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第6話

 それから二人(と妖精さん)は手を繋いだままのはらの家のお花畑の中を歩いて、(人の歩ける細い道があった)すぐ近くにあるというのはらの家まで歩いていった。

 その間、歩きながらさなぎはずっととても綺麗な色とりどりのお花畑の風景を眺めていた。(最初はのはらと手をつないで歩くことがすごく恥ずかしかったのだけど、綺麗なお花畑の風景を見ていたら、そのことは途中からあまり気にならなくなった)

 のはらはそんなさなぎを見て、嬉しそうな(少しだけ自慢げな)満足そうな顔をしていた。

 妖精さんも、ずっとさなぎの頭の後ろに隠れながら、そんな綺麗なお花畑の風景を眺めているようだった。

『綺麗ですね』と(のはらに聞こえないような小さな声で)妖精さんはいった。

「本当だね」と(やっぱりのはらに聞こえないように、とても小さな声で)さなぎは言った。


 のはらは白いTシャツに短い青色のハーフパンツを履いている。(さっき見たように、足にはひまわりの絵柄の入ったサンダルを履いている)

 健康的な美しい長い黒髪が吹く風の中で緩やかに動いていた。

 さなぎは白いTシャツに桃色のスカート。頭には麦わら帽子をかぶっていて、その手には虫取り網を持っていた。

 髪はいつものように(お姉ちゃんにお願いして)ポニーテールにしている。(赤色のリボンでしばってある)

 その肩には(お出かけ用の)肩掛け鞄をかけている。(虫取り用の小さな木のかごも、その鞄の横に同じように肩にかけて持っていた)

 足元は白いスニーカー。

 空には明るい輝く太陽がある。

 二人は歩いているだけで、その身体中に小さく汗をかいていた。

「夏だね」とのはらはいう。

「はい。夏です」とにっこりと笑って(のはらを見ながら)さなぎは言った。(そんな素直なさなぎを見て、のはらは楽しそうな顔をして、さなぎと同じように、にっこりと笑った)

 ずっと気にはなっていたのだけど、どうやらのはらにも妖精さんの姿は目に見えて(妖精さんがそのことを確かめるような大胆な行動をときどきしていた。そんな妖精さんを見て、さなぎはすごくはらはらした気持ちになった)いないようだった。(その声も、どうやら聞こえていないようだった)

 そのことに安心するのと同時にさなぎは、少しだけ(もしかしたら、すごくかもしれない)寂しい気持ちを感じた。

 妖精さんも途中でそのことについて確信したのか、こそこそとさなぎの頭の後ろに隠れるのをやめて、今はいつものようにさなぎの(麦わら帽子の)頭の上にちょこんと乗っかるようにしている。

 そんな妖精さんの姿は季節外れの雪玉のようにも、あるいはそれは麦わら帽子についた(やっぱり季節外れの)大きな綿毛のようにも見える。

『ふう。それにしても暑いですね。どこか涼しいところに行きたいです』と妖精さんはいう。

 そう言いながら、妖精さんは遠くにある緑の木々が作り出す小さな木陰をぼんやりと眺めていた。

 夏に吹く風がとても気持ちいい。

 汗をかきながら、そんなことをさなぎは思った。

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