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祓魔師は魔導書をコンプしたい  作者: サン助 箱スキー
アーバイン魔法学園編
41/73

草原階層


 一昨日の夕飯は王都に来てから1番楽しい時間だった。

ペイン君やダズ君と一緒に夕飯を食べてたら、ユング君、ケルビム君、ルーファス君も合流して来たから。


「君付けなんてしなくていいよ、何かあった時に背中を預ける仲間だろ」


 ユング君をずっと君付けで呼んでたら、そんな事を言われて、それから皆を呼び捨てで呼ぶ事にした。


 なんか少し恥ずかしい。


「月曜はいよいよダンジョンに行くんだよな。すっげー楽しみ」


 大きな焼いた肉の塊が刺さってる串を持って豪快にかぶりつくケルビムが口の中を見せながら話した事。


「ダンジョンって……何?」


 行くって言ってたんだから場所の名前だろうけど……


「えっ、お前ダンジョンを知らないの?」


 5人に呆れた顔をされた。


「知らないなら月曜を楽しみにして待っとくんだな」


 結局何か教えてくれなかった。


「学園のダンジョンは他所のダンジョンより良いドロップ品が出ると言われてる、ドロップ品は買い取って貰えるから小遣い稼ぎにもなるぞ」


 ドロップ品ってなんだろ? でも、小遣い稼ぎか……


 欲しい物があるから少しお金が欲しいな、いくらするのか分からないから、どれだけ貯めたら良いか分からないけど……


 あっそうだ……聞いてみよう。


「干し肉と干した果物っていくらくらいするんだろ? 1人分で10日分くらい欲しいんだけど」


 魔法鞄の中に入れてた保存食、今は大きなパンを2つとチーズを少し入れてるだけだから補充しときたい。


「そんなの買う店によりけりだろ。でも安い店で干し肉は買うなよ、ゴブリン肉とか普通に混ざってるらしいからな」


 ペインは少しぶっきらぼうに話すけど、たぶんこの話し方で普通なんだと思う。


「干した果物は何処に行っても同じくらいの値段だけど、生の果実より高いぞ。僕だったら自分で作るけどな」


 ダズはやっぱりドワーフなんだな、村の大人に聞いてた通り、自分で使う物は自分で作るらしい。


 食堂から出て、誰かの部屋に行ってもう少し話すかってなったんだけど、僕の部屋が1番食堂から近かったから、僕の部屋に集まる事になった。


「ちょっとカード取ってくる。明日は休みだし遅くまで起きてて大丈夫だろ」


 皆が僕の部屋を見てびっくり。


「広くね? 上級貴族寮より広いんだけど」


 ユングが驚いてる。僕もこの部屋に案内された時は驚いたもんな。


「洗面所も風呂もトイレも付いてるし、ウォークインまで……」


 僕の部屋を探索する4人。


「祓魔師科ってヤバいな、僕とルーファスで使ってる部屋の何倍あるんだよ」


 ケルビムとルーファスは同じ部屋に住んでるらしい、そして、やっぱりこの広さは普通じゃ無いらしい。


「で、この場違感ハンパない毛皮って何?」


「あっ、それは僕が寝てる所。ベッドが柔らかすぎて落ち着かないんだ」


 床に敷いてたブラッドホーンっていう魔物の毛皮をぽんぽんしながらタズに聞かれて。


「この椅子……これが噂のゲーミングチェアって奴か。初めて座ったけど、これならここで寝ても大丈夫そうだな」


 ペインが椅子の座り心地を確かめながら、背もたれに思いっ切りもたれかかったりしてる。


 そんな感じでルーファスが来るまで僕の部屋を物色する4人だったんだけど。


「これ、先月出た最新版も入ってるやつ。皆ルールはわかるだろ?」


 見せて貰ったカードには、僕の魔導書みたいに魔物の絵と文字が書いてあって。


「ワイバーンの能力、毒の尻針で盾兵を貫通、ダイレクトアタック」


「シールド発動、バリスタ兵の能力で飛行系魔物の攻撃の無効化」


 対戦する所を見せてもらった。カードに書いてある文字が読めないからちんぷんかんぷんで、一覧表を見ながらカードに書いてある文字を読んでたら。


「そうか、ライルが噂の特別学級生か」


「田舎の方じゃ読み書きや計算が出来ない奴なんて沢山いるらしいもんな」


「王都圏でも下級層や貧困層なんかだと普通に居るらしいよ」


 対戦してるユングとルーファスは集中してて話に混ざってこない。


「ゼルマ先生風に言うなら、文字が読める奴と読めない奴を魔物がより分けて襲うと思うか……かな?」


「でも魔法陣を構築するのに文字は読めないと……って、祓魔師か……」


 ゼルマ先生でも読み書きは覚えろって言うと思うな。冒険者をやるなら読み書きが出来ないと騙されるぞって村の冒険者達にも言われてたし。


「魔導書に書いてある悪魔の力を知るのにも、文字を読めないとなんだ。だから読み書きは無駄じゃ無いと思うよ。勉強しててすごく楽しいし」


 こんな風に誰かと話してるのはもっと楽しいけど。


「俺は勉強は嫌いだ。最低限読み書きが出来て計算が出来れば良い」


 ペインがムスッとしてる。


「軍隊に入るなら輜重部隊に回されるかもだろ? ある程度出来ないと勤まらないぞ」


 あっ……そっぽを向いた。


「シールド無し、負けた〜。相変わらずルーファスは強い!」


「あっ今度は俺の番。俺の魔物さばきを見せてやる」


 ルーファスとペインの対戦になった。

 ユングとルーファスの対戦で気になった事を聞いてみよう。


「なんで、サイクロプスが殴って来るだけなの? 目から怪光線も出すし、岩を投げて来たりもするよ」


「それは、ゲームだからかな」「これは遊びだからな」


 結局、夜明けまで繰り返し対戦してた5人。僕は魔導書の2ページ目を文字一覧表と比べながら読んだり、本を読んだり、皆の対戦を見たりして過ごした。


 村に住んでた時でも、こんなに楽しかったのは滅多に無かった気がした。



 で、今は……


「持って来た装具は全て受付に預けろ、隠し持ってる武器もだ。着ている服以外全てを出せ」


 学園の外壁に埋め込むように作られた建物に入って、中の階段を降りたら、地下に草原が広がってた。


「今のうち、そこの屋台で食えるだけ食っておけ」


 制服だけになって心許ない。魔法鞄も預けてしまったし。


 草原を進んだら屋台が沢山あって、そこの近くに下に降りる階段があって、そこの先が現地実習の場所らしい。


「2階層には野犬やコヨーテ、魔物が居ても角兎やリザードラットくらいだ。そこで全てを現地調達しながら5日間過ごせ。一応俺が監視はしておく、各人で協力して五体満足で過ごせたら合格だ。質問はあるか?」


 全て現地調達で5日か……


「武器を持ち込んでもいけないのですか?」


「全て現地調達だ」


「水くらいは……」


「全て現地調達だ」


「下着はダメですか?」


「下着か、2枚だけ持って行け」


 あっ……先生が少し困ってる。


「持ち運べないドロップ品はどうすれば良いですか?」


「毎日夕方に1度だけ売りに来て良い」


 8人全員が食べられるだけ食べて出発。


 階段を降りたら、さっきまで居た草原と同じような風景が広がってるけど……なんか臭い。


「俺はここで昼寝でもしておく。相談しながら好きにしてみろ、夕方になったら代表を1人選んでドロップ品を持ってこい。さあ実習開始だ、ここからは質問は受付ないからそのつもりでいろ」


 毛皮のマットを地面に敷いたゼルマ先生。

敷いたマットが僕が部屋に敷いてるブラッドホーンの毛皮とそっくり。


「えっ、本当に放置されちゃうワケ?」


 放置なんかされてないと思う……


「とりあえず拠点を作らないと。数日過ごすなら拠点が無いとダメだろ?」


 ん〜……そんな事より……


「ルピナスさん……そこ、アグリスが生えてるから踏まないで」


 食べ物ゲット。苦くて少し苦手だけど、生のままでも食べられる野草が生えてる。


「ライル君、何それ?」


 あれ……知らないのかな?


「食べられる野草だよ。苦くて美味しくは無いけどね」


 周りを見れば、色んな種類の食べられる野草が結構生えてる……


「雑草なんて食べて大丈夫なのかよ?」

「僕は肉が良い、野菜は肉に少し添えてるだけで十分だ」


 肉ばっかり食べてたら痛風になるって村の大人が言ってたな……痛風ってなんだろ?


「お腹に香草を沢山詰めて丸焼きにした角兎は美味しいよ」

 

 子供だけで狩れる角兎と、何処にでも生えてる香草で作れるから、お腹が減った時に良く作ってた。


「それは美味そうだな。角兎か……素手で大丈夫かな?」


 アグリスを10本まとめて茎で一括りにしてベルトに差し込みながらケルビムの質問に答えた。


「そんなの、網を作れば簡単だよ」



 で、僕が教えながら皆で草を編んで網を作ってる。


「飛び掛って来る所を網で受け止めるねえ……出来るのそんな事」


 ダズとイズさんが草を編むのが上手い。


「角兎を仕留められたら、角に持ち手を付けて武器にすればリザードラットくらい簡単に狩れるし、リザードラットが狩れたら背中の皮を手や足に巻き付けたら野犬に噛み付かれても大丈夫になるよ。コヨーテってのが何か分からないけど、先生の話し方だとそんなに強い魔物じゃないんでしょ?」


 出来ればリザードラットの肉はシチューにしたいな、鶏肉みたいな感じで美味しいんだ。


「火魔法を誰か使えないかな? あっちにある倒木を焼いて石で削れば器くらい作れるし」

 

 風上から腐った木の匂いがする。多分倒木がある。

 ケルビムが火魔法は得意だって、焼くのは任せよう。


「水魔法が使えるんだし、大き目の器を作って焼いた石を投げ込めばシチューだって作れるよ」


 火を通せば食べれる野草も沢山生えてるしだし。



 網を作り終わったから、風上に倒れてた倒木の所に来てみた。臭い匂いの元はこれだ。


「ピンガーマッシュだ。やった!」


 夜になるとボヤッっと光るキノコ。ポンセさんが「ピンガーマッシュならいくらでも買い取るから、見つけたら干して保存しておいて欲しい」なんて言ってたキノコ。僕の所持金の殆どは干したピンガーマッシュを売ったお金なんだ。


「なんだよその臭いキノコは。それも食えるのか?」


 倒木を皆の所まで運ぶのにペインが着いて来てくれたんだけど、ピンガーマッシュの匂いを嗅いで顔を顰めてる。


「干したのを行商人さんが買い取ってくれるんだ。何に使うかは僕も知らない。1個で大銅貨になるんだよ」

 

 それを言ったら……


「大銅貨か……」なんて言いながら呆れた顔をしてた。


 



読んで貰えて感謝です。


カードゲームはアレです。デュ〇マや遊〇王などのトレカを想像して欲しいです。

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