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王妃代行、猫曜日  作者: アストロ
王妃代行、猫曜日
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味音痴の陛下

 食事が終わったわたしはその足で厨房に向かった。料理人にアドバイスを伝え、ああでもないこうでもないと夜が明けるまで議論を重ねた。そのため少し寝不足だが、次の日の晩餐を迎えた。


「陛下、お味は如何ですか?」

「うむ」

「アドバイス通りに収穫したものを選別しました。乾燥させた粉やペーストも使ってみましたけど」

「うむ」


 なんて言うか、いつもの通り塩対応の陛下だ。


「陛下、昨夜ご不在でした?」


 彼は銀食器を並べている侍従に顔を向ける。


「何故バレたのだ?」

「そりゃ、普通バレますって。態度違い過ぎですもん」

「奴にはよく言い聞かせたつもりだが?」

「だいたい、あのフルクトス様が女相手に不愛想に振舞えるわけないじゃないですか。息するなって言ってるようなもんですよ」


 フルクトスって前に聞いた名前だ。陛下は額を抑えた。


「あ奴の女好きには参る」


 やはりあの人、別人だったんだ。


「あの方は影武者なの?」


 自分がそうだからそう言う発想が出たのかもしれないが、正解だったらしい。陛下は薄い唇にすっと指を当てた。


「他言はせぬように」


 納得だ。だから陛下は彼の存在を公にできず、自分で食事を調達する羽目になったんだ。


「お忙しいなら無理に時間をとってくださらなくても良いわ。身代わりでも約束を守ろうとしてくださったのは嬉しく思いますけど」

「そうは言っても、いつもと違う行動をすれば周囲に不審に思われる。わたしが城にいることになっているのに、晩餐を別にするわけにはいかない。そなたも料理についてなら、わたしより食に通じたフルクトスの方が話も弾もう」


 確かに参考になったけど、当初の仲良し作戦からは離れて行っている気がする。この国のトップは味道楽の影武者じゃなくて味音痴の陛下なのだ。


「わたしは陛下と一緒に食事するお約束をしたのですよ」

「そなたも飽きぬのう」

「飽きる飽きないの問題ではなく、家族は同じ食卓を囲むものです」


 わたしの育った孤児院ではみんなで顔を合わせる食事の時が至福の時だった。ふくれっ面をしてみせると陛下は理解できないと言うように首を傾げる。

 そうこうしている内にメイン料理が運ばれてきた。ソースがかかったフォアグラだ。陛下は一匙口に含んだかと思うと、フォークを置いた。


「不味くて食えん」

「わーお、久々っすね」

「テス」

「あいあい、すぐに手配しまっす!」


 侍従はスキップでもしそうな明るさで部屋を出て行く。出されたものに基本的に文句を言わない陛下が珍しい。興味本位でフォークを突き刺すと、「触れるな」と鋭い声で叱責された。


「さっさと下げろ」

「そんなに!?」


 余程不味かったのか、晩餐はその場でお開きになった。

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