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第11話 自己紹介



「えっと……それでこれからもメルルって呼んでいいのかな?」


 ピケ少年がもじもじしながら尋ねた。

 そうか、名前か。確かにここで徳次郎と名乗る訳にもいかない。

 このメルル人形に俺の魂が宿ったという事は、俺もこの世界の一員になったという事。

 

 前世の徳次郎はもうこの世にない存在だ。

 新しい自分が誕生したという意味合いも込めて、俺は堂々と言い切った。


「ああ、俺はメルル。一応人形みたいだけど、君のおかげでこうして動けるようになった。これからよろしく!」


「うん……! それで、メルルは一体何者なの?」


 ピケ少年がおずおずと尋ねてきた。

 俺は一瞬、どう返答するか迷う。

 ピケ少年は、あの関西弁を話す男との戦闘を間近で目撃している。

 自分で言うのもなんだが、そこら辺の者では到底敵わないような戦闘技術を、俺は持っている。

 

 それもあのデスゲームを生き抜いて得たものだ。

 しかし、今あの経験をピケ少年に話してもきっと理解し難いに違いない。

 俺は少し迷った後、口を開いた。

 

「俺は……人形に宿ったちっぽけな魂に過ぎないよ。……ごめん。今は君に全てを話せそうにない。けど、いつか必ず君には全てを話したい」

「いや! 無理に聞いちゃったみたいで、こちらこそごめん! でも、メルルの準備が整ったらまた聞かせて欲しいな! それと言い忘れていたね。カクータを代わりに倒してくれてありがとう。本当に助かったよ」


 ピケ少年は花が咲くような笑みを浮かべて微笑んだ。

 お尻の尻尾がブンブンとせわしなく揺れる。

 

「いや〜、そんなの当たり前だろ。ピケ少年があんな低レベルな男に馬鹿にされていたのが我慢ならなくて、ついお仕置きしちゃったぜ」

「お仕置き……でも、本当に凄かったよ。メルルって本当に強いんだね。僕なんかとは比較にならないくらいに……」


 何やら陰を感じさせる呟きに、俺はピケ少年を訝しげに見ながら言った。


「俺が強く見えるのは人よりも多く鍛えたからだ。ピケ少年も俺みたいに鍛えたらすぐに強くなれるさ」

「ほ……本当!? 僕だってメルルみたいに強くなれるの!?」


 ピケ少年は俺の言葉に目をキラキラと輝かせながらずいっと顔を近づかせた。

 きっとピケ少年も色々と悩んできたのだろう。

 俺も昔は弱っちかったからなぁ。

 

 その気持ちは痛いほど分かるよ。

 耳がわお〜ん、とばかりに揺れ動く。

 う〜ん、なんともかわゆい。


「本当だ。君には眩い才能が眠ってる。磨けばこの世界の誰にも負けやしないような、凄まじいのがね」

「え……?  嘘でしょ!? だって僕は1年経ってもレベル3のままの弱小冒険者なんだよ!?」

「レベルなんて関係ないさ。それに君のレベルが低いのは、誰よりも才能があるからじゃないか? 見たところ君のエーテル量はそのレベルにしては多い筈だ。きっと才能がある分、人よりも必要経験値が多くて、レベルがなかなか上がらないだけだと思うけど」

「ほんとっ!? なら僕もメルルみたいに強くなれるかな!?」

「ああ、なれるさ」


 この言葉に嘘はない。

 この少年には俺ですら羨むような才能が眠っている。

 正しく磨けばこの世界の誰にも負けないような力を手に入れる事が出来るだろう。

 ピケ少年は自分のレベルについていろいろ悩んでいたようだが、正直レベル差なんて関係ないと思う。

 重要なのは、どれだけ修行し、実践を繰り返してきたかだ。

 

 見かけのステータスなんてあんまり意味がない。

 大切なのは努力と経験だ。

 さっき俺のステータスを見た時にレベルの項目が書かれていなかった。

 それは、ひとえに俺がレベル制を否定しているからに違いない。

 この世界の人々はレベルに固執し過ぎているきらいがある。

 なんとかその固定概念を取っ払いたいものだ。



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― 新着の感想 ―
[一言] >ピケ少年も俺みたいに鍛えたらすぐに強くなれるさ いくら強くなれると言っても、 あの地獄の修行を200年続けることを考えると、 余程のバトルジャンキーか精神力が強くないと無理だな 亀仙人の…
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