表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/1238

9回目 2019/3/24

 ポエムを書いているのか、掌編を書いているのか……。


 立っている場所を見る。


 太い、太い一本道だ。


 どこまでも続いている――いや、よく見れば先細りになって途中でとぎれている。


 周囲を見渡してみる。


 自分と同じように立ち尽くして――いや、風に揺られて倒れそうになっているのも多い。


 というか、密集し過ぎていて少し息苦しく感じる。


 物理的な距離としては、ぎゅうぎゅう詰めではないのだけれど。


 こう、同じような見た目に囲まれていると、どこか閉塞的に感じてしまうのだ。


 自分はちゃんと呼吸ができている。


 なのに感じる、息苦しい感じ。


 改めて周りを見ても、自分と同じような顔をしているくせに、自分と似たような苦しさを覚えているようには見えない。


 ずるい……そう思うのはどうしてだろう?


 自分だけが感じている苦しさだから?


 自分以外が平気そうにしているのがイライラするから?


 それとも――仲間外れが怖いから?


 わからない。


 でも、少なくとも。


 自分が周囲とは違う感じ方を抱いて生きている『異常』なのは理解できる。


 というか、なぜ平気そうな顔をしてたたずんでいられるのか?


 こんな、心許(こころもと)ない、吹けば倒れそうな地面を大勢で乗っているのに。


 ほら! 突風が吹けば、こんなにきしんでたわむじゃないか!


 怖くないのか?


 死を感じないのか?


 何も考えていないのか?


 ああ、なら自分も、無知なまま、集団の中に埋没(まいぼつ)して思考停止している方がマシだった。


 孤独の地獄。


 理解されない『異物』だと認めてしまった息苦しさ。


 逃げたい。


 ここから、逃げ出したい。


 でも、逃げられない。


 自分に唯一ある足と地面は、結合してしまっているから。




 時間感覚がわからない。


 あれからどれくらい経った?


 色合いがどんどん変わっていった。


 緑、黄、赤、そして茶色。


 見た目にも(うるお)いをなくし、衰えていく様をまじまじと見せつけられる、時間という毒。


 それでも、自分以外はのんきに日向ぼっこをして楽しそうに揺れるだけ。


 苛立たしい。


 たとえ一部分であっても、自分がこいつらと同じだということが腹立たしい。


 無知で怠惰なだけのくせに。


 そうしていきり立ち、我慢の限界がきて隣の誰かへ突っかかろうとしたときだ。


 不意に木枯らしが吹いて、永遠にも思えた地面との呪縛が解き放たれた。


 唐突だった。


 何の心構えもしていない。


 地面がなくなる、頼りなさからくる居心地悪い浮遊感。


 自分が今までいた場所が遠ざかり、さっきまで自分の居場所だったところから落ちていく絶望感。


 その間、見上げることしかできなくて、背中から落ちて初めて感じた感触。


 ザラザラして、カサカサして、しっとりしている?


 周囲を見てみる。


 自分と同じモノが、いっぱい、折り重なって倒れている。


 茶色い服を着て、薄汚れて穴があき、身じろぎさえできない不格好な何かたち。


 大樹という社会へ利益を送り続けてきた、使い捨ての木っ端たちが、打ち捨てられていた。


 ん? そもそもポエムってどんな形式だ?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ