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最終話 旅立ち


 あれから一週間が経った。

 ベルレフィリア王国宮殿に魔王軍幹部が現れ、勇者王カゲトラが倒れたというニュースは瞬く間に広がり、一時はパニックに陥った。


 しかし、勇者王カゲトラが奇跡的に無事であった事と、勇者選抜試験を合格した受験生が魔王軍幹部を撃退した事も同時に伝わり、国民達は胸を撫で下ろした。


 だが、勇者王ですら倒す事が出来なかった魔王軍幹部を倒した今年の合格者とは一体誰なのか、皆がその事実を知りたがった。

 しかし、詳しい真相は秘密裏のままだ。

 だが人の噂話は止められない。


 今年、勇者選抜試験に合格した10歳程の少年と少女が幹部を撃退したのだと実しやかに広まっていた。


「メルル、いくよ」

「うん」


 ピケはメルルと共に冒険者組合の前にいた。

 勇者になる事で優遇される事に、冒険者組合の依頼はランクに関係なく、全て受ける事が出来るというものがある。

 

 その優遇措置があれば、ピケ一人だけでも依頼を受ける事が出来るようになったのだ。


 しかし、ピケはもう一人ではない。

 横には珍しげに冒険者組合の建物を見上げるメルルがいる。


 そう、ピケは正式にメルルとパーティを組んだ。

 たった二人だけのパーティではあるが。

 

 ピケは本格的に魔王討伐へと赴く準備に入ったのだ。

 先日のエキドナとの戦いでピケは思い知ったのだった。

 エキドナは予想の何十倍も強く、メルルもまたその上を行っていた。


 その差が一体どれほどあるのか、ピケには検討もつかない。

 しかし、一歩でもメルルに追いつく為に、ピケは改めてメルルに強くしてくれと頼んだ。


 メルルはピケの提案を快く受け入れ、こうしてパーティを組む事になったのだ。


 地獄だった修行が前にも増して厳しくなってしまったのはご愛嬌だが、たった一週間でもピケは以前よりもまた強くなったと自信を持って言える。


 ピケはふと自分の胸に目を遣る。


 そこにはキラリと光り輝く、勇者ピケと書かれた勇者の証のプレートがあった。


 視線を戻し、ピケは感慨深い思いのまま、冒険者組合の門を開ける。


「あ、あれは!?」


 ピケとメルルを見つけた誰かが声をあげる。


 そして冒険者組合職員も目を見開いてピケ達を見ていた。


 「間違いない! 二人とも今年合格した勇者だ。それにあの外見! 魔王軍幹部を撃退したって言う二人組だ!」


 一転して冒険者組合が騒がしくなる。


(……僕は見てただけなのに、何故か僕もメルルと一緒に撃退した事になってる……)


 ピケは呆れるように、周囲の反応を見ながらまっすぐ依頼が張り出されている掲示板へと進む。


 そう、あの時メルルはエキドナを見逃した。

 おそらくトドメを刺せたであろうあのタイミングで、わざとメルルはトドメを刺さなかった。


 その後すぐにエキドナは忽然と宮殿から姿を消したのである。


 エキドナは最後、何やら決意を決めたような瞳をしていたようにピケは思った。


 メルルはピケがいずれエキドナを倒すと信じてわざと見逃したのだ。


 その思いに報いる為にもピケは、まずは何にでも挑戦だと思い直し、掲示板に貼られていた依頼を一枚取った。


「よう、あんさんらも依頼を受けに来たんか?」


 声をかけられ、ピケは横を向く。

 そこにはカクータが立っていた。

 カクータの胸にも勇者の証がキラリと輝いている。


「カクータ! うん、そうなんだ。って、あれ? 他のメンバーは?」


 ピケは思わず疑問の声をあげた。

 カクータの周りにはいつも取り巻きがいたが、今日に限っては一人だったのだ。

 カクータが苦笑いしながらポロリと溢す。


「ああ、それなぁ。ワイ、ちょっと一人でやり直そうって思ってん。ワイは弱い。それがあの試験を通してよぉく分かってん。やからしばらくはソロ活動やな」


 頭を掻きながら笑うカクータを見て、ピケは感動する。


 どうやらメルルと出会った事で変わった人間は自分だけではないと気付いた。


 知らない間にカクータもまた成長していたのだった。


「ほんでメルル様、このワイを見捨てず勇者にして下さり、ほんまに感謝しとります!」

 

 カクータはメルルに頭を下げた。

 その言葉に多少の畏怖が混ざっているのは、エキドナとの戦いを見たからだろう。

 その気持ちはよく分かる、とピケは思った。


「うん、あんたも頑張りな。すぐ強くなれるさ」


「ありがとうございます! では行ってきます!」


 そう言うとカクータは一人元気よく走り去っていった。


 ピケは心の中で、頑張れと応援しながら、依頼の貼り紙を持って受付へと進む。


 そして意を決してドンッ! と張り紙を冒険者組合の受付嬢へと叩きつけた。

 その依頼は奇しくも、かつてレベルが低いソロだからという理由で断られた時と同じ内容の依頼だった。


 しかし今は勇者の証を持ち、横には何よりピケが信頼する仲間、メルルがいる。


 ふとピケは横にいるメルルを見た。


 メルルの胸にも、勇者の証のプレートが納められ、光り輝いている。


 メルルはピケと目が合うと、柔らかく微笑んだ。


 その端正な顔つきに思わずピケは顔が紅くなってしまう。


 思えばメルルと出会った事が全ての始まりだった。


 あの時ゴミ捨て場でメルルを見つけた時からピケの人生は大きく変わったのだ。


 ピケはメルルとの出会いを心から神に感謝して言った。


「勇者ピケ! この依頼を受けます!」


 ピケの気合いの入った声が冒険者組合中に響いた。




次回作!!!


「魔王軍を追い出された俺、実は邪神でした。俺が抜けたら魔王の加護全部無くなるけど、今更気付いたってもう遅い。

会社作って資本主義で世界征服するわ」


最後までこの小説を読んで下さり、有り難うございました!

予想以上の多くの方のブックマーク、評価を頂き、本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。

中にはレビューまで書いてくださる読者様もいて、感動致しました。

本当に皆様、有り難う御座いました。

実は、本作品の最終話と同時に冒頭に書きました新作も投稿致しました!

そちらも毎日更新を目指して投稿致しますので、皆様どうかブックマーク、評価頂ければ幸いです。

今後とも引き続きお願いします!


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