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第23話 ジュッテ



「いっただっきま〜す」


 ピケとメルルは互いに手を合わせると、勢い良くバスターウルフのこんがり焼き肉にかぶりついた。

 まともな調理器具がない為、焼いただけではあるが、かぶりついた瞬間に凝縮された肉の旨味がピケの口の中に広がってゆく。


「う、うま〜い!」


 ピケは感動の声を漏らした。

 

「魔物っていうからゲテモノだと思ってたけど、案外美味いな、いやめっちゃ美味いわ、これ」


 メルルも感嘆の声をあげる。

 ピケは、人形なのに平然と肉を食べるメルルを見て、この人形の体の中は一体どうなっているのか、とても気になる。


「魔物って言っても魔王の加護を受けてエーテルが変質しただけだからね。元はバスターウルフなんだ。肉の質まで変化はしないよ」

「なるほど……こりゃ明日まで飯の心配はしなくて大丈夫そうだな」


 ピケは周りを見る。

 一次試験が開始してから、結構な時間が経ったようで、だんだんと薄暗くなってきていた。

 とうとう夜の時間が近づいてきたらしい。

 そんな中、ピケは恐る恐るメルルに質問した。


「ねぇ……メルルってどれくらい……強いの?」


 するとメルルが肉を持つ手を止めて、じっとピケを見た。

 

 ピケは常々思っていた。

 一体メルルはどのくらい強いのだろうか、と。

 ピケには、メルルが想像も出来ないくらいの高みにいるという事は分かっていた。

 

 だが、それがあの勇者王や広場で話しかけられた謎の美女に匹敵する程のものなのかどうかが、分からなかった。

 ピケにとってはあの二人も想像を絶する強さなのは変わらない。

 ピケのレベルではメルルも二人も推し量る事が出来なかった。


 しかし、メルルはこの世界の常識には一切当てはまらない、凄まじいエーテル操作技術と相手の力を返す技術・返極を持っている。

 さらには、明らかに勇者王のエーテル爆発を超える量のエーテルをその小さな体の中に秘めている。

 メルルの持つ強さは、この世界の強さとは違う意味で、計り知れないものがある。


「う〜ん、難しい質問だな。強さって言ってもいろんな強さがあるからなぁ。まぁ、これからいろんな相手と戦っていくうちに分かってくるんじゃないか?」


 メルルの言葉を聞いて、ピケは上手くはぐらかされたような気がしないでもなかったが、とりあえずは納得して質問を変える事にした。


「それじゃあ、今いる受験生の中でメルルが強いと思う人は誰か教えてくれないかな?」


 メルルが強いと認める人物、それは間違い無くこの試験において、最も気をつけなければならない相手だ。

 ピケは集中してメルルの言葉を待った。


「そうだな、ざっと見て、2人突出していたな。1人は革鎧を着たセクシーなお姉さんだ」

「……っ! そ、その人、たぶん僕に話しかけてきた人だ」


 ピケはメルルの言葉に息を飲んだ。

 と同時に、やはりそうかと深く納得する。


「あの女の人に声をかけられたのか。うらやま……じゃなくて、気をつけた方がいいな。正直ピケ少年の実力ではまだ敵わないだろうから」

「うん……悔しいけど、僕もそう思ったよ。……あともう一人は?」

「白銀の髪の少女だ。この子も美し……じゃなくて、大剣を背中に背負っていたな。でもこの子はどちらかっていうと、驚異ってよりもピケ少年と同じように秘められた天性の何かがあるって感じだったな」

「大剣を背負った女の子……」


 ピケは記憶を遡るが、メルルの言う少女に思い当たりはなかった。

 あの場には100人もいたのだ。

 全てをあの一瞬で覚えきるなんて不可能だろう。

 しかし、ピケはメルルが言うならば、絶対に気をつけようと思った、その時だった。


「ピケ少年!」

「え?」


 いきなり肉を放り捨てたメルルがピケの首根っこを掴んでジャンプした。

 ピケは服が首にめり込み、グエッと情けない声が出る。


 ズドンッ!

 

 しかし、ピケは見た。

 ピケが座っていた場所にいきなりどこからともなく大剣が現れたのだ。

 大剣は地面に突き刺さり、静止する。

 もしもあのままメルルがピケの首根っこを掴まなければ、ピケは大剣に串刺しにされていただろう。

 その光景を幻視して思わず吐きそうになる。

 

 メルルの手から解放されたピケは、ペタンと尻餅をつきながら大剣を見た。

 大剣は肉を焼いていた炎に照らされて、煌びやかに輝いている。

 ふと、大剣の柄の先に視線を遣ると……何者かが腕組みをしながら柄の上に立っていた。


「へぇ、なかなかやるじゃない。私のバスターソードを躱すなんて。そこの女の子は見込みアリね」


 そこにいたのは煌びやかな白銀の髪を持つ美しい少女だった。

 白をモチーフとした騎士が着用するような鎧を着ており、炎に照らされてキラリと輝いている。

 瞳は蛇のように縦に割れており、黄金色に輝いていた。

 勝気そうな少女は次に、ピケに視線を向け、吐き捨てるように言った。


「そこの犬っころは全然ダメね。不合格。よってこれからあなたを討伐するわ。覚悟なさい」


 何か汚いものを見るかのような目で、少女はピケを見下した。

 メルルもムッとした表情で少女を見るが、ピケは手でメルルを制した。

 そのまますかさず、鑑定を使い、少女を見ると……。


名前:ジュッテ 【ホワイトドラゴン】龍人

クラス:ドラゴニック・ル・グラン

クラススキル:アイアンメイデン

Lv:37

EP:2,369


(強い……! それに龍人だって!?)


 ピケは驚きの鑑定結果に思わず声が漏れそうになる。

 この少女こそ、十中八九、今しがたメルルが強いと言っていた少女に違いないと理解した。

 タイミングの良い登場にピケはニヤリと笑った。

 

 どうせいつかは戦わなければならないのだ。

 なら今がその機会に違いないとピケは気合を入れる。

 決意を持ってピケはメルルに宣言した。


「メルル……手を出さないで。この勝負、僕が受けるよ!」


 驚いたようにメルルはピケを見る。

 しかし、その後メルルはゆっくりと微笑みながらピケに頷いた。


「いい度胸ね。バラバラにしてやるわ」


 黄金の瞳を持つ龍人の少女、ジュッテはそんなピケを見て面白そうに笑った。



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