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2話 仕事帰りの絶品料理

※1G=1円と考えて頂ければ。




 巨大ホールに吊るされた特大シャンデリア。

 そこでは、1つ1つが数万G(ゴールド)するであろう灯の花(電球)が、堂々と肩を並べて自己主張していた。


 全部が全部すごい主張で、たった1つでも財を誇れるインテリアだと言うのに、それが無数にある……という事が、この場の雰囲気をより高貴なものへとかき上げている。


 恐らく、庶民がこの光景を見たなら、『帰り際にせめて1つ貴重品が盗めないものか……』と悪事を考えること間違いないだろう。


 ……まぁ実際、初めて俺がここへ来たときはそう思ったしな。



 ここはレグルス王城の中層部にある宴の間。

 その名の通り、高貴な貴族たちのお祝い事や新しい貴族を招く勲章式を開くような、おめでたい行事の際に使われる巨大パーティホールだ。



 そんな宴の間のシャンデリアが光を放っているという事は、勿論おめでたいパーティが開かれている訳で。



 今日は国のあらゆる地方から、貴族や国軍のお偉い人がこの会場へと駆け寄っていた。




 ――と、ここで。


 この(うたげ)の主催者が大きく口を開く。


 この国の王。ガーディアン=レグルスその人が。



「人魔戦争が絶えない中よくここまで来てくれた。感謝する。さて、そんな前置きは良いとして。この国は代々続く歴史の長い国だ。それも、今日で誕生から八百年になる。せめて1週間ぐらい、辛い日々を忘れ、楽しもうじゃないか。レグルス王国に幸あれ!」


「「「王国に幸あれ!」」」


 そう言うと国王は、黒い口髭に黒い目つきをした勇ましい雰囲気を床へトロンッと溶かし、40代後半のプンプン匂う加齢臭を表全開にしながらワイングラスを大きく掲げた。



 どうやらこれが、レグルス王国生誕800年祭、宴開幕の合図らしい。







 美しいワルツの音色。

 それに合わせて踊る美しいドレスと貴族服の若者たち。

 その様子を見ながら笑い、話し合い、おいしい料理へ手をかけるその親たち。


 貴族の宴というのはどうも慣れない。


 昔からの古いしきたりに則ったステップに礼儀作法。

 武人である自分に合わないのは必然というべきか。


 これが1週間続くのか。

 貴族が100人前後、軍人が20人弱呼ばれているらしいが、恐らく俺以外の軍人も憂鬱なんだろうな。



「全く……。ねぇリド。国王様は、国の勇者を殺した重罪人が脱走しているにも関わらず、のんきなことだと思わない?」


 そんなことを考えていると、踊る人の中から、()()にルビーのような瞳をした、可愛らしい少女がこちらへ歩いてきた。


「そんなこと言うなよアリシア。まだ国に脱獄が気づかれていないだけでも、十分ありがたいことだと思うぞ?」


 黒と赤が混ざった、少し大人びたセクシーなドレスを着るアリシア(同年の少女)

 うん。やっぱりアリだな。


「いやいやリド!まだ気づかれてないって言われても……あれはかれこれ1か月ほど前の出来事だよ?一体どんな警備をしてたらここまで気づかないよ!無いわー」

「まっまぁ…。アリシア、ここは高貴な場所だから、取り合えず笑みを忘れずにな?」

「……はいはい分かってるって」

「それにしても、あれだな。アレだ。黒髪も似合ってるな」

「……何?何々?テレてんの?言ってる側が言われてる側より恥ずかしがってんの??」

「そうだよ悪いかよ!」

「あらあらかわいい子ねー。自分で『万が一アリシアが脱走していることがバレてたら白髪はマズいだろうから、黒髪に染めておけ』とか言ってた癖に」

「……はぁ。人が元気づけようとしてあげたっつーのに」


 全く。なんでこんなに面倒くさくて()()()()()アリシアと宴に行かなきゃダメなんだ?

 ただでさえ、貴族とつるむのが苦手だっていうのに。




   ☆1週間前☆




 青から夕焼けに染まる空の下。


 

 部下の稽古に最後まで付き合わされた俺は、家までの帰路の道半ば、美味そうな匂いに体を引きずられて帰宅した。



 そして、遂にたどり着いたのだ!

 世界の理、大昔の秘宝、最強の魔法、その全てを優に凌駕する究極の料理のもとへ。



 玄関を開けた先。


 そこには、美味しそうなクリームシチュー鍋を持った、とても怖い顔でこちらを睨みつけてくるアリシアが立っていた。


 アリシアと生活して3週間。ここ最近で分かったことがある。

 彼女の料理は絶品だ。

 何やら母親から花嫁修業として、6歳の時から捕らえられる14歳まで料理を教わっていたらしい。


 しかしそれだけなら、最強の魔法をかき消すほどの究極な料理を作れる訳がない。



 その答えは、彼女が侯爵家の令嬢というところにあった。


 アリシアは侯爵家の令嬢のため、世界各国の有名シェフを雇うことが多かったとのこと。

 そして、母だけではなく、その料理人にも料理を教えてもらっていたのだ。


 おまけに彼女の知能がここで役に立つ。

 なんと。

 すべての料理を完全に記憶し、その知識量を生かしてよく食卓に並ぶ食材を使い、すべての料理に新しいアレンジを加えることが、アリシアには可能なのだそう。

 まさに料理の王とは彼女のためにある言葉だな。



 しかしだ。


 その彼女の顔は今、いつもと違い少し怒っているように見られる。


 まぁその顔も、鋭い目つきが半分ジト目になっていて可愛いのだが。




   ☆数分後☆




 アリシアはいつも通り、仕事から帰ってきた俺のコートを取り、さぁさぁこちらと言わんばかりに食卓へ案内した。


 今までと違う所をしいて挙げるなら、いつもの穏やかで幸せそうな顔とは違い、カワ怖い顔という事だろうか。



 それにしてもアリシアは、博識で勤勉で美人で天才で料理も出来る。

 よくよく考えると、自分ってひょっとして、最高の女を独り占めしているのでは!?



 ――だなんて浮かれていましたよ!さっきまでは。



「……アリシア、そのエプロン似合ってるよな」

「当然だけど?」

「……そのシチュー、おいしそうだな」

「当たり前だけど」


 この女、ぜんっぜん可愛くない!


 なんなんだよこれは。

 そりゃ、料理姿が似合うこともシチューが絶品であることも自分で分かってると思うよ?

 何せ世界一の美少女と言われていたほどだし、世界各国の有名シェフに料理を教わってきたのだ。

 自信だってつくさ。普通は。



 けれどもさ?違うじゃん。

 全国の男性が求めてるのはそんなことじゃないってわかるじゃん?


 それにこちとらな!

 『悪役令嬢が俺にだけ甘すぎる』ってタイトルなんだぞ!?(※メタい)

 何が甘いんだよ!俺多分嫌われてるし!なんか言い方きついし!


 まぁ……それはそれでちょっとアリかな。グヘへッ…!



 ――ビシッ!――



 自分の中に眠るドM気質を呼び覚ましていると、アリシアが大きく机へ手を振り下ろし、何やら紙らしき物を俺へ差し出してきた。


「これ、王都便で昼過ぎにハトが届けてくれたんだけど」

「ほう?王城から直通の手紙ですかな」


 内容は、簡潔に言うとこんな感じ。


 1週間後、王国誕生800年祭を開くため、それまでは有給休暇を与える。

 宴の期間は7日間。王城を毎日開き、一般国民でも楽しめるよう配慮する。

 貴族などは王城の中層にある宴の間にて、舞踏会を開く。

 男なら女を、女なら男のパートナーを1名連れてくること。(男女比を整えるため)

 その場に適した服装で臨むこと。



「うわっ……貴族の社交パーティかよ。俺こういうの苦手なんだよな…」

「リド。そんなことは今は関係ない」

「はい。」

「問題なのはパートナーを1名連れてくるってところ」


 そう言いながら文章に向かい指をさすと、アリシアは大変不服そうな笑みを浮かべた。


 ちょっと?全く可愛くないぞー?

 過度なストレスは、あまりお肌によろしくありません事よ?


「アリシア?1人誰か連れてくことの何処に問題が?」

「お昼過ぎから、30分に1回のペースで知らない女が『リドカール様いますか?』って尋ねてくるんだけど」

「まぁそりゃ、未婚で16歳の最高幹部とか言ったら、玉の輿に乗りたいどこぞの人らが駆けてくるわな。ここは貴族街でもなければ一般の市街だし」


 するとアリシアが更にムスッとした表情になる。


「ははーん…。さてはアリシア、俺のパートナーとして一緒に舞踏会に行きたいんだな?全くもうツンデレさんだ――

「そんな訳ないでしょ?」

「はい。ですよね」

「私以外があなたのパートナーになる。すると貴方とその人が仲良くなる。そうなると貴方とパートナーが一緒に暮らすことになるから、私の居場所がなくなっちゃうの!」

「……別に、それは深く考えすぎでは…?」

「そんなことない!折角、働く必要もなければ貴族らしくしなくていい堕落した生活を手に入れられたと思ったのに…(※小声)」

「おい聞こえてるぞー」



 もしかして、世界一の美少女の性格がおかしなほうに向いてるのって、外に出させてない俺のせい?




「それにしても、やっぱりアリシアのシチューは最高だな」

「でしょ?でも、私がここにきてからもう5回目だよ?違う料理のオーダーはないの?」

「今のところはないな」

「どんだけのシチュー好きよ」


 まあ、母さんが最後に作ってくれた料理がシチューだったからな。

 俺にとっては思い出の品になってる訳で、母さんとの思い出が強いから好きなのかもしれない。


「あ!それ私が食べようと思ったパンなんだけど!なんでとっちゃったの?もうないじゃん!」


 アリシアのこういった強気なところを見ると、甘くてお淑やかなお嬢様じゃなくて良かったとふと思ってしまう。先ほどのメタ発言とは矛盾してしまうが。

 自分が今思っていること、伝えたいことを素直に言ってくれるから、こちらとしても対応しやすい部分があるしな。


「ねぇ!このパンはさっき家に来た知らない女がくれたやつなの!もう1個もないの!」


 それに、一緒にいて気楽なのは、間違いなく素直で強気な女子だしな。


 まぁ最も。

 可愛ければ、よほどのゲスでない限り全ての性格が守備範囲内なのだが。


「今すぐ街に行ってこのパン探してきて!」




   ☆1時間後☆




 すっかり暗くなりほとんどの市が閉じている中、俺はようやく1つ5000Gで分けてもらえたパンを持ちながら、ふと呟くのだった。


 ……


「やっぱり、もう少し優しい性格のほうがよかったな。」




さーて誰が待ち望んでいたでしょうか?

まさか1話が投稿されてから1か月以上空いて2話が投稿されるなんて、誰も思わないわな!

うん。自分も思わなかった。


別に書く気が無かったとかそういう訳ではないんですけど、時間がね。

時間がなかった訳ですよ!(※言い訳乙)


まあ、流石に3話はこんなに期間空かせませんよ!

出来れば毎日投稿……いや、無理な約束は止そう。


まあできる限り頑張ってみます!


それと。

『思ってた作品と雰囲気が違くて詰まらない!』

『文章力なさ過ぎて読みずらい!』

という人は、話の区切り関係なしに、

コメントでどういう風にして欲しいか是非教えてください!

参考にします!

まあ、文章力に限っては長い年月しか良くしてくれないかもだけど。


ご精読、有難う御座いました!!

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