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嵐の前の瓢箪島

1943年春。本格的な反撃に出たアメリカ軍は、南洋諸島西方の重要拠点、ブーゲンブーブル島攻略に乗り出した。5万からの日本軍が守備している本島を、アメリカ軍は南北から上陸して挟み撃ちにする作戦を立てた。ところが北側の上陸地点に定めた砂浜の、つい目と鼻の先に小島があり、五百人ほどの日本兵が駐屯していたのである。大した兵力ではないが、北側からの上陸作戦には、どうにも目障りである。情報によると、数問の艦載砲を設置しているという。

 アメリカ軍は、ブーゲンブーブル島への南北からの上陸作戦と、時を同じくして、この小島も攻め落とし、北側からの上陸作戦に対する危険性を、できるだけ少なくしようと考えた。もっとも、総司令官が、自分の愛弟子である新任の将軍であるオーエンに手柄を立てさせたいとの思惑も、大きな部分を占めていたが。そのために、戦艦2隻、空母1隻を含めた艦隊を割り当て、1万人の上陸部隊が派遣されたのである。当然の如く、その司令官に、今回のブーゲンブーブル島作戦総司令官の愛弟子であるオーエンが選ばれた。

「しっかり手柄を立てろ。期待しているぞ。」

「なぁに、あんな小島の、イエローモンキーなど物の数ではありませんよ。」

「君は、東部軍人会のホープなんだ。ちょうど、手柄をモノにするのに、良いところだ。頑張りたまえ。」


「クシャン・クション。ムムムッ。こ・・・・このくしゃみは・・・・危険がやってくるぞ。」

司令部当番長の片桐曹長が呟いた。

「アメリカの大群でも来るか。」

部隊長の茂山少佐が、頬杖を付きながら、気怠そうに聞き返す。

「部隊長。ワシのクシャミは、ノストラダムスの予言よりは、まっとうに当たりますぞ。」

と、片桐はいきり立って答える。

「それは困った。当たらないことを祈ろうか。南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。」

茂山が、カカと笑いながら、返す。

 ジョンソン島(日本名:南ひょうたん島)守備隊隊長、茂山睦月少佐。彼は日本独自の特殊部隊の創製を首脳部に訴え、事実、高度に訓練された部隊を生み出した。

本格的な忍者部隊であった。そして、満州などでその実力を発揮、多大なる成果を上げたのだが、周りからは、その奇抜で風変わりな作戦が理解されず、成果が大きければ大きいほど、妬みも絡んで、敬遠されたり、気味悪がられ、正当な評価が受けられなかった。そんなわけで、何かと悪評判が立ち、直属の上層部からも、その成果が無視される始末であった。それやこれやで、厄介者扱いされる始末になった。

結局そのために、上層部からの理解が受けられず、左遷。部隊そのものまるごと、今は、閉職に近い、ジョンソン島の守備隊に流されていたのである。懇請を込めて育てた、203特殊部隊の100名と共にである。残りの400名は、雑種視された一般歩兵と、砲兵、支援部隊などである。


「隊長、隊長。ホット湾に、黒い塊が・・・・アメリカ軍の艦隊が、やってきました。」

一般歩兵で、本部付監視当番兵の霧島が、真っ青な顔をしてご進駐してきた。

「ほれ、隊長。」

とは片桐。

「片桐。お前の予言が、災いを呼び込んだ。責任問題だな。」

茂山が笑って言う。

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