です。すごくそっくりだし、でもお父さんほど老けてないから。」

「僕もかっこいいでしょ?」


私は静かに頷いた。猫宮くんとほとんど一緒な顔をしたこの男性はすごくかっこよかった。大人になった事で色気が増していて、先ほどから周りにいる女性の視線も感じていた。


「いつも君の事を聞いてるよ。可愛いって。」

「そ、そんな……」

「うん、すごく可愛い。」


もしかして猫宮くんの話し方やストレートな物言いは、この家族特有のものなのかな。恥ずかしくて顔から火が出そうになる。


「あの子のどこが好きなんだい?顔かな?」

「あ、その、顔も好きだけど……、優しいし、なぜだか私の事をずっと前から好きで居てくれてて、私は覚えてないんですけど、それでも好きって言ってくれて。私はその好きが心地よくて、好きかな……ってすみません、何言ってんだろう私!」


猫宮くんの家族の前でなんかとても恥ずかしい事を言ってしまって、慌てて謝った。目の前の男性は優しく微笑んで私を見つめていた。


「これからも、好きで居てあげてね。君のためにお願い事聞いてあげたんだから。」

「どういう事ですか?」

「そのうちわかるよ。」


はぐらかされて、男性は綺麗な動作でコーヒーを口に運ぶ。どういう事か意味がわからず頭に?を浮かべて考えてみたけど答えは出てこなかった。


「さて、僕はそろそろ行くよ。話せて楽しかった、次は家においで。」

「あ、はい!こちらこそ、猫宮くんのお兄さん?」


疑問は残ったけど、引き留めて問いただすような事でもないので私も立ち上がって荷物を持つ。どうしてもお父さんには見えなくて、お兄さんと呼んでみたら男性はまた笑って


「んー、(じん)さんって呼んでよ。」

「仁さん、わかりました。」


お会計は大人に払わせてよと言われて、紅茶のお代を払ってもらってしまった。


「すみませんお茶代、ありがとうございました。」

「これからもあの子をよろしくね。小春ちゃん。」


ポンと頭に置かれ軽く撫でられる。猫宮くんがあまりしない行動を擬似体験したみたいになれて得をしたような気持ちだった。私はそのまま買った本を抱え少し歩いて、ふと後ろを振り返ってみるとそこにはもう仁さんは居なかった。


不思議な人だったなあ。顔だけじゃなくて、行動や仕草も猫宮くんそっくりで。やっぱり家族って似るものなのかな?ふと自分の家族の事を考えてみて、あそこまでそっくりではないけど一緒に生活しているうちに行動は似るものなのかもしれないと思った。


ーー君のためにお願い事聞いてあげたんだから。


あの言葉の意味だけは理解できなかった。猫宮くんが仁さんに何か特別なお願いでもしたのかな?私のため?


猫宮くんに次あった時に聞いてみたらいいかな。




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