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第78話

「今の楽しい記憶も思い出もいつかは全部なくなっちゃうのかな？」そんなことをそらは言った。

「なくなったりしないよ。きっと」と僕は言った。するとそらは「本当に？」と僕の顔を覗き込むようにして言った。

「うん。本当」と僕は言った。するとそらは安心した顔をして「よかった」と僕に言った。

　そらはぎゅと僕の手を握った。

　それはよくあることだった。　

　そらは一人になることをとても、本当にとても恐れていた。「孤独は嫌い」とよく言っていた。「私たちは離れ離れにならないよね？　家族なんだからさ」とそらは言った。「離れ離れにならない」と僕はそらに言った。でもそれはそらを安心させるための嘘だった。僕たちはずっと一緒にはいられない。そんな予感があった。このときから確かに僕は感じていた。

　つないでいるそらの手はあったかいのに。機械のように冷たくはなかったのに。僕はそう感じていたんだ。