第13話 サメ術師は喰らい尽くす
息を吸い込んだ俺は目を見開いて、喉が裂けんばかりの声でサメに命じる。
「殺せ! こいつら全員、喰い尽くしてやれ!」
召喚したサメ達が一斉に動き出した。
背びれを出したまま地面を泳ぎ進むと、緩やかなカーブを描きながら三人の騎士を包囲する。
攻撃の機会を窺っているようだ。
スピア・シャークは口内から槍を飛ばした。
騎士達はそれぞれの武器で弾くか、盾で防いでみせる。
なかなかの反応速度だった。
やはり攻撃方法がバレていると対処されやすい。
そこにファイアー・シャークが仕掛けた。
地面から跳ね上がった素早いタックルで、盾持ちの騎士の肩に接触する。
その瞬間、騎士に火が移った。
数秒もせずに全身が燃え上がっていく。
「うぎあああああっ!?」
盾持ちの騎士が悲鳴を上げた。
地面を転げ回って悶絶する。
そこにファイアー・シャークとスピア・シャークが群がり、燃える騎士を地中へと引きずり込んでいく。
たぶん仲良く分け合って食べるのだろう。
震える手が最期まで助けを求めていたが、生憎と残る騎士達にも余裕はなかった。
「くそ、なんだこの太刀筋はっ!?」
一人の騎士はソード・シャークと剣を打ち合っていた。
ほとんど互角の勝負である。
スピードとテクニックは騎士に軍配が上がるが、ソード・シャークはパワーと生命力でゴリ押しする。
何度となく斬られながらも、怯まずに戦闘を続行していた。
そうして互角の展開に持ち込んでいる。
しかし、拮抗した戦いは唐突に終わりを迎えた。
騎士の背中に燃える剣が生えたのだ。
ファイアー・ソード・シャークの仕業だった。
剣の打ち合いに気を取られた騎士に不意打ちを仕掛けたのである。
ちなみに数秒前までファイアー・ソード・シャークと戦っていたもう一人は、既に屍を晒している。
全身をスピア・シャークに貫かれて即死したのだった。
こちらもほぼ同じ戦法で不意打ちを受けていた。
「ご、ボォァ……ッ!」
燃える剣に刺された騎士は、凄まじい声を上げて吐血する。
貫かれた箇所から炎が広がって全身が包まれて、そのままあえなく力尽きて死んだ。
二つの死体はサメ達によって地面の中に運ばれていく。
今頃は彼らの食事となっていることだろう。
「は、はは……ざまあみろ」
残された俺は、その場にへたり込んで笑う。
初めて人を殺した感覚が胸に広がるも、意外と悪い気分ではなかった。
これが報復にあたる行為だからだろうか。
とにもかくにも、俺は窮地を脱したのであった。




