48 僕と初めてのデート(1)
デートが楽しみすぎて僕は1時間前から、待ち合わせ場所に来ていた。
もし小春ちゃんが早く来ちゃったら待たせちゃうから、僕の方が早く着いてるようにしたかった。
スマホの時計を見る、11時ちょうど。
待ち合わせ時間まで後1時間、何をしてようか。
僕は犬のオブジェクトの前で小春ちゃんを待つ。
神様に服装を相談したけど、ひと昔前のセンスでコーディネートされそうになったから、結局自分で雑誌を読んで似合いそうな服を選んで着てみたけど……。
猫にとって服なんてどうでもよかったし、普段は制服だからあまり気にしてなかった。
今の自分の服装が変じゃないかすごく気になる。
小春ちゃんなら何も気にしなさそうだけど、少しでもカッコよく小春ちゃんの目に映たい。
「お兄さん、誰かと待ち合わせ?」
あれこれ考えていると、髪の長い派手な女性が声をかけてきた。
真っ赤なリップがメイクの濃さを表している。
「ドタキャンされちゃって、暇になっちゃったんだよね?お兄さん暇ならお茶しない?」
「今恋人を待っているので。」
「ねえ。そんな事言わないでぇ!彼女さん来るまで暇つぶししてあげるよ?」
あぁ、しつこい。
それに香水の匂いがきつすぎて、頭がくらっとする。
「お姉さん好みじゃないから、ごめんね。」
「なにそれ超失礼!」
なるべく丁寧に断ったつもりだったけど、怒ってどこかへ行ってしまった。
その後小春ちゃんが来る30分間色んな人に声をかけられ続けた。
声をかけられすぎて少し疲れてきていた所に、小春ちゃんがかけよってきてくれた。
時間を確認すると待ち合わせより30分も早く小春ちゃんが来てくれた。
「ごめん!猫宮くん!待ったよね!?」
「ううん、今来たところだよ。楽しみすぎてちょっと早く来ちゃった。」
今日の小春ちゃんもとっても可愛かった。
抱きつきたい衝動を抑えて、ゆるく巻かれた髪を触る。
「小春ちゃんすごく可愛い。僕のためにオシャレしてくれたの?」
「うん……。そうだよ。」
ああぁ、可愛すぎる。全部可愛すぎる。
「ちょっとメイクもしてるね?可愛い……。ワンピースも可愛いし、髪もくるってしてて可愛い。ちょっと高いヒールの靴も全部全部可愛いよ。」
薄くピンクん色づく唇に目が行く。キスしたくなる。
外でスキンシップすると小春ちゃんが恥ずかしがって怒っちゃうから、極力我慢するようにしている。
他の人の視線なんて気にしないでいいのに。
木村くんに教えてもらっていた喫茶店に行って、小春ちゃんとオムライスを食べる。
オムライスを頬張る小春ちゃんが可愛すぎて、にやけてしまうのを抑えるのが大変だった。
「あ、そういえば猫宮くんって誕生日いつなの?」
映画館へ向かう途中、手を繋いで歩いていると小春ちゃんが聞いてきた。
僕の誕生日っていつなんだろう。
いつ生まれたか分からなかったから、小春ちゃんに拾ってもらった日を誕生日にしてたはず。
「誕生日?えーっと、……8月8日?」
「ふふ、なんで疑問なの。てゆうか来月じゃん!お祝いしなきゃだね?」
今年も小春ちゃんにお祝いしてもらえるなんて……。
嬉しくて、涙が出そうになる。
毎年小春ちゃんは僕におやつを買ってきてくれていた。とくに煮干しのおやつが気に入っていた。
煮干しでもいいよって言おうとしたら、小春ちゃんが何か考えて
「私の猫の誕生日と同じだ。」
「そうなの?一緒だね。」
猫の僕はもういないのに、すぐに僕の事を頭に浮かべてくれる小春ちゃんが好き。
僕は嬉しくてたまらなかった。小春ちゃんの中にはいつでも僕がいる。
もしかして気づいてくれたかな?
神様には正体はバラさないで欲しいって言われてたけど、バレてしまうのはしょうがないよね。
「そういえば名前も一緒だよね?」
「うんうん。そうだよ?」
「私の猫も猫宮くんみたいにすごくかっこよかったから、やっぱりレオって名前だとイケメンに育つんだね!」
全然気づいてくれてなかった。
ちょっとだけがっかりして、小さく息を吐く。
まあ、いいんだけど。どっちの僕も好きでいてくれるなら。
映画館へ着いてチケットを買いに行く小春ちゃんに着いて行く。
小春ちゃんが席を選んで、僕が支払いを済ませようとするのを止められた。
「私はこれからも何度もデートしたいから、お互いに負担ないように半分ずつがいいな?」
これからも何回でも僕が払ってもいいのに。神様のお金だし。
神様はいくらでも使っていいって言ってたから、遠慮しなくても大丈夫なんだけど……。
小春ちゃんこういう所頑固な所があるから、大人しく身を引く。
「じゃあ、飲み物ぐらいは僕に任せてよ。これは小春ちゃんが僕のために可愛くしてくれたお礼。」
飲み物代だけじゃ足りないほど、今日の小春ちゃんは可愛すぎた。
お金出して小春ちゃんを買い取って家に閉まっておきたい。
そんな事を考えながら僕は飲み物を買って小春ちゃんに渡す。
「ありがとう。」
「どういたしまして。」
はー、可愛い。
今日見る映画は小春ちゃんが読んでた小説が原作の映画。
僕も前日にしっかり読み込んできた。主人公が1日しか記憶を維持できない女の子に毎日告白するストーリー。
話題のイケメンの俳優や、女優を起用している映画だけど……。
僕は小春ちゃんに視線を移した、ちょうど小春ちゃんも僕を見ていて
「どうしたの?」
「ううん。なんでもないよ。」
なんでもなく僕を見ていたなんて、一生僕だけをその目に映していてほしいな。
どんなに綺麗だって可愛いって言われてる女優でも、小春ちゃんには敵わない。
僕には小春ちゃんが世界で一番可愛いし綺麗だった。
今日の小春ちゃんはすごく可愛い。
僕だけの事を考えてオシャレをしてくれたって事を考えると愛しくてたまらなかった。
今日1日ずっと一緒に過ごせるなんて夢見たいだった。
隣に座る小春ちゃんを眺める。スクリーンの光に照らされて目がキラキラしているように見える。
長いまつ毛や、少し赤くなってるほっぺた。リップで可愛くなってる唇。
少し高めのヒールを履いて大人っぽく見せようとしているのもすごくすごく可愛い。
予告が流れ出すと照明が落とされ、スピーカーから大音量で音声が流れる。
これから本編が始まったら1時間以上、小春ちゃんが隣にいるのに何もできない時間が続くのか。
そう思うと、少しだけ、今のうちに少しだけ触れておこうと思う欲が生まれた。
「ねえ、小春ちゃん。」
「ん?」
わざとすごく小さい声で話しかける。
小春ちゃんは耳をこっちに寄せて聞いてくれる。
「大好き。」
小春ちゃんとの距離が近づいて、ふわっと小春ちゃんのシャンプーのいい匂いがする。
昔から変わらないシャンプーの匂いにほっとする。
「っ、なにっ?」
「なんか、そういう気分になっちゃった。」
大好き。
「手繋いでていい?」
きっとダメって言わないから、返事を聞く前に小春ちゃんの膝に置かれてた手に手を被せて指を絡める。
この小さい柔らかい手が好きなんだよね。
「あの、集中できない……からっ。」
「なんで?」
小春ちゃんの耳元で小さくささやいて、息を吹きかけると、小春ちゃんがびくっとして可愛い。
可愛すぎて食べたくなっちゃって、少しだけ齧った。
痛くないように、小春ちゃんの柔らかい可愛い耳たぶを少しだけ。
少しだけ齧ると指を絡めてる手に力が込められる。
本当はもっと色んな事をしてみたかったけど、これ以上続けると僕が我慢できなくなりそうだった。
「ふふ、ごめんね。もう何もしないから、映画見よっか。」
「うん。」
あー、本当かわいい。
僕は小春ちゃんの赤くなってる頬に唇を落として、小春ちゃんを解放する。
隣にこんな可愛い子がいるのに映画は集中して見れないかもしれない。
そう思ったけど、初めて映画館で見る映画の迫力は凄くて、普通に楽しめてしまった。




