第30話
「初めまして。木登みらいと言います。年齢は十二歳。小学校六年生です。妹がお世話になりました」とみらいは言いながら、のはらの手をそっと握った。
「こちらこそ。よろしくお願いします。みらい先輩」のはらはいう。
「じゃあ、私たちは帰りましょうか? また近いうちに、今度はさなぎちゃんとみらいちゃんのお父さまがいらっしゃるときに、正式にご挨拶に伺いますね」とのぞみさんは言った。
「それじゃあ、さなぎちゃん。みらいさん。またあとでね」とのはらはいう。
「はい。送っていただいてありがとうごあいました。のぞみさん。のはらさん」と言ってさなぎは二人に頭を下げた。
それからのぞみさんとのはらは森の中に消えるようにして、さなぎとみらいの前からいなくなった。
二人の姿が見えなくなると、「さなぎ。どこまで遊びに行ってるのよ。幸いなことにのぞみさんやのはらと会えたからいいけど、迷子になっている可能性もすごくあったよ。あんまり心配かけるのはやめて」
さなぎの顔を正面からじっと見つめるようにして、みらいお姉ちゃんは言った。
「ごめんさない。みらいお姉ちゃん」
そう言ってさなぎは素直にみらいお姉ちゃんにあやまった。
さなぎとしては一人じゃなくて、妖精さんも一緒だから大丈夫、と言いたいところだったけど、みらいお姉ちゃんには妖精さんの姿は見えないので、そのことはもちろん、言わないままにしておくことにした。
「さなぎ。あののはらって子と友達になったの?」とみらいは言った。
(きっとみらいはある程度、今日会ったことを電話でのぞみさんから聞いているのだろうと思った)
「うん。友達になった」とさなぎは言った。
するとそんなさなぎの言葉と嬉しそうな笑顔を見て、みらいは優しい顔で微笑むと、「よかった。今度はちゃんと私にも見えるお友達だった」とさなぎに言った。




