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第33話 カクータ


 クマゴロウのスタートの合図に皆が散り散りになって駆け出した。

 皆一斉に固まるよりも、散り散りになった方がカゲトラから逃げやすくなると考えての行動だろうとピケは考えた。


 どうやら皆の思いは一つらしい。

 今回は前回のようなサバイバル戦ではなく、敵がたった一人のチーム戦。

 

 味方との連携こそがこの試験の肝だと気付いているのだろう。

 流石は最終試験まで残った強者達。

 ピケは心強い仲間の存在に思わず気合いが入った。



 フィールド内を駆ける事、数分。

 ピケはこのフィールドをしばらく走る事で、気付いた事があった。

 

 このどこまでも続いているように見える大地ではあるが、端から端までは以外と距離はない。

 フィールドの端に行くと見えない壁に遮られて、これ以上前に進めなくなるのだ。

 

 これでは慎重に行動しなければ、いつしか見えない壁にぶつかり、カゲトラに容易く追いつかれてしまうだろう。

 この壁のおかげでカゲトラから永遠に逃げ続けるという選択肢は無くなった。

 

 まだどこかに隠れていた方が生き残る確率は上がるだろう。

 そしてフィールドに4つあるという門。

 意外と簡単に見つかった。

 

 というのも、しばらく走っている間に既に1つを見つける事ができたからだ。

 すぐに門を開けなかったのはカゲトラから見つかりにくくするためだ。

 カゲトラはまず受験生が固まっているスタート地点に向かう可能性が極めて高い。


 だからスタート地点付近で門を開くと、カゲトラに遭遇する危険が高まるのだ。

 だから敢えてピケは見つからないように出来るだけ遠くに走ってきたという訳だ。


「よし……見つけた」

 

 ピケは立ち止まってゆっくりと門に近づいていく。

 門は高さ2m程の木製の重厚な居住まいで、門の部分のみが地面から直立している。


 一周回って確認すると、裏から見てもただの門なので、どっちが表か裏なのか分からない。

 ただ門の部分だけが地面から生えている姿を見て、奇妙な感覚に陥った。

 

 門のタイプは二つの扉が合わさった観音開きのタイプで、押すか引くかする事で開く事が出来そうだ。

 早速ピケは門の取っ手部分を掴み、引っ張ってみる。


「ぐっ……うおぉ……」


 ギ……ギギ……。

 予想外の重さに仕切り直して、ピケはおもいきり力を込めると、門は古めかしい木々の擦れる音を響かせながらゆっくりと開く。


「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」


 だがピケは荒い息を吐きながら、思わず門から手を離してしまう。


「……思った以上に重たい。完全に開くのに、5分くらいはかかりそうだ。こりゃ門を見つけるよりも開ける方が大変だぞ……」


 門を開く時は、門に意識が集中してしまい、どうしても周囲への警戒が疎かになってしまう。

 この時にカゲトラに見つかってしまえば、ひとたまりもないだろう。


 しかし門が4つ開かなければ、ここから脱出する事が出来ない。

 ピケはこのゲームが単純そうに見えて、なかなか奥が深い事に気付いた。

 額から流れる汗を拭い、パンパンと頬を叩いて気合を入れ直す。


「よしっ! ここはスタート地点から結構離れているから、まだ安全なはず! メルルは自分が門を開けるって言ってたけど、今がチャンスなんだ。一気に開けてやる!」


 ピケの決断は早かった。すぐ将門の取っ手を掴み、力いっぱいに引っ張る。


「うぉ……おお!」

 

 ギギギ……。

 ピケの気合の雄叫びに合わせて、ゆっくりと将門が開きだす。

 

 すると、微かに開きだした門の中へと吸い寄せられるように空気が吸い込まれていく。

 その光景はまるで水を入れた風船に穴が開き、外へ水が漏れ出ていくような不思議な光景だった。


 開きかけた扉の中を覗き見るが、そこにはただ真っ暗な闇が広がっているだけで、何も見えない。

 いったいこの扉がどこへ繋がっているのか、皆目見当もつかないが、この門の向こう側に行くと、何かよくない事が起こる予感だけが全身を駆け巡った。


「く……まだまだか……!」


 ゆっくりとだが確実に開き出した門の扉に両手を掛け、気合を入れ直して一気に力を込めようとしたその瞬間だった。


「ワイも手伝うたる」


 そう言って現れたのは、なんとピケを冒険者パーティから追い出した張本人、カクータだった。

 カクータはピケとは反対側の扉を手に掛け、門を開け始めたのだ。


「カクータ! どうしてここに……!」


 ピケは思わず呆然と見てしまう。

 カクータといえば、ピケを馬鹿にするのが生き甲斐のような捻くれた性格をした男だ。

 

 レベルが低いという理由でピケを追い出し、事ある毎に嫌がらせをしてくるピケの苦手な人物。


 そんな男がピケを手伝う。

 ピケが色々考えてしまうのも無理はない事だった。


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