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909回目 2021/9/8

 自分の中にこんな引き出しがあったのは、我ながら新鮮な気持ちになりました。


 一回目

 お題『茶色い食器』

 必須要素(無茶ぶり)『ペロペロ』

 文字数『1053文字』 未完


 タイトル『タロ』


「大丈夫か、タロ? 痛くないか?」


 スピー、とまるで寝息のような吐息を漏らし、ぐったりと横たわる愛犬は大きく反応しない。


 十五年も生きたんだ。老衰が近いのはわかっていた。


 でも、辛い。俺が生まれたのとほぼ同じ日に生まれて、ずっと隣で過ごしてきたタロは、俺の兄弟も同然だ。


「……こら、行儀悪いからそれ、やめろって言っただろ?」


 背中や腹を撫でていると、タロは自分の餌入れである茶色いお椀をペロペロと舐め出した。


 若い頃は食欲旺盛だったタロが、食事の後に見せる癖だった。


 もっとよこせ、と言わんばかりに執念深く舐め回す姿は、本当に行儀が悪く、愛嬌があった。


 両親がしっかり躾をしても、これだけはついぞ治らなかった。意地汚いのは見てて変わらないけど、変わらないでいてくれたからこそ愛おしくなる。


「ごめんな。俺たち、家族なのに、何もできなくて」


 治療は難しいと言われて、獣医さんと相談して自宅療養に切り替えてから。


 タロの世話は今までとは違う意味で大変で、でも苦にならなくて、少しずつ悲しくなって。


 お迎えが近いんだと、俺たちにわからせてきて、今では呼吸のために動く腹を撫でていないと、落ち着かなくなってきている。


「なぁ、タロ。俺たち、タロのために何かしてやれたかな? もっと、してやれること、あったんじゃねぇかな?」


 年老いたから。病気だったから。


 理由はあるけど、納得できるかは別問題で。


 タロは家族だ。だけど、人間の言葉を喋れない。


 タロが今、どんな気持ちか俺にはわからない。何も考えていないのか、考えられないのかさえ。


 認知症の症状もあったから、俺のことが誰だかもわからなくなってるかもしれない。


 俺がタロに付き添っているのは、もしかしたら自己満足なだけかもしれない。


 それでも、タロを一人ぼっちにさせたくなかった。


 俺はタロの兄貴だから。


「……あ」


 のそり、と体を起こしたタロが、俺の手を、舐めた。


 タロの体をさすっていた、手を。


「っ、タロ!」


 ぎゅっと、締め付けすぎないように加減して、力一杯、首に腕を回して抱きしめた。


 スピー、スピー、と耳元で苦しげな呼吸が聞こえる。


 もうまともに鳴けなくなったタロが、必死に命を保っている音。


「ありがとな! 俺たちの家族になってくれて! 俺の、弟でいてくれて! ありがとう!」


 すり、と頬がタロの毛を動かした。


 あぁ、タロは頬擦りがすきた//(時間切れ)




 二回目

 お題『殺された栄光』

 必須要素(無茶ぶり)『浦島太郎のストーリーを自分流にアレンジ』

 文字数『988文字』 未完


 タイトル『助けた友達につれられて……』


 事の起こりは、一人の女の子を助けたところから始まった。


『こらー! なにやってるんだ!!』


『はぁ?! お前には関係ないだろ!!』


 子どもの頃の話だ。あの時は、単に子ども同士の喧嘩だと本気で信じていた。


 まさか、刑事事件にもなった問題に禍根があるなんて、子どもの俺にはわからなかった。


『ありがとう』


『どうしていじめられてたのか知らないけど、ああいうのは反撃できなかったら逃げたらいいんだ』


 小さな女の子だったから、少しお兄さんぶりたくて偉そうに説教までした。


 それもこれも、相手が誰の子どもか知らなかったから。


『……ね、ねぇ、なんか怖いよ、ここ』


『どうして? わたしのおうちだよ?』


 それから近所の公園で何度か遊ぶようになった女の子から、うちに招待された俺は、完全に尻込みしていた。


 門の構えからして立派な日本邸宅に、一歩足を踏み入れれば顔つきの怖い大人たちが集まっていた。


 目を合わせれば何をされるかわからない。そんな雰囲気の中、平然と屋敷を歩き回る女の子が不思議でしょうがなかった。


『おとうさん、この子がわたしのおともだちだよ』


『……あぁ?!』


 連れてこられた先にいたのは、見るからに危ない人だった。


 まるでテレビの中の人みたいに、声はガラガラで低くて、手には銃みたいなものを持っていて、メガネ越しに俺を見る目は、充血していて。


 まだ五歳かそこらだった俺には、熊と遭遇した時と同じ反応しかできなかった。


『……マユ。お前をクソガキ共から助けた友達だっていうから、家に入れてやったんだぞ?』


『うん、そうだよ? この子がわたしの、たったひとりの友だち』


『なぁ、マユ? なんでその友達が男なんだ? お父さん、そんな話聞いてねぇぞ?』


『だって、先にお話ししたらやっちゃうんでしょ? 前に仲良くしてた子みたいに』


 俺はただ、震えることしかできなかった。


 今でもよくわからないやりとりだと思ったが、当時の俺には何の話をしているのかさっぱりだった。


 でも、なんとなく、自分の命が危ないことだけはわかって、ずっとマユちゃんの服の裾を握っていた。


『おい、ガキ。ちょっと面貸せ。うちの娘たぶらかしといて、五体満足で帰れると思うなよ?』


『この子に傷ひとつでもつけたら、わたしお父さんのこと//(時間切れ)


『殺された栄光』も描けませんでしたが、『浦島太郎のストーリーを自分流にアレンジ』が我ながら無理くりだったなと思います。


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