38 僕と夏の始まり
じめじめとした季節が終わり、生徒達の制服も涼しげな物に変わった。
これからの季節の事を考えると頭が痛くなる。
僕は夏が嫌いだった。
「あーっちい。暑すぎる……、こんな日にサッカーとか殺す気かよ。」
「颯太のせいで余計な体力使った。」
隣で颯太がバタバタと体操着の裾を動かす。
今日の体育は外での活動で、チームに分かれてサッカーをした。
軽くやってるフリして終わろうと思っていたのに、颯太のせいでそうもいかなかった。
「まだ6月終わりなのに、この暑さはやばいね。」
「そろそろ外で授業しちゃだめだと思うな。」
「僕もそう思う。」
最近木村くんとはよく話す。
あまり僕に構ってこないし、声も大きくないから話してて楽だった。
クラスの中ではグループが出来つつあった。
運動部は運動部で集まる事が多くて、勉強ができる子や静かな人達同士集まっていて。
中川と野村は2人でいる事が多かったし。
クラスの人間関係を観察するのは意外に楽しかった。
木村くんやたまに颯太と会話をしながら教室へ戻ると、小春ちゃんがポニーテールになってた。
「……僕、ポニーテール好きみたい。」
家でもたまに髪を結んでる事はあったけど、それは昔の事で。
今の高校生になった小春ちゃんがするポニーテールをして、制服を着ている。
しかもスカートも授業前より5センチぐらい短くなっている気がする。
「あぁ、分かるよ。僕もポニーテールにはグッとくる時があるし。」
「俺も分かる、うなじがいいよな。」
「そんな所みてるの颯太。変態だね。」
「犬飼くん僕達はポニーテールの髪型が好きなだけで、うなじは見てないよ。」
「なっ、ちがっ……!」
颯太の顔がみるみる赤くなっていく。
さっきのサッカーの試合では悔しい思いをさせてもらったから、ここで仕返しをしておく。
「だめだよ颯太。小春ちゃんは僕のなんだからそんな目で見ちゃ。」
「だからそんなんじゃねえっ!」
「私がどうしたの?」
自分の名前が聞こえて里奈と話していた小春ちゃんがこっちに来た。
颯太は真っ赤な顔を隠してさっさと自分の席に戻ってしまった。
「ポニーテールも可愛いって話してたんだ。スカートも短くしたね?」
「うん、ちょっと暑くて。変?」
「ううん、可愛い。」
頬を少し赤くして照れる小春ちゃんが可愛くて、次の授業をサボって2人の時間にしたかった。
けれど、ちょうど授業開始のチャイムが鳴ってみんな席に戻る。
「またあとでね。」
小春ちゃんもそう言って席に戻ってしまった。
仕方ないから僕も席について小春ちゃんのポニーテール姿を目に焼き付ける事にした。
颯太の事はバカにしたけど正直うなじが良いって言うのは分かる。
普段見えていないからこその良さがそこにはあった。
ただ他の人のうなじを見てもそう感じなかった。
だから僕は颯太みたいにうなじに特別な思いを持っているわけではなく、
小春ちゃんのうなじだから魅力を感じるだけ。
あまり見つめてるとよくない事を考え初めてしまうので、僕は授業に集中した。




