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49 僕と初めてのデート(2)


「うっ、うぅ……ずずっ。」

「大丈夫?」


映画館の外の椅子で号泣する小春ちゃんの背中を撫でる。

僕らの周りには、同じように涙を溢れさせて座り込む女性が多かった。


「あんなのっ、可哀想すぎるうぅ、ぅ。」

「そうだね。可哀想だったね。」

「うぅ……思い出したら、また……。」


映画の内容は、主人公の恋人が事故に遭って、主人公と出会った日からの記憶が失われていて

それでも恋人の事を愛しているから、主人公はまた初めから愛を伝える。

しかし、次の日会いに行くとまた記憶がリセットされている。それでも愛を伝え続け……。

そんな日々を1年以上続けて、どんどん疲弊して行く主人公と恋人のストーリー。


結末は、恋人は主人公の事を一度も思い出せずに、後から出てきた恋人の初恋だった幼馴染の男に全て奪われて終わる。主人公は幸せそうな恋人を見て、身を引いて1人遠いところへ引っ越していってしまう。


あまりいい結末ではないけど、この気持ちがよくない終わり方が人気の小説だった。

演じていた役者の演技も悪くなかったし、感情移入する人が多いのも分かる。


ただ僕は主人公の気持ちにまったく共感できなかった。

どうして、愛しているのに身を引くのか。そもそも幼馴染の男を近づけさせたのかいけなかった。

幼馴染の男で、なんとなく颯太を想像してしまった。少し容姿も似ていたし。

僕は颯太と小春ちゃんをなるべく2人きりにしないようにしている。

通学時間は仕方ないけど、小春ちゃんに好意を持ってる男を安易近寄らせる事はしない。


「はー、ごめんね、猫宮くん。落ち着いたよ。」

「ううん。大丈夫だよ。僕も泣きそうだった。」

「やっぱりあの終わり方は可哀想だよね。せめて少しだけでも主人公の事を思い出してくれたらいいのに。」


小春ちゃんが落ち着いたのをみて、僕は立ち上がり手を差し伸ばす。


「あとはのんびり色々見て回ろうか。」

「うん。猫宮くんは何か欲しいものとかあるの?」

「うーん……、本とかかな?たまには自分で選んだものを読んで見たいかも。」


いつもは神様が揃えてくれた物の中から選んで読んでいるから、自分でこれが読みたいって物を読んでみたかった。

僕がそう言うと小春ちゃんは笑って、書店へ案内してくれた。


「私も何か1冊買おうかな?おすすめある?」

「どんなのがいい?恋愛とかミステリーとか、好きなジャンル教えてくれる?」


2人で好きな本の話をしながら回るのはすごく楽しかった。

小春ちゃんの好きな本も知れたし、僕のおすすめの本も教えてあげられた。

本の包みを持って2人でショッピングモールを歩いてたら、ふとアクセサリーが並んでいる店が目に入った。


「小春ちゃんはアクセサリーとか付けないの?イヤリングとか。」

「あー、レオが居たから、もし食べちゃったりとかするの怖くて……。アクセサリーは付けないようにしてたの。」

「はは、流石にアクセサリーは食べないよ。」

「分かんないじゃん!ネックレスとかおもちゃかと思っちゃうかもだし!」


過保護な小春ちゃんに思わず笑ってしまう。

流石に食べちゃダメなものと、良いものぐらい見分けつくって。

でも、そっか。僕のためにおしゃれ我慢していたんだね。


「ちょっと見てもいい?」

「うん、良いよ?」


僕はアクセサリーショップに入る。

中にはキラキラと色んなアクセサリーが並んでいた。


あまり高すぎる物は小春ちゃん遠慮しちゃうと思うから、これぐらいの値段で……。


「猫宮くんイヤリングが欲しいの?男の子ならあっちにメンズ用のお店があるよ?」

「ううん、これは僕にじゃなくて、これとかどうかな?」


僕はピンクゴールドの金具の、花のモチーフが付いた小さめのイヤリングを取って小春ちゃんの耳に合わせてみる。

うん、今日のワンピースにも似合ってて、小春ちゃんっぽくて可愛い。


「え?私に?」

「うん、初デート記念にプレゼントさせてよ。」

「いいよ!自分で買うよ!!」

「ううん、だーめ。僕が買ってあげた物を身につけて欲しいの。」


小春ちゃんが財布を出す前にイヤリングを購入する。


「素敵な彼氏さんですね。」

「は、はい。」


店員が小春ちゃんににっこり笑って言う。

照れて少し俯きながら受け取る小春ちゃん。可愛い。


「ありがとう、猫宮くん。」

「ねえ、つけてみて?」


近くにあったベンチに腰掛けて、小春ちゃんに袋を開けさせる。


「鏡ないと難しいかも……。」

「貸して、僕がつけてあげる。」


苦戦していた小春ちゃんからピアスを受け取り、髪を耳にかけて耳たぶを触る。

映画館でこの耳を甘噛みした感覚を思い出す。


「可愛い耳だね。」


ぷにぷにして可愛いくて、ついピアスをつけずに触り続けてしまう。

小春ちゃんの耳が少し赤くなってる。


「恥ずかしいからっ、早くつけて……。」

「ごめんごめん、動かないでね。」


耳たぶに留め具を挟んで締める。

軽く位置を調節して、もう片方の耳にも同じようにする。


「うん、すごく似合ってる。」

「ほんと?ありがとう、大事にする。」


小春ちゃんが喜んでくれてよかった。


「じゃあ、何か私もお返ししたい!何か欲しい物ある?」

「ううん、何もいらないよ?」

「え!でもそれじゃ……。」


僕はやんわりと断った。

小春ちゃんが喜ぶ姿を見る事ができればよかった。

そのうちアクセサリーだけじゃなくて、服も靴もプレゼントして、全身僕の選んだ物で着飾って欲しい。

その度にお返しして貰ってたら、小春ちゃんのお財布じゃ足りなくなっちゃうからね。


「じゃあ、僕の誕生日またデートしてよ?」

「え、それだけでいいの?」

「うん、一緒に過ごしたいな?」


誕生日は小春ちゃんと過ごしたい。

どこにも何もなくてもいいから、一緒に過ごしてもらえるだけでいい。


「いいよ!何かプレゼントも用意しておくね?」

「そんなのいらないのに。」

「それはダメ!私が何かしてあげたいの!」

「じゃあ楽しみにしておくね。」


一緒に過ごせるだけで幸せなのに、プレゼントまで用意してもらえるなんて。

未来の楽しみがまた増えた。



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