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プロローグ3 エーテル


 あれから10年の月日が流れた……。

 月日の流れというものは実に早いもので、あっという間に10年も経ってしまった。

 あの包丁を持った化け物を倒した後も俺はデスゲームに挑み続けた。

 

 このデスゲームのルールは実に単純だ。

 自分よりも少し強い相手と一騎討ちを行い、勝利すれば良い。

 ただそれだけだ。

 

 どちらかが勝利すると、傷がたちまちの内に回復し、 5日間の時間が与えられる。

 そして5日後にはまた空間が転移し、自分よりも少し強い敵と戦う……その繰り返しだ。

 お陰様でまだ誰にも破れた事はなく、今では500人抜きの偉業を成し遂げている。

 

 もちろん敵は尋常でないものばかりだった。

 中にはファンタジー世界で見るようなオークやゴブリンといった人外の者もいた。

 死にかけた事も百は優に超えている。

 そんな中で、只の普通の社畜でしかなかった俺がどうやって勝利を納めてきたのか、もちろんそれには理由がある。

 

 相手は常に俺よりも強い。

 そこに生き残るヒントがあると思い、当初、俺は敵の観察に徹した。

 俺よりも小さな男が拳で岩を割ったり、どう見ても弱そうな老人が20mはジャンプしていたりと超常の現象がここでは罷り通っていたのだ。

 

 絶対に何か秘密があると踏んだ俺は、観察に観察を続け、ようやく発見した。

 それが『エーテル』の存在だった。

 『エーテル』はよく漫画やアニメで見られるような力の塊の事で、生体エネルギーと同じ意味を持っている。

 

 他の世界でいえば、魔力やら気やらと言い換える事が出来る。

 人間、いや、生きている者なら誰しもが持っている力だ。

 敵を観察し続ける事でエーテルが見えるようになった俺は、自分の中のエーテルを見た。

 ……しかし。


「少なっ! そこらへんに飛んでるカラスくらいしかないんですけど!」

 

 流石はもやしっ子が多い現代の日本人の若者。

 その量はスズメの涙程しかなかった。

 しかし、面接でも常套句だった


「私の長所はどんな過酷な環境でも柔軟に適応する事です!」

 

 を地で行っていた俺は、すぐにこの悲しい現実を受け入れ、量が少ないなら増やせばいいじゃない! とのお気楽な考えで修行を始めたのだった。

 のは良かったのだが……。


「……死ぬほどしんどェ」

 

 エーテル量を増やす方法は極めて単純、エーテルを枯渇寸前まで消費し、眠る。

 すると筋トレの超回復と似た要領でエーテル量が僅かに増えるのだ。

 だが、エーテルとはすなわち、生体エネルギーの事。

 

 エーテルがゼロになるという事は即ち死を意味している。

 この修行は毎回、毎回が命をかけた試練の連続だった。

 もちろん、そこまで追い込む事も当初は苦労した。

 しかし、良くも悪くも人間とは慣れるもの。

 数百回も同じ事を繰り返していけば、だんだんと感情が鈍化していくのだ。


「むしろ……気持ちいい……かも?」


 どんどん行ってはいけない方向に進んでいるような気がするが、ここで俺を止める者など誰もいない。

 生き残る為、今日も俺はデスゲームを生き抜くのだった。


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