第72話 サメ術師は最後の標的を知る
「あの姫か……」
俺は召喚された当初を思い出す。
異世界人を集めて説明していたあの美少女だ。
国王の一人娘で、優れた才覚を有する人物らしい。
そして、勇者召喚に関する最後の標的である。
(見るからに善人って感じの見た目だったんだがな……)
人間はいくらでも印象を誤魔化せる。
自分の目を過信するべきではない。
アティシアみたいな怪しい奴とコンビを組んでいるのだから尚更だろう。
ちなみに他にも標的はいたが、サーチ・シャークによると死んでいる。
どいつも王都壊滅に巻き込まれたか、その後に何らかのトラブルで命を落としたらしい。
立ち回りに失敗して再起できなかったのだろうか。
或いは勇者達と仲間割れでもしたのかもしれない。
そういうこともあって、俺にとっての復讐相手はラスト一人だった。
姫は王国の戦力強化に熱心していたそうだ。
一部の勇者は彼女によって篭絡されており、独自の覇権を握っていたらしい。
いずれ国王すらも超えると囁かれていたとのことである。
この辺りは城で手に入れた資料から知った。
単純なステータスを抜きにしても油断ならない人物には違いなかった。
「すごいですよねー。可憐なフリをして、結構な性悪ですよ彼女。たぶん国王様も囮にしちゃってますし」
「そうなのか?」
「別の場所で勇者召喚を復旧させるなら、二手に分かれる必要はありませんからねー。むしろ戦力を集中させて安全を確保すべきでしょうし。たぶんお姫様は、自分の父親を見捨てたんですよ。いやはや、泣けてきます」
呆れ顔で言うアティシアは、ちっとも泣きそうではない。
いつものことなので触れることもないだろう。
それにしても、アティシアの指摘は割と真っ当だった。
国王の一団はかなりの戦力を誇る。
俺のサメ能力がなければ、まず壊滅しないであろう規模だ。
身の安全を考えると同行すべきである。
リスク分散にしても不自然だ。
姫が同行を選ばなかったのは、俺に襲われる可能性を考慮したからではないか。
実際に一団の犠牲は、こうして時間稼ぎとなっている。
俺は衰弱した国王を睨みつつ呟く。
「さっさと追いかけて殺すぞ。立て直す隙を与えると厄介だ」
「そうですね。ここはスムーズに仕掛けていきましょう。今度は私もしっかりサポートしていきますよ」
アティシアは力こぶを作ってアピールする。
どうにも不安だが、彼女の有用性は理解している。
信頼できない点も考慮しつつ、上手く利用するしかないだろう。




