37 僕の恋人
入学してそれなりに時間が経ったら、部活動に勧誘してくる人達が落ち着いて、
少しだけ静かな時間を送れる日が増えた。
それでも僕を見てキャーキャー言う女子はいるし、そのせいで小春ちゃんが嫌な思いをする。
嫉妬する小春ちゃんは可愛いからいいんだけど、それでも毎日毎日よく飽きもしないなって思う。
この顔で僕を人間にした神様を少し恨んでる。
「猫宮くんが好きです、付き合ってください!」
「ごめんね、僕好きな子いるから。」
そう言うと女の子は泣いて去っていってしまう。
泣かれるとこっちが悪者みたいになるんだけど。
休み時間毎に呼び出されて愛の告白をされる日もある。
無視すればいいんだろうけど、そうすると僕が答えるまで延々と付き纏ってくるからハッキリ断る事にしている。
しかし毎日毎日断ってもキリがない。
それを僕が割となんでも話せる友達、中川と野村に相談することにした。
2人を屋上に呼び出して聞いてみた。
「それは猫宮がフリーだからでしょ。」
「彼女いないなら、自分でも可能性あるかもって思うよね。」
「僕、小春ちゃんがいるんだけど。」
「え、付き合ってんの?」
「付き合うって恋人って事だよね?好きな人間同士がなるやつ。」
僕は放課後に小春ちゃんの思いを聞いた時から付き合っているつもりだったけど。
中川達は僕がまだ片思いしていると思っていたらしい。
「お前がなんかいつもと同じだから、全然気づかなかったわ。」
「猫宮ならもっとこはるんにべったりすると思ってた。」
「あぁ、それは我慢してるからね。」
本当だったら好きって分かった時点で抱きついて、そのまま四六時中一緒に過ごしたい所なんだけど
人間の恋愛を勉強して、それはちゃんと段階を踏まないといけないって事を知った。
「最初からがっついて引かれたら嫌だし。飽きられちゃうかもしれない。」
「まあ、好きな食べもんも毎日食べてたら飽きるしな。」
「えー、ウチは毎日食べられるけど?」
「僕も好きな物は毎日いける。けど、小春ちゃんがそうかは分からないからね。」
2人との会話でなんとなく分かった。
僕に恋人がいるって思われてない事が問題だったんだ。
「でもこのままだと、こはるんもフリーだと思われて狙われるかもじゃね?」
「わかる、男子ってあーいうほんわかしてる子好きなやつ多いからね。犬飼とか絶対好きだよ。」
「颯太はヘタレだから大丈夫。」
「本当?こないだ電車で抱き合ってたとか言う話聞いたけど。」
「はぁ?」
そんな話初めて聞いた。
僕は居ても立っても居られなくて、考える前に行動していた。
教室には小春ちゃんと里奈、そして問題の颯太が一緒に居た。
何人かの女の子が声をかけてきたけど、何も耳に入ってこなかった。
「小春ちゃん。」
「猫宮くん、おかえ、りっ!?ど、どうしたの!?」
僕は座っていた小春ちゃんを後ろから抱きしめた。
そして颯太を見る。
「どうもしないよ。小春ちゃんが好きなだけ。」
「ちょっと、こんな所でやめてよね!こっちが恥ずかしいじゃん!」
「そうだよ猫宮くんどうしたの、なんか変だよ!」
もっと早くこうしておけばよかった。
腕の中に小春ちゃんを閉じ込めている間幸福感が満たされる。
僕だけの小春ちゃんだってこうやって颯太に見せつける事もできる。
「はは、仲良いな。」
口では笑っているけど、顔が全然笑ってない。
「僕と小春ちゃんは恋人同士なんだから、このぐらい普通だよね。」
「え、付き合ってたの?」
「そうなの?」
小春ちゃんにまで聞き返されて僕は思わず腕を離した。
「え、だって小春ちゃんも好きって……。」
「言ったけど、付き合ってとか言われてないし……、それに猫宮くんなんか普通だし。」
変な空気が流れてしまう。
まさか小春ちゃんにも恋人って思われてなかったとは。
人間に言葉があるのは、想いを正確に伝えるためなのかな。
「ごめんね、僕がちゃんと言わないのが悪いね。僕は小春ちゃんが好きだから恋人になりたい。僕の恋人になってくれる?」
「……、私でよかったら。」
少し照れたように笑って答えてくれる小春ちゃんが可愛すぎて、思わず抱きしめた。
その瞬間教室にいたクラスメイト達が沸く。
「うおおお!やったな猫宮!片思いが成就したな!」
「うそ、猫宮くんが……。」
「おめでとう!」
なぜか拍手まで起きる騒ぎに、しっかり学校中に噂は広まって
僕に声をかけてくる人は少なくなった。




