プロローグ5 200年
デスゲーム開始から200年後、ワシはとうとうやり遂げたのじゃ。
髪はもう一本も残っておらず、体も枯れ枝のように痩せ細っている。
心臓の鼓動も少しづつ弱くなり、エーテル量も全盛期の最早、100分の1。
寿命が尽きるまでそう遠くないと覚悟しておった時にそれは現れたんじゃ。
『デスゲーム一万回クリア特典*異界の門*』
一万回目というだけあって過去最強の敵を倒したワシの目の前に現れたのが、そんな文字が書かれた観音開きの門じゃった。
しかし、クリア特典と言われてもワシにはピンと来んかった。
最早何故ワシがここにいて、何の為に戦っていたのか、そんな理由はとうの昔に忘れてしもうた。
強者と戦う事は最早日常。
歯を磨いたり、飯を食うのと同じ事じゃ。
と言っても今のワシには歯など一本も残っておらんがのぉ。ホッホッホッ。
そんなワシの寿命が差し迫る中、一万回目の敵を倒せたのはひとえに、経験と卓越したエーテル操作技術、そして極めに極めた返極のお陰に違いない。
今ならば、はっきり言える。
今のワシこそ、今までで最強。
体は衰えても、培った山の如き、黄金の精神とエーテル技術で何者にも勝利を掴める事が出来るのじゃ。
じゃが、一万回達成のクリア特典……それが意味する事はもうこのデスゲームが終わってしまったという事。
つまり心踊る戦いはもう終わりという事じゃ。
200年……長かった。
じゃがそれと同じくらい楽しかったのぉ。
最初は、はて……もう昔の事も思い出せんくなってきたわい。
ワシの寿命もそろそろ尽きる。
よし……この門を潜る事で全てのケリをつけようとするかの……。
ワシは扉を開け、闇色に染まる不気味な空間の中へと踏み込んだ。
ここに、デスゲームは終結する。
デスゲーム『生と死の狭間』を一万回生き抜いた史上初の人間、明石 徳次郎は『達成者』となり、異界の門を潜った。
世界最強の人間は異世界へと旅立つ……筈だった。
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