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53 僕と大好きな手


「じゃーん!なんと赤点1つだけでした!!!」

「どうして赤点とったのかな?」


僕は自慢げにテストの結果が書いてある用紙を見せてくる里奈に頭痛を覚える。

せっかく小春ちゃんとの時間を割いて教えてあげたのに、これじゃあ意味がない。


「すごい里奈、成長したね!」

「1つだけなら補習も3日で終わるもんねー!」


そういう問題じゃないんだけどな……。

里奈のテストの点数を見てみると、どれも全て赤点ギリギリ。

赤点をとったのは英語の科目。僕の教え方下手だったのかな……?


「今度から英語は中川に聞いて。僕じゃ教えられない。」

「えー!猫宮くんの説明分かりやすかったよ!次もお願い!」

「はぁ、あのねえ……テストの度に僕に頼ったら自分のためにならないし、小春ちゃんとの時間減らすの嫌なんだよね?」

「大丈夫だよ猫宮くん、私も一緒に勉強するから!」

「やったー!」

「僕は小春ちゃんと2人で過ごす時間が欲しいんだけどなあ。」


僕の気持ちをよそに、里奈は次も僕に頼る気でいる。

小春ちゃんに抗議の目を向けるが、僕と目が合うとにこって笑ってくれる。

そうじゃないけど可愛いから許す。


「流石だぜ猫宮!赤点ゼロ!」

「当たり前だよね?」


僕に自信満々に見せてくる颯太の点数も、ほぼ赤点ギリギリ。

人に教えるのってすごく難しいんだね。




今日はテスト明け図書委員の仕事を任されていたので、放課後小春ちゃんと図書室の受付をする。

図書委員の仕事中だけど、久しぶりに2人きりで過ごせている事に嬉しくなる。


「返却は1週間後にお願いします。」


小春ちゃんが簡単な連絡をまとめている間に僕は受付を担当する。


「ありがとう猫宮くん、終わったよ。」

「うん、こっちも落ち着いたよ。」


テスト期間が終わり図書室を利用する人も少なくなった。

僕たちが委員の仕事の日はいつもより人が多いらしいけど、これで多い方だったら普段どれだけ利用する人が少ないんだろう。


「猫宮くんにおすすめしてもらった本、すごく面白かったよ。」


一応図書室だからか小さく囁くように小春ちゃんが言う。囁かれる声がくすぐったくて心地いい。

僕も真似して小さな声で囁く。


「よかった、僕の好きな物を気に入ってもらえるの嬉しいね。」


小さな声で話すから自然と距離が近くなる。

僕は周りを見渡してみると、みんな本を読みに来ている生徒ばかりでこちらを見ているのは一部の女子だけ。


「小春ちゃん、好き。」

「……、猫宮くん、いま図書室だから……。」


カウンターの机の上に置かれていた小春ちゃんの手に手を重ねる。

指を絡めると小春ちゃんの体がびくっと跳ねて、顔が赤くなる。

そういう反応が楽しくて意地悪するのをやめられない。


「どうして?見えないから大丈夫だよ。」


自分の足を少し開いて、隣に座る小春ちゃんの膝に少し触れた。

少しだけしか触れてないのに、小春ちゃんの熱が移ってきて暖かくなる。


「ね、こう言うのってドキドキするよね。」

「するけど……、恥ずかしいから……。」

「恥ずかしがってる小春ちゃんが可愛いんだよ。」

「それってすごくいじわる。」


眉を寄せて上目遣いで僕を見る。どんな仕草も全て可愛く見えてしまってしょうがない。ものすごく抱きしめたい気分、でもそれをやると凄く怒られそうだから堪える。


「ふふ、かーわい。」


手を絡めたまま僕はもう片方の腕を枕にして机に体を預ける。そしてそのまま下から小春ちゃんを見つめる。

小春ちゃんは照れて空いてる手で顔を隠しちゃった。僕は繋いでいる手を口元に引き寄せて、軽く口付ける。

わざと音を立てて唇を離すと、静かな図書室にその音が響いた。


「ちょ、ちょっと、まって。」


小春ちゃんは焦って手を離そうとするけど、僕はしっかりと手を握って離さない。指先を軽く噛んだりして、小春ちゃんの反応を見る。


「それはだめっ。」

「どうして?」


猫の時は手にじゃれついたら、小春ちゃんも喜んでくれたんだけどな?


「手は、汚いから。」

「小春ちゃんに汚い所ないよ?」


小さくて細くて柔らかい指に痛くないように歯を立てる。このまま齧ってしまいたい。

そうしている内に本を借りにくる生徒の足跡が聞こえて、僕はぱっと手を離して受付をした。


受付を済ませて小春ちゃんの方を見ると、すこし困った顔をして小さくばかって言われた。もう手は繋がせてくれなさそうだから椅子を少しだけ寄せて近寄るだけにしておいた。



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