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第29話 エキドナ


 ピケは見覚えのある美女のいきなりの登場に、心臓が飛び出そうになるほど驚いていた。


 目の前に立つこの美女は忘れもしない、試験が始まる前の広場でいきなり声をかけてきた人物だ。


 ピケはすかさず鑑定を使い、目の前の美女を見た。


名前:エキドナ

クラス:グレーターウォリアー

クラススキル:プレリュード

Lv:40

EP:6,345


(エキドナ……っていうのか! やっぱりこの人、めちゃくちゃ強い!?)


 ピケはあまりのステータスにジリジリと後ずさる。

 ピケの本能が逃げろ、と激しく警告していた。


 美女、いやエキドナは妖艶な笑みを浮かべ、黒い絹のような艶のある黒髪を揺らしながらピケをじっと見ていた。


(だめだ……! 絶対に勝てなっ)

 

 ピケは後ろを向いて、駆け出そうとした、その瞬間だった。


 一瞬の内にエキドナの姿が描き消えたと思った瞬間に、ピケは地面に大の字で横たわっていた。


「はぐぁっ!?」


 ピケは肺が潰されるような衝撃に意識が飛びそうになる。


 ピケはエキドナに一瞬の内に首を掴まれ、そのまま地面に叩きつけられたのだ。


 ピケは凄まじい力で首を掴むエキドナを睨みつける事しか出来ない。


 エキドナはそんなピケを笑って見下ろしていた。


「だめよぉ、勝手に逃げ出そうとしたら……それに、前にも言ったわよね? レディーにいきなり鑑定を使うのは感心しないわぁ」


 エキドナはその言葉の直後、体の中からエーテルを噴出させた。


 それは前にも感じた以上のドス黒いエーテルだった。

 

 エキドナがエーテルを噴出させた瞬間に鳥が飛び立ち、バスターウルフの遠吠えが聞こえてくる。

 あまりの禍々しいエーテルに、あのバスターウルフですら怯えているのだと、ピケは直感した。


 あまりの苦しさに一切、声を出せないピケにエキドナは怖気の走る声で言った。


「もう一度聞くわ、あなた……王都で起きた謎のエーテル爆発について何か知ってないかしら? 正直に言えば命までは取らないわ。私はそれが知りたいだけなの」


 エキドナは一拍置いて続けた。


「オサーカ弁の彼が教えてくれたわ。あなた……最近もずっと王都にいたんですってねぇ。これはどういう事かしらぁ?」

 

 エキドナはギリギリとさらに強い力で、ピケの首を握りしめた。


「ぐぁっ!」

「それにたったレベル3なのに、そのエーテル量と操作技術。只者とは思えないわ。さぁ正直に答えなさい。さもなくば、どんな手を使ってでも吐かせてみせるわ」


 瞬間、エキドナの手が緩む。

 ピケはやっとの解放に大きく咳き込んだ。

 しかし……。


「がはっ、ゴホッ……はぁ……。だ、誰が言うもんか……!」

 

 ピケはニタリと笑うと、エキドナの顔に砂をかけた。


「う……!」


 一瞬、エキドナが目を閉じた瞬間に、ピケは走り出す。

 エーテルを足に流し込み、あらん限りにその場から逃げ去った。

 

「良い度胸ね……」


 エキドナの呟きはあっという間に消え去った。

 ピケはワンダフル自慢の脚力と足へのエーテル強化でひたすら走る。


 スピードだけはあのジュッテでさえ、虚をついた事もあるピケが唯一誇れる武器だ。

 

 例えあのエキドナが相手でも逃げ切れる、と信じて疑わなかったピケは、次の瞬間、腹にとてつもない衝撃を受けた。


「ガッハァッ!」


 腹が貫通するのではないかと思うほどの衝撃が全身に伝わる。

 その時になって、エキドナが追いつき、自分の腹を殴ったのだとを理解した。


 ピケは川切りの石のように地面を転がり、二転三転してようやく止まる。


 しかしあまりの苦しさに息が出来ない。

 意識が今にも飛びそうだった。


 そんな虫の息のピケに、ザッ、ザッと悪魔の忍び寄る足音が聞こえてくる。


「さて正直に話してくれる気になったかしらぁ? いや……別に正直に答えなくてもいいわよぉ? その時はあなたをバラバラにするだけだから」


 エキドナの悍ましい笑顔にも、ピケはキッと睨みつけ、答える。


「誰が……お前なんかに言うもんか……!」


 そのピケの様子を見たエキドナはますます唇を吊り上げた。


「いいわぁ、あなた。さっきのオサーカ弁の男よりも何倍も嬲りがいがあるわぁ。そうねぇ、ならこれはどうかしら?」

 

 するとエキドナは無造作にピケの服の中に手を突っ込み、何かをまさぐる。


 エキドナのひんやりとした手がピケの胸に直に触れた。

 そして目当ての物を見つけたのか、エキドナはニタリと笑ってピケに見せつけた。


「これ、なぁんだ?」


 エキドナが手に持っていたものは、ピケの【ブレイブランプ】だった。

 

 瞬間、ピケの顔が真っ青になる。


「やっぱりこっちの方が効きそうねぇ! 正直に言わなければ、これを握りつぶすわぁ!」

 

 瞬間、エキドナはギュッ、とランプを握りつぶそうとする。

 ランプはミシミシと嫌な音を立てた。


「や、やめろぉぉお!!」

 

 ピケが叫ぶ。エキドナは悲痛に歪むピケを見下ろしている。


「さぁ、早く言いなさい」


 しかし……ピケの返答は決まっていた。


「僕は……それでもお前には教えない。大切な仲間を誰がお前なんかに売ったりするもんか!」

 

 それこそがピケの返答だった。

 瞬間、エキドナの笑みが失せ、完全に無表情になる。


 ランプがぐしゃりと潰れ、ランプは破片となり、小さな火は完全に消えた。


「そう、もういいわ。お前をぐちゃぐちゃにする」


 その瞬間、さっきよりも濃密で禍々しいエーテルが噴出し、エキドナは無表情にピケを見下ろしながら腕を振り上げた。


 その拳にはピケなど一瞬で消し飛ばせる程の量のエーテルが乗っていた。


 そしてとうとう拳が振り下ろされようとした瞬間に、ピケの真下に円状に光が出現する。

 幾何学模様にチカチカと点滅するソレ……魔法陣が展開された時、ピケの姿が忽然と消えた。


 ズガンッ! とピケがいなくなった地面へとエキドナは拳を叩きつける。


「チッ……」


 小さく舌打ちしたエキドナはピケと同じように魔法陣に包まれ、忽然と姿を消した。

 

 ここに一次試験は終結を迎えた。


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