アメリカ軍上陸
圧倒的な数のアメリカ軍が、ジョンソン島にいよいよ上陸してきた。迎え撃つ日本軍は、幻術に奇策にと忍法を駆使して戦う。
数百しかいない、日本軍相手に、なかなか落ちない島に、業を煮やす将軍であったが、そうこうしている間に、旗艦に幽霊が出るとう騒ぎになったり、艦船が船底の栓を抜かれて沈没するなど、散々な目に合う。
そこで応援を頼みに行く、しかし本島では、作戦が終了していた。そのために、ジョンソン島での話は、無いものとされて、見捨てられたのだった。
アメリカ軍は物量作戦。艦砲射撃と、艦載機による、絨毯爆撃を行ってから、20倍の兵力をかさにして、一気に上陸してきた。しかし、忍者部隊の巧みな作戦により、撤退を余儀なくされる。
第1派の上陸は、まず露出している地上施設に対する、空爆に始まり、防衛陣地に適していそうな場所に対する、激しい砲撃が続き、その弾幕の下を、強襲上陸艇500隻ほどが、押し寄せてきた。
が、海岸線に足を踏み出した、歩兵たちは、前進を忘れて立ち止まった。同時に、艦砲射撃も途絶えた。
何と、正面の山に、巨大なキリストを抱いた聖母の虚像が浮かび出たのである。
中には、思わず跪いて十字を切るものも居た。ハット我に返った指揮官が、あれは作術だ、惑わされるなと、叫んで、前進を促したが、しばらくは海岸線の兵士たちの中に動揺が広がっていた。
やがて、再び艦砲射撃が始まった。どうにか気を取り直した、兵士たちは、前進を開始する。
と今度は、血を流し、ズタズタに傷ついた聖母のぞうが現れた。再び混乱する、兵士たち。そこへ、前方の茂みの中から、鬨の声が沸き起こった。しかも、上陸した米兵6,000人ほどに対して、どう見てもそれをそれを取り囲むように、数万の兵が居るような怒号であった。
驚き乱れる、米兵。そこへ、銃剣を構えた、日本兵が怒涛のごとく、正面から左右から、飛び出してきたのだ。
たちまち米軍は、混乱の極みに陥る。慌て驚いた殆どの兵は、銃を放り出して上陸艇へと逃げ出した。あるいは、海の中へと踊りこんだ。司令官たちが、躍起になって、制御しようとしたが、混乱は混乱を呼び、手の施しようもなかった。
散々混乱して、乱れに乱れて、大騒ぎの後に、気がつけば、海岸線には、日本兵など人っ子一人居ない。狐に騙されたか、狸に化かされたか。死傷者、数十人。負傷者、百人ほど。日本軍の実質的な攻撃を受けないまま、損害を出して、一旦撤収となった。
その後も、その優位な物量にものを言わせて、圧力的な攻撃を仕掛けてくるが、いっかな島は落ちない。落ちないどころか、アメリカ兵は日本守備隊に、散々に翻弄される。
初日から、数日後、気を取り直し、気分も一新して、改めて作戦が開始される。艦砲射撃に、攻撃機による爆撃。島中が黒煙を上げて、燃え上がる。そこへ、上陸艇が砂浜に乗り上げる、ハッチが開いて、米兵が雪崩を打って海岸を駆ける。ところが彼らは行けども行けども、海岸線の藪にたどり着けない。
艦船から遠望していた司令たちが、驚いて至急電を上陸部隊に送る。何と彼らは、陸上へではなく沖合へ向かって進んでいるのであった。しかも司令たちからの連絡が、うまく届かない。
やっとで上陸部隊が我に返った時には、深みにはまっていた。多数のでき死者を出して、第二回目の作戦も中止となった。
すなわち、上陸はしたが、何処をどう通っても、グルグルと同じようなところを回るばかり、気がつけば海岸に戻っている。そんな事ご一日中続く。
地下壕を見つけて、火炎放射で焼いた後に、探索に入ったが、戻れなくなる。
淀んだ川を渡ろうとすれば、感電する。
その内に、沖に停泊している艦船の間に、幽霊を見たという話が、蔓延しだし、ついには行方不明者が出る。警固を厳重にしたが、不明者は増えるばかり。
ついには、掃討を厳重にして、安全を確保していたのに、空母が機雷に触れて沈没してしまった。
そんな混乱の中、今度は駆逐艦2隻が、安全弁を抜かれて、浸水、座礁してしまう。
成果がないままに、損害だけが、甚大になっていく。
怒り狂った将軍は、自ら乗り込んで、本部に対して、さらなる増援を要求。何としても、その絶大なる火力で、ねじ伏せようと考える。
しかし、そんな時本部から、引き上げるようにとの、連絡が入るのであった。
そのうちに、本隊によるブーゲンブーブル島の攻略は、日本軍の各隊バラバラな玉砕によって、幕を閉じていた。三万以上の戦死者。1万以上の負傷者。百名ほどの捕虜を残して、陥落したのである。残りの九百名ほどは、奥深いジャングルに立てこもったが、組織的な反撃は、終わったのである。
ところが結局、ジョンソン島は落ちなかった。無様な、作戦失敗の山を重ねて。守備隊の死者は、10名。負傷者、100名。対してアメリカ兵は、千名近くの死者に、三千名近くの負傷者を出した。そのほとんどは、自爆である。