第62話
「あ、のぞみさん。待って、のはらさんを探すなら私も一緒に探してあげる」
と言ってさなぎはのぞみさんのいるところまで走っていこうとした。
でも、いくら走っても、不思議なことにのぞみさんとさなぎの間にある距離は全然近くならなかった。
いくら走っても、(ゆっくりと歩いている)のぞみさんのいるところにまで、さなぎはたどり着くことができなかった。
「のはら、のはら!! どこ!! どこにいるのー!!」
のぞみさんは必死に声を出してのはらを探している。
でも、のはらの姿はどこにもない。
すると、少ししてのぞみさんはその場に座り込んで、そこで静かにその綺麗な瞳から、涙を流し始めた。
のぞみさんは泣き始めてしまった。
それからのぞみさんは、まるで小さな子供のように(あるいはさなぎみたいに)がむしゃらになって、泣き始めた。
「のはら、のはら、どこ? どこにいるの?」
と泣きながらのぞみさんは言った。
さなぎはそんな泣いているのぞみさんを見て、「のぞみさん、泣かないで!! 私が絶対にのはらさんのことを見つけてみせるから、お願いだから、そんなに泣かないで!! そんな悲しそうな顔をしないで!!」と叫んだ。
いつの間にかさなぎは泣いていた。
そして、目を開けると、そこはいつもの木登家の寝室の中だった。
ベットの横にはみらいお姉ちゃんが優しい顔をして眠っている。
さなぎはベットの中で自分の頬を触ってみる。
するとそこには涙のあとがあった。
眠りながら、のぞみさんの夢を見ながら、さなぎは泣いていたのだ。
……とても悲しい夢だったな。
どうして、あんなに悲しい夢を見たんだろう?
ベットの中でぼんやりとしながら、自分の頬を触っているさなぎはそんなことを考えていた。




