25 僕と輝く世界
僕はまるで雲の上を歩いているかのような気分で帰路についていた。
夕方の空の色がとても綺麗だった。
ゆっくりと街灯が付いていく様子が綺麗だった。
散り始めた桜の花びらが綺麗だった。
世界がキラキラと色付いて輝いている。
僕は今とても幸せだった。
まだ結婚の目的は果たしていない。けれど、幸せだ。
先ほど作ったラッピングされたカップケーキを見て頬が緩む。
さっき廊下で小春ちゃんにどこが好きか聞かれて、答えた。
本当はまだまだ好きな所はいっぱいあった。
ブラッシングしてくれる所が好き、頭を撫でてくれる所が好き。
一緒に寝る時に僕をつぶれないように優しく抱きしめる所も好き。
朝起きた時の寝ぼけた所も可愛くて好きだ。
もう全部言ってしまいたかった。
小春ちゃんに触れて、幸せだった。
またあの手で撫でてもらいたい。
あぁ、まだ結婚してないのに、こんなに幸せな気分になれるなんて。
僕、結婚したら幸せすぎて死んじゃうかもしれない。
帰宅して真っ先に神様に伝える。
「僕を生き返らせてくれて、人間にしてくれてありがとう。」
「どうしたの?随分機嫌がいいね?」
神様はいつものようにリビングのソファでコーヒーを飲みながら読書をしていた。
夕飯の支度は出来ていて、僕の帰りを待っていた様子だった。
僕は神様に今日持って帰ってきたカップケーキを渡す。
「これ、僕と小春ちゃんの初めての共同作業。神様にあげるよ。」
「……ふふ、その言い方他所でしちゃだめだよ?」
神様は笑いながらカップケーキを受け取ってくれた。
「ご飯にするから、手を洗って着替えておいで。」
「うん、分かった。」
僕は手を洗って着替えてリビングへ。
もうすでに夕食は用意されていた。
「今日は楽しかったかい?」
「すごく楽しかったよ。」
神様と何気ない会話をしながら食事をする。
「神様は昔人間だった?」
「そうだよ。」
「どうして神様になったの?」
「神様に恋をしたから。」
どういう事?って聞き返そうとしたけど、
その話をしている神様が悲しそうな顔をしていたからそれ以上聞くのをやめて、今日の事を話した。
「どうしたら、小春ちゃんともっと仲良くなれるかな。」
「猫の時間と違って、人間の時間はとても長いんだ。焦る気持ちはわかるけど、そこは人間に合わせて焦らずゆっくり関係を築いていく事をおすすめするよ。」
思えば少しだけ焦っていたかもしれない。
ただ小春ちゃんを前にして落ち着くは至難の業だった。
今でさえ早く甘えたくて仕方ないのに。
僕はふう息を吐いて、心を落ち着かせる。
「大丈夫。そのうちもっと仲良くなれるよ。今はその課程を楽しむ時間だと思って。」
「わかった。」
食事も終わり食器を片付け僕は部屋に戻る。
今日の授業で出された課題を終わらせて、本棚から本を1冊選ぶ。
人間になって文字を読めるようになって、
僕は本を読むのにハマっている。
1冊の本を読み終わるまでには、1人の人生を経験した気分になれる。
小春ちゃんが本を読んでいた時は、よく本と小春ちゃんの間に入って邪魔をしたのを思い出した。
その度小春ちゃんは困ったように笑って、僕を抱えたまま本を読めるように体勢を変えてくれていた。
小春ちゃんも本を読むのが好きだったはず。
今度図書室でゆっくり過ごすのもいいかもしれない。
僕は未来の予定に胸をときめかせ、本のページをめくった。




